夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

著者 :
  • 双葉社
4.16
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本棚登録 : 3765
感想 : 609
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (103ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575297447

感想・レビュー・書評

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  • ヒロシマのお話。戦争で生き残った人たちの中にはバンザイ!と喜ぶ人もあれば罪悪感にさいなまれる人もいる。最後の「原爆を落とした人たちは私が死ぬ事で喜んでる?」という言葉に重い気持ちにさせられた。原爆はおろか戦争なんてまっぴらごめんだ。法改正とか原発再稼働とか言っている人たちに読んでもらいたい。最後に作者が言っていたように、最後のページは読んだ人が豊かな生活を送るにつれ、激しい結末となる。いつまでも忘れられない本であってほしい。

  • 広角で描かれた淡い景色が味わい深い。原爆ドームのカットを見るだけでも本書を読む価値がある。ラストにかけて絵は消え失せ、主人公の科白(せりふ)だけが続く。そこに強い憎悪は見られない。庶民の感覚からすれば「どうして?」という疑問は浮かんでも、この惨劇を遂行した人間の姿が浮かび上がってこないためだろう。人間の所業とは思い難い残酷を繰り返すのが人類の業(ごう)なのか。
    http://sessendo.blogspot.jp/2014/04/blog-post_3.html

  • 名前だけいろんなところで見ていてTUTAYAで発見したので読んでみました。広島のお話だったとは知らず読んでいて戦争かぁ・・・と。実際に体験はしていないし聞いたり本で読んだ話ばかりが自分の中の戦争のイメージで考えることが難しいです。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「戦争のイメージで考えること」
      やっと戦争が終わったのに、苦しみの中から抜けるコトが出来なかった人々が居たコトを、そして懸命に生き抜いて呉...
      「戦争のイメージで考えること」
      やっと戦争が終わったのに、苦しみの中から抜けるコトが出来なかった人々が居たコトを、そして懸命に生き抜いて呉れた人が居たから、今の貴方が在るコトを思い浮べてください。。。
      2014/03/18
  • 昭和三十年。原爆投下後の広島で暮らす一人の女性の人生と、彼女に関わる人々の運命。
    彼女が日々を生きる上で感じる幸福と、その隙間から垣間みる記憶と、その向こうの死。
    戦争を…特に原爆をテーマにするあたり、こうのさんの類い稀な感性と作品への愛を感じます。
    にしてもこうのさんの描く女性ってどうしてこうも魅力的なんでしょう。可愛い。本当に可愛い。否が応でも身近に感じてしまうんですよね。そして男性陣も素敵ときている…。

    戦後70年。あの頃と変わったもの。変わらないもの。そういう一つ一つを大切にしていきたくなる素敵な物語です。

  • 被爆2世の問題は気にした事もなかったし、よく知らなかった。原発の事でそういう差別というか、偏見もこの世には存在するのかなとは感じていたが、現代でも存在する問題だと認識。親世代が幼少期に被爆してれば2世の中年はたくさんいるわけで当たり前と言えば当たり前なんだが。
    調べてみると一応、影響はないというのが公式見解のようだが、被爆2世の団体自身が健康不安を理由に医療費補償等々を求めている現実もあり、単純な偏見・差別とも言い切れず、中々問題は複雑であるなと思った。
    絵のタッチはソフトだし、キツイ描写もないし、ユーモアもあるので、原爆の悲劇をストレートに伝えているわけではないが、残された者達の心の闇とか引っかかりは伝わっており、現代の話として読めるところが新鮮。ここが昨今話題になっている「はだしのゲン」との違いだろうか。
    皆実の被爆直後に感覚が麻痺した自分を責める所がイチバン辛かった。昨日読んだ小林秀雄論の「(非日常の日常化により)知的訓練の有無に関係なく、厭ふべき人間に堕落しないでも厭ふべき行為を為し得る」そのものの世界。

  • 大学のとある講義で取り上げられてから、気になっていた作品。

    同じように被爆して、命を落とす人がいる一方で、なぜ自分は生き残る側の人間になったのか…と考え出したら、きっと苦しかったろうなと思います。それでも、そこに意味はあったんだと思いたいし、見つけることができたら、少しは救われたような気持ちになれるのかもしれないなと思いました。想像することしかできないけれど。
    京ちゃんや七波と凪生のような、被爆二世・三世も、偏見とか、色々と闘うモノが多くて大変なんだろうなと思います。これは今の福島の人たちにとっても、共感するところがあるかもしれませんね。

