- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575524208
作品紹介・あらすじ
いまなお国民的人気を誇る文豪・夏目漱石は、大のおばけずきで、幻想と怪奇に彩られた名作佳品を手がけている。西欧幻想文学の影響が色濃い「倫敦塔」「幻影の盾」から心霊小説の名作「琴のそら音」を経て、名高い傑作「夢十夜」、さらには今回初めて文庫化される怪奇俳句や怪奇新大詩まで、漱石が遺した怪奇幻想文学作品のすべてを1冊に凝縮! 怖くて妖しい文豪名作アンソロジー。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
タイトル通り、漱石の幻想的な作品を集めたアンソロジー。編者はお馴染み東雅夫。どうやらシリーズ化予定されているようなので続巻が楽しみ。
まずは漱石、おなじみ「夢十夜」や「倫敦塔」などの代表的幻想作品を始め、「幻影の盾」「薤露行」など、アーサー王伝説や騎士の時代の英国に題材をとったものなどを収録。詩句が収録されているのはわりとレアかも。
迷信深い家政婦のお婆さんの言葉に惑わされて、婚約者が命の危機かも、と恐怖に襲われあたふたする男性の「琴のそら音」や、戦死した親友の墓で擦れ違った美女の正体について調べる主人公が彼らの先祖の因縁に解決を見る「趣味の遺伝」などもとても面白かった。
※収録
鬼哭寺の一夜/水底の惑/夢十夜/永日小品(抄)/一夜/吾輩は猫である(抄)/琴のそら音/趣味の遺伝/倫敦塔/幻影の盾/薤露行/マクベスの幽霊について/漱石幻妖句集 -
夏なので幻想怪奇系積読消化するぞのじかんです。
これは最近買った本だからそんなに積読じゃないけど、積む予定だったから読めてよかった。
幻想怪奇かとゆーとそこまでではなかったけど、「琴のそら音」とか面白かった。
「薤露行」は、わたしはアーサー王伝説をぜんぜん知らんので、Wikipediaとかで調べながら読んでたよ。擬古文しんどかったけど、話に合った文体やとおもた。
あと、夏目漱石てやっぱり「人というのはこういうものだから」ていうのを描写するのがものすごくうまいというか、今まで意識してなかったようなそういうのを分かりやすく言語化してスーンと納得させてくれるよね。 -
「幻想と怪奇の」夏目漱石。面白そうなのが出るなあと注目してた。
ちくま文庫の文豪怪談傑作選が頭をよぎるも、編者が同じだし、著者も作品も重なるところはあまりなさそう……? あちらもほぼ未読なので気になるところ。
「鬼哭一夜」「水底の感」「夢十夜」「永日小品(抄)」「一夜」「吾輩は猫である(抄)」「琴のそら音」「趣味の遺伝」「倫敦塔」「幻影の盾」「薤露行」「マクベスの幽霊に就いて」、漱石幻妖句集(東雅夫・選)を収録。
「夢十夜」は何かと読んでいながら、幻想と怪奇のイメージがいまいち著者に結びつかないでいた。こうして選りすぐってもらえれば、知らなかっただけで色々なアプローチをしていたんだなと興味深く面白い。ただ四角四面というのではないのだけど、(特に文語でない作品の心理描写の面で)綿密に繋げられた、あそびないし揺らぎの少ない文が饒舌な印象はやはりある。それも魅力ではある。
まず「鬼哭一夜」がよかった。ワキの到着から間を飛ばし、後シテの登場と退場を凝縮した夢幻能の趣。寂しく物憂い夜の情景に続く、「歌か詩か」の語りの凄さに魅せられる。菫はもしかして著者のこだわりどころだろうか。
『真景累ケ淵』でも言っていた「神経」を活き活きと描く「琴のそら音」も特に面白い。津田君とやりあって辿る家路の怪しさに、婆さんの迷信深い心配性が重なって恐怖が募る。馬鹿馬鹿しいのに、恐怖につかまれている間はどこまでも本気。
「倫敦塔」「幻影の盾」「薤露行」は続けて読むと格別の味。 -
夏目漱石の怪奇幻想名作集。昔「吾輩は猫である」は読んだけれど、そうかそこにもこんな怪奇幻想のエッセンスがあったのか!
やはり何度読んでも「夢十夜」は素敵です。そして一見紀行文のようにも見える「倫敦塔」は、歴史の色々を知っているとさらに趣深く読める一編。
新体詩や幻妖句集が収録されているのが嬉しいところ。短いけれど、怪奇幻想はぎゅぎゅっと詰まっている印象です。