きりのなかのサーカス

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  • / ISBN・EAN: 9784577036976

作品紹介・あらすじ

冬、自然は眠る、そして夢を見る、すると霧があらわれる。霧の中を歩くのは、自然の夢の中をさまようようなものだ。ブルーノ・ムナーリの名作絵本が、谷川俊太郎の新訳でついに復刊。

感想・レビュー・書評

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  • ouiさんが「Nella nebbia di Milano」という絵本を紹介していて、レビューを読んでとっても驚いたのでクリスマス用のプレゼントとしてマイリストに載せてみた。さっそく(蔵書数は日本でも有数の)県立図書館で探してみた。無かった。諦めていたら、cinejazz0906さんが日本語版を今年1月4日に紹介してくれていた。日本語版があること自体、思いついていなかった。

    もはや美術品です。最近、体験する現代美術館が流行っているけれども、わざわざ行かなくていい。取り寄せて、一枚一枚捲るだけで、世の中と同じように、霧の中から世界が姿を現す。

    幼児絵本じゃありません。大人が観ても、説明できない。
    確かに霧を掻き分けて進む風景をトレーシングペーパーを利用して描いているのは、映画を観ているかのよう。ほとんど白黒の世界の向こうに次第と色鮮やかなサーカス小屋が見えてくるのも説明がつく。かのように思っていた。

    サーカスはサーカスじゃなかった。
    それは何なのか。
    オプラって何?
    どうして魚がいるの?
    黄色やら緑色やら赤色やら
    囀りやら叫び声やら音楽やら
    不思議な世界は
    夢のように終わる

    行きは街の中
    帰りは森の中
    霧の中では近づく時より
    振り返って見る時の方が
    ハッキリ見えると
    私は気がついた。

    • yyさん
      kuma0504さん

      こんにちは。
      kumaさんのレビューが素敵で、図書館検索をかけてみました。
      そうしたら、なんといつも使う図書...
      kuma0504さん

      こんにちは。
      kumaさんのレビューが素敵で、図書館検索をかけてみました。
      そうしたら、なんといつも使う図書館で「在架」!
      明日、借りに行きます。
      楽しみ☆彡
      ありがとうござます。
      2023/01/26
    • kuma0504さん
      yyさん、こんばんは。
      私の拙いレビューで読む気になってくれたとのこと、とても嬉しいです。
      仕掛け絵本は高価なので、図書館にあるとありがたい...
      yyさん、こんばんは。
      私の拙いレビューで読む気になってくれたとのこと、とても嬉しいです。
      仕掛け絵本は高価なので、図書館にあるとありがたいですね。
      2023/01/26
  • 多くの皆さんの素敵なレビューに誘われて
    手に取った作品。

    絵本作家としてだけでなく…多方面で活躍されて
    有名なイタリアのミラノ生まれの
    ブルーノ・ムナーリ(1907~1998)人気作品である。

    この作品スタイリッシュで…お洒落!

    厚手のトレーシングペーパーで「霧」の世界観を幻想的に表現している。
    その表と裏に、主に黒色でグラフィックデザインなどの絵や文字が描かれているのだが、ついあちこち、じっと見入ってしまう。
    頁を捲る度に、まるで霧のなかをゆっくり進んでいくような臨場感を味わえるような感覚になる。

    そしてモノトーンの霧のなかを抜けるとそこは
    打って変わって色鮮やかなサーカスの世界。

    今度はカラフルな色画用紙の頁で進む。

    幾つか開けられた穴と素敵な色合いは頁を捲る度に
    仕掛け絵本の楽しさを教えてくれる。

    また、黒色のグラフィックデザインのお洒落な絵。
    それと、ピエロやサーカス団員や、動物達の…
    ちょっとユーモラスな手書きの絵なども織り混ぜて
    描かれていて、頁を捲ると次々現れてくる。

    それらの絵と共にある短めな文章…も、何か楽しい。
    絵も文章も何か少し奇妙だったり、
    つじつまあわないような感じ…だったりして
    なんだか不思議感が漂うかんじ。

    それは実際のサーカスを観ているときに感じる…
    ちょっと驚かされたりする感じとか…
    滑稽さを楽しむような感覚だったりに似ていて…。

    何か不思議で、可笑しな夢の世界と
    同じような感覚に出会うようで。やっぱり何か楽しい。

    そんな色鮮やかで…楽しくて不思議なサーカスの世界を抜けるとそこはまた、霧の世界に…。
    黒白モノトーンの幻想的な霧の世界の
    数頁を捲りながら
    終わるラストは
    美しくて寂しく感じた。


    ブクログをしていなかったらおそらく
    知り得なかったであろう、この…
    アート作品。
    出会えて良かったな

    谷川俊太郎さんのあとがきは、
    ムナーリのこのような言葉で締め括られていた!
    「芸術作品を理解するときの最大の障害はわかりたいという《欲求》である」

