母子草の記憶

著者 :
  • 双葉社
3.12
  • (1)
  • (9)
  • (17)
  • (5)
  • (1)
本棚登録 : 93
感想 : 17
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575244977

作品紹介・あらすじ

ノンフィクション作家の草下彰は、自身をテーマに作品を書く決意をした。草下の両親は彼が小学生のときに殺害され、犯人はいまだ不明だった。唯一の手がかりは犯行前に草下を訪ねてきた謎の男だったのだ。草下は男の足取りを辿るのだったが……。深く切ない母親の愛情を描く長篇ミステリー。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ノンフィクション作家の草下彰は、中学のときに両親を殺害され、未だ容疑者の特定すらされていなかった。
    ある日、男の死体を見つけ…
    その男が、15年前両親が殺害される前に家に来たことがあり、5年前のノンフィクション大賞の受賞パーティーでも声を掛けられていたことを思いだす。
    そして、亡くなる前にも草下のマンションを尋ねていた形跡があった。

    この男のことを調べれば両親が殺害されたこともわかるのではないかと男の足取りを辿る。

    亡き母が遺してくれた「母子草」〜花言葉は『いつも想う』
    このことを知ったとき…
    そこには、思いもしなかった真実があった…。

    無戸籍のことにも触れているが、ヒューマンミステリーにしてはやや重みに欠けるかなぁと感じた。

    草下彰の人間像ももっと膨らみを持たせていたら好感度がアップしたのかも…と思う。





  • ノンフィクション作家・草下彰は、全国ノンフィクション大賞を受賞した5年前から、次の作品が書けず、悩んでいた。
    あの一作だけで終わってしまうのか。
    そんな不安を抱えていた時、同じノンフィクション作家で、大御所の松柴大三郎に「君自身に焦点を当ててみたらどうだ」とアドバイスされた。

    草下は、中学生の時に、両親が殺害され、15年経った今も、容疑者すら特定されていなかった。

    自分の過去を題材に、作品を書こうとした頃、殺人事件の第一発見者となった。

    草下の両親が殺害される前に、彼の家を訪ねて来たひとりの男の足取りを辿るうちに、彼の両親の事件と、第一発見者となった事件の被害者の結びつきが明らかになり、予想も付かない真実が、浮かび上がってくる。

    無国籍問題や、教育問題を改めて、考えさせられた。

  • 中学生の時に両親を殺され、未解決のまま時は流れて作家になった主人公。一度大きな賞を取ったものの、その後が続かず悩んでいる時に、殺人事件の第一発見者となる。
    しかも殺された男は、両親が殺される前、家を訪ねてきた男だった。
    設定はてんこ盛りだけど、話は淡々と進み、出会った人は知っている限りの情報を何のためらいもなくべらべら喋ってくれる。また事件に繋がることをみんなよく知っている。結末はほぼ最初から見えていて、意外性もなにも無し。

  • 面白かったが、主人公が謎を探っていくと、次々にわかっていき、最後生みの母親にまで突き当たる。う〜ん、あまりに都合のいい展開。昔の小説?と思ったら、最近書かれた小説で、個人情報がうるさい現代でこんなことはないだろうなと思う場面が多々あった。

    主人公が訪ねたことで実の母と、一緒に住んでいた青年が変わってきたことは、希望が見えて良かったが…。

  • 色んなことが絡み合って、一気に解決。

  • 中学生の時に両親が殺害されるという体験をした草下彰は、自分の過去を小説にしようと事件を含めて過去を探る取材を始める。物語の進展速度が上がってくるのは、2/3ページ程を読み進んだ頃からか。両親の秘密、母親が子供を想う愛情の深さ、無戸籍者の暮らしの辛さ、幼馴染の友情絡みの関係等など、複雑な要素が絡みながら人の優しが綴られる。小杉健治氏の物語にしては趣が異なるが、相変わらず人の優しさが核となって綴られる。母子草の花言葉は「無償の愛」だそうだ。母親の一途な愛情表現するには相応しいタイトルだと思う。

  • 背景が重くて暗い話でした、最後まで
    何とか読めました。

  • 日本で、戸籍の無い子供達がいるのを知ったのは、いつだっただろう。
    国税調査で、誰が、何歳で、何処に、住んでいるかを調べるのに、調査員が、やって来てたのを思い出す。
    日本も バブルはじけても、生活が豊かになり、高校の修学旅行も海外へ行く学校も出てきた時、一人の女の子が、無国籍、無戸籍、でパスパートが申請出来ないと、報道された事があった。
    今でいう、家庭内暴力から逃げたり、離婚後、6カ月以内に出産とかで、戸籍に記載出来ずにいる人達が居るのを知ったのは、この時だったのかも。

    この本も、その不条理的な存在をテーマにしたものである。

    作家として一冊話題になったのだが、その後は不発で書けないノンフィクション作家が主人公である。
    その主人公の草下彰は、中学の時に、両親が殺害され、親戚の家に引き取られるが、
    ……
    冷たい親戚で、成績優秀であるが高校にも行かして貰うことが、出来なかった。
    しかし、もう、この年齢なら、学校側なども、支援の手があったのではと、思うし、親の貯蓄が、200万円しか無いのも、小説の設定でそうしたのか?と、思ってしまう。
    ライターになり、いつも行くコーヒーショップの道で、殺人事件の第1発見者となり、自分の両親の殺人事件の解明も、するようになる。
    売れない作家なのに、その道で、殺されていた人と自分の接点を見つける為に奔走する。
    このような旅費は、どう捻出出来たのだろうか?
    読んでいて、戸籍に記載出来なかった事をひた隠しにして、自分の我が子も、同様に無戸籍になる事に、この地上に生きている証というものが、紙一枚の申請で左右される。
    最後になって、この主人公が、誰の子供であったかが、わかる。
    ハハコグサの意味も、理解出来るが、野の花であるハハコグサを誕生日に毎年飾っていたと言うのも、ちょっと飛躍している。
    そして、生後6カ月では、夢でも、最初のページの様な思い出は、誰にも無いだろうと、思う。
    少し、誇張したいと思う念が、うかがわれた。
    小説の中身の問題点は深かったと思う。

  • 2.5
    親の残した世田谷の土地を売却したお金はどこに消えたのか?それさえあれば高校くらいは行けたのではないか?親戚がねこばばしてしまったのか?

  • 捻りや驚きの無い平淡なミステリー。物足りなさを感じた。個々の人物像も薄く、感情移入できずに読了。

全17件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

一九四七年、東京都生まれ。八三年「原島弁護士の処置」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。八八年「絆」で日本推理作家協会賞、九〇年「土俵を走る殺意」で吉川英治文学新人賞を受賞。他に「仇討ち東海道」「遠山金四郎」「風烈廻り与力・青柳剣一郎」「栄次郎江戸暦」「蘭方医・宇津木新吾」「親子十手捕物帳」「八丁堀赤鬼忠孝譚」「義賊・神田小僧」シリーズなど著書多数。

「2023年 『剣の約束 はぐれ武士・松永九郎兵衛』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小杉健治の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×