- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575246209
作品紹介・あらすじ
「あなたには、捕虜の処刑および民間人に対する虐待の容疑がかけられています」戦後まもなく、インパール作戦の日本人指揮官にかけられた嫌疑。偽りを述べたら殺すと言い放ち、腹を探るような問いを続ける英人大尉。北原はしだいに違和感を覚える。この尋問には別の目的があるのではないか? 戦場の「真実」を炙り出してゆく傑作長編。
感想・レビュー・書評
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戦争ものは好きでは無い。各国がそれぞれの事情で戦っているためにどちらが正しいということが無いためだ。そんな戦争ものを数多く書かれている著者の最新作。第2次世界大戦のビルマを舞台に最前線で起こった現地人の逃走事件を発端に何故起こったのかが、主人公の北原が振り返るという形式で語られる。現代で考えうる最悪の地獄での人間心理には舌を巻く筆力。約200ページちょっとながらずっと緊張感が続いていく。真相は目新しいものではないかと思うが極限状態での日本人らしさに国民性を見た気がする。このジャンルは苦手だが唸る内容。
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星4ではなく星3なのは私がインパール作戦諸々、よく理解してない私側の問題なので凄く迷ったのですが、正直に星つけました。
古処さんというと私の中ではいつまでも「UNKNOWN」の印象が強くて「少年たちの密室」もとても良かった印象。段々読み手側の胆力が求められる作品傾向になった気がして最近は読んでなかったのですが、やっばり好きだなぁと思いました。 -
4.0
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著者のビルマ戦線ものの一作。本作の舞台は捕虜収容所。イギリス人諜報将校の尋問を受ける若いポツダム少尉の記憶を通じて、インパール作戦撤収時の日本軍兵士とビルマの民間人との黙契が明らかにされていく、という物語。
見習士官として初めて戦場に立った北原の視点から、そのときは気づけなかった日本軍の下士官や兵士の「真の思い」が浮かび上がる仕掛けはさすがという感じだが、描かれる日本軍兵士が揃って理性的で思慮深い人物と描かれるのがとても気になる。北原を尋問する諜報将校がビルマの再植民地化を目論むイギリスの象徴的な人物として形象化されていることを考えると、本作では、著者の従来の作品以上に、日本―ビルマ―イギリスというネーションの構図が強く打ち出されている。この点は、ビルマの反英独立運動と旧日本軍とのかかわりを確認したうえでコメントする必要がある。
以前から著者の小説は伊藤桂一の作品世界(と問題点)とよく似ているなと思っていたが、本作を経て、その印象はますます強くなった。 -
『娯楽』★★★☆☆ 6
【詩情】★★★★☆ 12
【整合】★★★☆☆ 9
『意外』★★★★☆ 8
「人物」★★★★☆ 4
「可読」★★☆☆☆ 2
「作家」★★★★★ 5
【尖鋭】★★★★☆ 12
『奥行』★★★★★ 10
『印象』★★★★☆ 8
《総合》76 B -
今の所今年ベスト本。
敵とは何か
誰の心を読んで生き延びるのか
他人の心など読めない
肝心のモンテーウィンの内心が描かれていないというのが巧み。
行間の深みと暗さが研ぎすまされている。
余韻が胸を掻きむしりたいほど苦しい。
古処誠二の本を読めるのは「恵まれている」
これからも本を書き続けられるように応援したい。
ファンレターを書きたい。