青に沈む庭 (二見書房 シャレード文庫)

著者 :
  • 二見書房
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感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784576101651

感想・レビュー・書評

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  • 朝丘作品は時々途中で投げ出したくなる。つまらないからではなく、さりげない風を装った濃密な心情の描写に読みながら痛手を負うからで、木原作品とは違った痛みにあふれている気がする。だから新しい本を読む時は覚悟して読む。

  • 相手を思う気持ちが切なかったです。最後にはハッピーエンドだと分かっていても切なくなりました。朝丘戻さんの作品は日本語が丁寧で読みやすくて面白いですね。

  • カラス、アカノイト、とシャレードから出ている朝丘作品にはお気に入りが続いたので気になって読みました。新たなお気に入りがまたひとつ。

    温かい家庭ですくすくと育った一と、家族の温もりを知らないまま、『家族』を求める気持ちから一の姉、真と結婚するも、自分の『病気』を捨てきれず、一度は手にした家族を自ら手放し、自らを攻め続けながら生きる逸人。
    密かに許されない思いを抱いてしまった相手にあれだけ無邪気に無自覚に懐かれたら無碍にはあしらえないよね、辛いよね……。
    空や海の青、二人の想い出の朝顔の色、成長過程の一と、未だ物憂げな想いに囚われたままでいる逸人を縛り続ける青い想い。
    移ろいゆく日々の風景と心の色の描写がひとつひとつ鮮烈で胸にぐっと迫ってくるよう。

    真が一の逸人への想いと覚悟のなさを聞いて啖呵を切るシーンは突き刺さりました。
    常識的な家庭に育ち、逸人を夫として迎え入れて彼と家族を作っていくつもりだった真には彼が自分の性癖にずっと苦しんできた事も、それらを乗り越えて覚悟して生きていくことがどれほど困難なことなのかも全て分かっていて、一の『自分の気持ちだけが大事で世界の全て』な子どもっぽい真っ直ぐさが苛立って仕方なかったのかもしれない。
    些細なことから爆発して喧嘩→翌朝に姉の方がケロっとしておおらかに流してくれるあたりは『家族』のあり方を象徴する良いシーンだったなと思います。
    朝丘さんは同性愛者として生きていく覚悟と苦しさを容赦なく描く作家さんですが、家族の絆、一度手にしかけたそれを自ら壊してしまったという罪の意識と苦しさ、逸人の生い立ちの苦悩が容赦なくのしかかってくるので読んでいて苦しかったです……。
    自分を偽り、抑えながら生きてきた逸人が一の真っ直ぐさに絆されて脱皮しようとし、子どもらしい真っ直ぐな憧れと想いをぶつけていた一は本当の意味で逸人を受け止め、彼の人生を救おうとする。重く苦しい話で、その後の二人にもまだまだ問題は山積みだろうとわかっていても、二人の成長物語として清々しく心地よく読めました。
    あれだけ苦悩していた逸人が意地悪さを覗かせるラブシーンも、星がパラパラと二人の上に降ってくる場面もとても好きです。
    挿絵の雰囲気も合ってるんだけど、一と逸人が身長くらいしか描き分け出来てなくない? これじゃ双子の兄弟だよ
    ってところが残念……。

    カラスの久美もそうだけど、朝丘さんの描く女の子は特徴的というか、ちょっと無邪気な不思議ちゃんぽいのでその辺がイラっとする人も居るんだろうなぁ。
    個人的には加奈ちゃんと泉堂のその後が気になります。ケンカップル万歳。笑

  • 痛々しい。常識的で固い家庭で育った人って同性愛者でも異性愛者でも好きな人との関係を深めていくときこんな感じなのかなって思った。大変だなあ。。

  • 朝丘さん2冊目。朝丘さん好きなんだけどなかなか見つけられなくて読めてない。これも大好きなお話でした。個人的には逸人さん、受かと思ってました。

  • 朝丘さんの作品を初めて読んだのが「坂道のソラ」だったためか、今朝丘さんの作品を集めて年代の古いのを読むとどうしても文章の拙さが目についてしまう。
    このお話もテーマの選び方はいいと思うのだけど、話の進め方が各所強引で、1本の綺麗な道が見えて来ない。

    とはいえ、個人的に好きなキャラクターが動いてくれたので、評価を下げることも出来ずにこの評価です。

    けなげな男の子が好きなら読んで良し、、かな〜
    登場人物の名前の付け方がイイ

  •  これは絶対しっとり系のいい話だ! と思って読んだら、やっぱりしっとり系のいい話でした。
     こういうので当たりを引くとワクワクしますよね!