    遠い昔の悲劇のように思えていたけど、それでも本来は、広島と長崎、そして福島のある日本に住むすべての人が背負い、考え続けるべき問題なのかもしれないです。

    それにしても、この方の作品はどうしてこう、心に沁みるんでしょう…。
    作品全体もそうですが、あとがき(102頁~)もじっくり読み込むと、自分の考えが見えてくる気がします。

  • 原爆が落ちてから10年後の広島。
    誰かに「死んでもいい人間」と思われたという事実に、
    自分が生きている意味を見失っている主人公、皆実。
    やっと乗り越えて人を好きになれた矢先、
    内臓の混じった黒い血を吐きながら死んでいく。

    戦場の恐ろしさとはまた別の、
    戦争の悲しさをつたえる物語。


    映画「ほたるの墓」とともに、
    小中学校での必読本にして欲しいです。


    「敢えて戦争の過去を見ないようにしていた」
    という作者の言葉が、自分にもつきささりました。

  • 日本にとっては悲劇と平和の象徴である「ヒロシマ」が、 アメリカから見たら民主主義の勝利、アジアから見たら侵略からの解放の象徴として位置づけられる。この矛盾にうんざりして、「しょうがなかった」というのが最悪の思考だと思う。どっちの立場でもいいからまず考える。
    日本語のネイティヴなら、とりあえずこの国の戦争体験から出発するのは自然な姿勢なのではないか。

    繊細な論点にならざるをえない「ヒロシマ」を、 被爆者としての日本人の立場からもう一度考えてみる。多くの国や人々の立場、犠牲と惨禍の頂点としての「ヒロシマ」を、素朴な形で作者は提供してくれる。

    物語の手法としても見事だ。
    とくに、作者自身も語っているように「夕凪の街」の落ちのないストーリーは、その完結を鮮やかな形で何の嫌味もなく読者の胸にゆだねる。
    読後、その人は何を思うのだろう。その感情は、その人が成長し、新たな経験をしていく上で、どのように変わっていくのだろう。
    読み手の数だけの「35ページ目」が存在する。

    漫画に泣かされたのは久しぶりだった。
    堀田善衛の言葉、「アウシュビッツとヒロシマを実行した人類が今さら何を神に祈るのか」とはまた違った角度で、進歩の「成果」に押し潰されたものが何だったのかについて考えさせられた。

  • ヒロシマその後。

    色々原爆の話はあるけど、こんなに普通の人の、普通の生活が、生きるという当たり前の事が、静かに消えていく、消されていくことが、淡々と描かれることによって逆に読む人の心を深くえぐる。

    子供にも読ませたい。
    というか、日本人は、原爆に関わる人は、読んで欲しい本。

    あっさりしているようで、読んだ後はしばらく放心しました。

  • ずっと読まなくちゃと思っていた一冊。

    やわらかな線の漫画でありながら、内容はゆるぎない気持ちをまっすぐに伝えようとしている。

    「教えて下さい。 うちはこの世におってもええんじゃと教えて下さい」
    人にこんな言葉をはかせる仕打ちって、どんだけのことなのかと思う。
    被害者である被爆者が精神的に苦しまなくてはいけないとは・・・

    「生きとってくれてありがとうな」
    なんて美しい言葉なんだろう。

    もうひとつ衝撃的だったのは、七波の父親が墓参りしていた
    平野家之墓の側面の名前
    昭和20年8月7日 天満41才
    昭和20年8月6日 翠 12才
    昭和20年10月11日 霞 15才
    昭和30年9月8日 皆実 23才
    昭和62年8月27日 フジミ 80才

    この年月日の流れ、年齢をみるだけで この家族の物語が浮かび上がってくる。

    被曝で、結婚を反対されることは時代の流れでなくなる。
    けれども、同じことを別の形でおこしてはいけないと強く思う。

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著者プロフィール

こうの史代:1995年デビュー。広島市生まれ。代表作は「さんさん録」や、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞作「夕凪の街 桜の国」、アニメーション映画のヒットも記憶に新しい「この世界の片隅に」など。

「2022年 『ぴっぴら帳【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

こうの史代の作品

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