- Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575525908
作品紹介・あらすじ
戦国の気風が残る江戸時代初期。徳川幕府公認の傾城町・吉原が誕生した。吉原一の大見世・西田屋の女将の花仍は、自身の店は二の次で町のために奔走する夫・甚右衛門を支えながら、遊女たちの世話を焼き、町に降りかかる奉行所からの難題に対峙していくが……。花仍の一生を通して、日本一の遊郭を築き上げる姿を描く長編小説。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
吉原が舞台なので、遊女たちの色恋沙汰が淡々と続く小説かとの思惑は、見事に外れた(良い方に)。
主人公とも言うべき西田屋の女将花仍も夫の甚右衛門も狂言回しとも呼ぶべき役割で、主役は傾城町吉原そのものではないだろうか。
著者は、江戸随一の遊郭となった吉原をその黎明期から緻密なタッチで描き出し、吉原の変遷や遊女たちの実態を、読者の目の前に開かせてくれた。 -
なんだろうこれって、昨日も一気に読み終える金と銀、まさかやーあさいまかてをほんの1日で終えるとは。よっぽど面白くて朝井まかてが合うんだろうな、吉原に新吉原に街を一から作るという物語で、歴史も読めたし花魁の粋も素敵だな。甚右衛門の生き様が一本通る、死に際もだよ、貢献して最後はひっそりとか。清五郎にトラ婆にかやが死ぬ場面も全部出てきて、身近にあるのだよと教わったよ。桜も吉原に咲くから、凄いやり方で。
-
遊女・遊廓モノでは珍しく、遊廓の経営者を描いた作品。吉原の創成期の話。終盤に菱川師宣や松尾芭蕉が登場するのはご愛嬌でしょうか。
-
吉原が好きだ。
成り立ち、歴史、文化、とかく吉原という街そのものに興味がある。
今では(も?)ソープランド立ち並び、「堅気」の女には入りにくい街ではある。
道を歩けばまっすぐ歩いているはずなのに、大きくカーブして、何処にいるのかわからなくなる。
昔の姿を伝える見返り柳は代替わりし、角に建てられたという稲荷神社がかつてを偲ばせる。
吉原を行き来する人を見てきた大門もない。
しかし、そこにある歴史に惹きつけられる。
性産業そのものは、良いものとは思わない。
必要悪とも思わない。
今も昔も、女にとっての苦界が男にとっての楽園であるのなら、せめて、それが紛い物であったとしても華やかな誇りのある、そんな「悪所」であってほしい。
そう思うのは、現実を知らない人間の描くただの夢だろうか。
さて、本作では、まだ日本堤に吉原が来る前の話から始まる。
花仍(かよ)が桜田(千代田のお城付近)で西田屋の女将として花見に出かけ、乱闘騒ぎを起こすところから物語は始まる。
負けん気強く、直情径行。
突っ走るばかりの女将。
たくさんの女を見てきた。
まちづくりに奔走する甚右衛門とともに吉原を作ってきた。
決して順風満帆ではない。
人の死を見てきたし、汚いものも見てきた。
だが、尊敬する夫と夢を見、奔走したたまちづくりのなんと志高いことだろう。
遊女の立場ではなく、経営者の立場から見た本作は、吉原を舞台とした物語としては珍しい。
そこしか知らない、だからこそせめて、という生き方には悲しさも感じるが、今いる場所で必死になる姿に心が動かされてならない。 -
朝井さんのお話なので期待したんだけど、どうにも。主人公のカヨが最後までどうにも好きになれず全体に時代の進み具合が早くついていけなかった。
-
江戸幕府開闢後間もなく、幕府の許しを得て吉原遊郭を創設した庄司甚右衛門の妻として妓楼西田屋の女将となった花仍の目を通して語られる、吉原とそこに生きる遊女たちの物語。
江戸歌舞伎の始まり、猿若勘三郎や伊達騒動の殿様なんかも登場するし、明暦の大火にも見舞われて、なかなかダイナミックな時代の動き、変わり目を感じる話でした。
ちょっと終盤の展開が飛ばし過ぎなのが勿体ない感じもありますが、遊女若菜とその忘れ形見の鈴、その娘菜緒、菜緒の子の小吉と、血は繋がらないけど、心の葛藤を越えた絆に結ばれた家族に囲まれて、花仍の賑やかな晩年は安らいで見えました。 -
202208/とても面白かった!さすが朝井まかて先生!これも名作!素人考えなのは承知の上で、もっともっと読みたいので、年月とばさずに日常や再建のとことか細かく書かれた上下巻にして欲しかった…。
-
売色御免/吉原町普請/木遣り唄/星の下/
湯女/香華/宿願/不夜城
「吉原」が誕生した経緯。その後の幕府との駆け引きを吉原が生き残る方向へ向けるための思案。何となく栄華を誇っていたと思っていたけれど、それなりの努力があってこそだったのですね。春を売らせる男たちにも矜持があった。そういう人もいたかもしれない…… -
大変失礼な言い方だけど、最初あんまり期待しないで読み始めたのだけれど、期待?に反して、面白かった。志を持っていれば、仕事に貴賤はないのだと思った。