- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575665031
感想・レビュー・書評
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第1作目
一本気で、真っ直ぐな、男も女も惚れる
総合武術の立見流を遣う筧忠兵衛の活躍の物語です。
第一章 定海騒動
四万石たらずの遠州定海(さだうみ)藩、御蔵奉行百五十石の筧(かけい)壮太郎は、藩内に渦巻く混乱を静めるために改革派の密議に出て行った。そこで説得していた時に藩からの捕り方を目にした改革急進派の旗頭、菊坂右門に捕り方を導いたと思われて斬られる。
壮太郎は、密議に出る前に藩の御一門の御前様に弟の忠兵衛を使いとして出すことにより。もし万一の時には、忠兵衛を江戸へ逃がすことを考えていた。忠兵衛は、御前様の屋敷から長持ちに入れられて奥女中の沙智(さち)に導かれて、廻船問屋洲崎屋の船で江戸へ向かった。江戸では、深川の海辺大工町の裏長屋に住む。
第二章 長っ尻の与茂平
忠兵衛は、ひとり暮らしは初めて、何をどうしていいかわからず。前に一年だけ江戸へ出て来た時の江戸での知人で藩に関係ない御家人の浅井蔵人(くらんど)を四年ぶりに訪ねると。浅井は、御家人、旗本と札差の間を取り持つ蔵宿師をやっていた。浅井の勧めで、何事においてもネジが一本抜けているような"長っ尻の与茂平"が食事を作り、掃除をしと忠兵衛の世話をしだした。それと浅井の妹で妖艶な辰巳芸者の勝弥(かつや)がしげしげと長屋に来るようになった。
第三章 海辺大工町裏店
長屋の"おみち"が、香具師の元締めを名乗る"袖宮の総兵衛"に借金のかたに連れていかれた。総合武術の立見流を遣う忠兵衛は、総兵衛のもとに行き洲崎屋から貰った全財産の七両を渡しておみちを取り返す。
第四章 向こう両国の騒ぎ
両国広小路で一番組の火消よ組、甚吉たちと、日本橋魚河岸の棒手振りたちが大人数で喧嘩を始めた。その中に小さな女の子が巻き込まれたのを見た忠兵衛が、両者をなぎ倒して女の子を助けただけでなく、片っ端から殴って行った。
忠兵衛が毎朝、剣の稽古をする寺に袖宮の総兵衛に雇われた浪人が襷がけで待っていた。始めての真剣で人を斬った忠兵衛は、それから人が頑固に変わった。筧家の再興、兄夫婦の仇討ちとやる事は決まっているが。だがどうしたらいいのか、己の進むべき道が見えてこず焦りがでてくる。
忠兵衛は、ただ無為に焦っても、悩んでも、何にもならぬ。たとえどう足掻こうとも、なるようにしかならないのだから。ならば、風が吹くままに身を任せて、流されていくしかない。そして、やがてどこかに吹き寄せられたときは、それが己の行き着くべき場所であったと信じるほかはないのだ。と。
第五章 江戸真っ二つの大喧嘩
江戸町火消しと日本橋魚河岸の大喧嘩が始まろうとしている。忠兵衛は、己が係わった経緯を思い喧嘩の仲裁をする気になった。この行為で、忠兵衛の名が奉行所に知られて、奉行所からの知らせで定海藩主樺島直篤が知り。また、洲崎屋からの知らせで御前様と沙智の知ることとなる。
この大喧嘩の仲裁に乗り出した忠兵衛は、集まった江戸町火消しと日本橋魚河岸の前で腹を斬ろうとした所を、火消しの御隠居に止められ、御隠居の説得で仲裁が成る。忠兵衛は、江戸の華の顔役たちから手打ちの宴席で上座に座らされて大いに面目をほどこす。
【読後】
何か途中で筋書が少しずつ分かって行く。もしかして読んだことがあるのかもしれない。テンポがよくて、忠兵衛の強さと、物事にこだわらない一本気な人柄がよく読むのが楽しかったです。
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春嵐立つ ー 返り忠兵衛江戸見聞シリーズの1作目
2011.05発行。字の大きさは…中。2022.09.02読了。★★★☆☆
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やさぐれ同心の裄沢を生んだ作家のでビュー作。
書き出しはどこかで読んだ記憶のあるようなお家騒動。
尊敬するたった一人の家族で嫡男のお蔵奉行が殺される。
飢饉が起こってもおかしくはない現実で藩主が自分の遊興のために新宅を作ろうとする。
それに反対する改革派。
ところが、全て力でねじ伏せられ、穏健派の兄もその場で殺される。
遠州から逃げ江戸に。
ここまではなかなか興が乗らない。
住み慣れない江戸の長屋で新しい環境で起こる事件の数々、伝伝。 -
兄が殺され、一人江戸へ逃げのびた忠兵衛。江戸の長屋に隠れ住まうはずが、江戸中の注目を浴びる人物になってしまう!最初は、えー、そんな陰謀もの~とか思っていたのだが、あらすじを読んで、これなら面白くなりそう、と思って読み進めた。読み進めてよかったー。剣劇が主題ではなく、意地と意地の張りあいに立ち向かうのがかっこいいんだねー。面白かったので次も読みます。中兵衛の特性はなんなんだろうなあ。度胸?
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主人公は生一本の浅葱裏。そんな侍に江戸っ子達が頭を垂れる。この手の切り口は読んでいて楽しい。絶対的なヒーローで無いのがまた魅力的。またまた双葉文庫にやられた。
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返り忠兵衛江戸見聞シリーズ、1作目。
シリーズ15作で完結している中での1作目なので、まだまだ序の口というつもりで読んだ。忠兵衛の生真面目さとか、先に読んでる百鬼夜行シリーズの半四郎に通ずる気も。相変わらず一人称なのか、三人称なのか良く分からない文章だけれど、それなりに読みやすい時代小説。シリーズがどういう方向に向かっていくのか、楽しみにしながら読んでいきたい。女三人が顔を突き合わせた最後の場面が一番、笑った。これだけで次作に期待を持たせてくれたかも。 -
シリーズ第一弾
遠州・定海藩の内紛で兄夫婦を亡くし、自らは「御前」の娘紗智(隠密?)の助けで江戸へ、江戸での庇護者にも見放され?
昔の剣友御家人と妹(芸者・勝弥)そして
町火消しと魚河岸衆との命を張った仲裁後、江戸に住みこむことに -
O 1 返り忠兵衛江戸見聞
50ページまで怒涛の展開。あとから説明されるよりこっちのほうがよっぽどいいね。こういう硬い文久々に読んだ。読みにくいわけでないし、忠兵衛を「若い侍」、与茂平を「世話焼きの町人」と表しているところも居心地いい。与茂平がいい味を出している。忠兵衛と二人で主役か。
終わり方は「ここで?」という場面だけれど次巻の発行が数ヵ月後に控えていたと思えば納得。ただし、次巻を用意してから読むべし。 -
読みやすかったです。
あまりにも明らかに続いたので評価は3で。
これからあがるかさがるか、楽しみに続きは読みたい。 -
111 5/19-5/21
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