     物語の主人公は岩瀬一。
     一って書いて「いち」。

     一には真という姉が一人いて、その姉は一度、二十歳の時に結婚し、その三年後に離婚した。
     一は、その姉の元夫である元義兄のことが大好きで、元義兄の玖珂逸人の元に通い詰める日々だった。
     逸人は、一の姉と離婚すると共に、今まで勤めていた大手企業を辞め、「夢」と言っていた海岸で喫茶店を営む日々をしていた。
     けれど、一の目に映る逸人は何となく表情も冴えず、全てを諦め切った表情を浮かべているように見えた。
     一はそれが悲しくて、なんとかして逸人を笑顔にしようとするけれど、逸人は二言目には一に対して「もう来なくていい」と言い、「バイトとしては雇わない」と言うのに、時給九百円のお小遣いを一にくれたりする。
     一はそんな自分の立場を歯がゆく感じるのだけれど、同時に自分では逸人を癒せない事を強く意識していた。
     そこまでして逸人を想う自分の気持ちを、一は家族や友人に感じる親愛の情だと、深く考えた事もなかったけれど、ふとしたことがきっかけで一は自分が逸人に抱く想いが「恋」であることに気が付いてしまう。
     せめて本気で想っている事だけは知って欲しい、と思った一は、振られる事を前提に決死の思いで告白するけれど、結局、逸人に望まれたのは一が、逸人にもう会いに来ないで忘れる事、だった。
     一は、自分に対して彼がそう感じるのは、まだまだ自分が子供で頼りないせいだと考え、自分がずっと思っている事だけは忘れないでほしい、と告げ、彼の前に姿を表さないようになる……


     という話でした。
     家族に恵まれなかった逸人と、家族に恵まれた一。
     逸人は、一の家族を壊したくないと、ありきたりの幸せを一とその家族には手に入れて欲しいと願い、その手を振り払うけれど、真っ直ぐな一は、その逸人の想いまで踏み越えて、彼を手に入れる……という感じの話でした。

     なんというか、一の真っ直ぐさと純粋さが、逸人には怖かったんだろうな……と思いますが。
     こういうちょっと現実を噛みしめる感じの痛い系の話は大好きです。

     そしてそれよりも何よりも、元妻・真がかっこよすぎる!

  • この方の本は2冊め。そして2冊めにして、じっくり心情を描き出していく人なのだな。と認識。
    今回もちょっとまどろっこしかったけれど、切ないどうしようもない気持ちがじわじわ伝わってくる展開になっていました。
    元義兄弟モノ。一が中学生のときに姉と結婚して義兄となった逸人が一は本当に好きだった。いろんなことを教わって、指針になる人だった。けれど姉夫婦は3年で離婚。その後、他人となった逸人の元に一は通い続けて、ようやく自分の気持ちが恋だと認識する。
    一のことが好きで、でも元嫁の弟で彼の家族を裏切ることも、彼の将来を奪うこともできない逸人はずっと一を拒み続けて。
    でもずっと孤独に家族を求めて生きてきた逸人を全部丸ごと受け入れてくれるのがどうしても一しかいなくて・・・・。
    寂しさと苦しさに押しつぶされそうなテンション低めの話ですが、別に暗いばっかりでもない話。
    じっくり染みる感じで読めます。

  • 元義兄と元義弟の話。
    逸人さんの葛藤に胸打たれました。自分の家庭環境や”病気”によって、だからこそ家族をつくりたかった、結婚したかったっていう思いに。
    読んでいる途中で一瞬、逸人さんが受けかと思うくらいにヘタレてました。そんなはずはなくてホッとしました。

  • レーベルがシャレードということで、ちょっと大人向けな感じ。

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