    • snow108さん
      コメントありがとうございます。
      ブクログは、まだまだよくわからずコメントにどう返していいのかもわからず、こちらにコメントしました。(これで合...
      コメントありがとうございます。
      ブクログは、まだまだよくわからずコメントにどう返していいのかもわからず、こちらにコメントしました。(これで合ってるのか?)
      こちらこそ、色々本選びの参考にさせていただいてます。とても素敵な絵本でした。
      今後ともよろしくお願いします!
      2023/02/12
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      snow 108さん、お返事ありがとうございます(^^)
       私もブクログは、まだまだよくわからずに使っております……。
      こちらにお返事もまっ...
      snow 108さん、お返事ありがとうございます(^^)
       私もブクログは、まだまだよくわからずに使っております……。
      こちらにお返事もまったく問題ないです~(^^)
       素敵な絵本だと思っていただけたこと…良かったですし、嬉しかったです。
       こちらこそ、これからもどうぞよろしくお願いします。(^ー^)
      2023/02/12
  • kuma0504さんのレビューに惹かれて手に取った絵本です。

    最初のページを開くと、空を飛ぶ黒い鳥が一羽。
    そのずっとずっと先が ぼんやり霞んでいます。
    霧!!
    モノトーンのトレーシングペーパーが8枚。
    遠くがよく見えない仕組みになっていて、斬新。

    街の中。
    青信号だけど、用心深く進みます。
    信号を抜けた6枚目と7枚目。
    不思議な標識が気になります。
    “DRINK EAT SPEND”
    “CONSUME” “CONSUME” “CONSUME MORE” 
    もっとお金を使おうって どういうこと?

    そこから先は一転、カラフルなサーカスの世界。
    ピンク、黄色、緑、青、紫、赤。
    あちこちに穴が開いていて、
    前や後ろのページを覗くのが楽しい♪♪♪
    光と音がズンチャカ ズンチャカ 賑やかに躍り出す。

    そして帰り道。
    静かな、静かな自然のモノトーンの世界。
    4枚の「霧の中」を通り抜けて家路につきます。
    光と音の興奮が静かにおさまって
    寂しいような落ち着くような…。
    最後、木にとまっている鳥は最初のとは別かな?

    作者のムナーリ氏はたびたび来日して
    折り紙や書道に興味をひかれていたようです。
    最後のページは、ちょっと墨絵っぽい。
    原本はイタリア語。
    色々な経緯を経て
    谷川俊太郎さんのリズミカルな和訳に。
    それも楽しい。

    kuma0504さんが「体験型のアート」と表現していらして
    鬼 納得!

    • kuma0504さん
      yyさん、おはよう御座います。
      さっそく読んだんですね♪

      標識、気がつきませんでした。
      ありがとうございます。
      yyさん、おはよう御座います。
      さっそく読んだんですね♪

      標識、気がつきませんでした。
      ありがとうございます。
      2023/01/28
    • yyさん
      kuma0504さん

      コメント、ありがとうございます。

      実は、図書館に探しに行ったら
      置いてあるはずの番号のところに見当たらな...
      kuma0504さん

      コメント、ありがとうございます。

      実は、図書館に探しに行ったら
      置いてあるはずの番号のところに見当たらなくて
      職員の方が2人「出動」してくださいました。
      待つこと15分。
      「ありました~!」と出てきたのです。
      待っている間、「霧の中」気分…。

      素敵な絵本のご紹介ありがとうございました。


      2023/01/28
  • ブルーノ・ムナーリの1968年の作品を、谷川俊太郎さんが新訳した本書は、『文字言語と同じように造形美術にも、ものごとを伝達する機能がある』ということを形にした、『視覚言語』の探求の証のひとつとの事です。

    また、谷川さんのあとがきにあった、ムナーリの言葉である、『芸術作品を理解するときの最大の障害は、分かりたいという〈欲求〉である』は、私が本書を読んで早速共感してしまうくらい、ぴったりな表現に思われて・・まさに全然理解できないから、そう思ってしまった時点で、私はまだまだだと痛感しました。だって、本書は『子どもに「霧」をわからせるのには~』と書いている事から、お子さんへの作品ですものね。そう感じると、やはり大人になって何か忘れかけているよなって考えてしまい、それが今の私にはすごく気になる。

    というわけで、今度は身構える気持ちも、本書の文章も無視して、何となくページを淡々と捲ってみることに・・しかし、やはり細かいところばかり、見てしまうんだよなあ。

    例えば、最初の鳥の次のページの、信号機みたいなやつ。これ、ちゃんと中の部分が表裏で交互になってて、なんか見てしまうというか、面白い。

    また、その次の車の前面の「41」の色違いのドット柄も、しばらく、じ~っと見てしまう。何だろうね、これも面白い。

    そして、霧を抜けた先にあるサーカスの中では、一転してカラフルで、情報が目まぐるしく一気に入ってくる感覚が、それまでの一歩一歩慎重になるような手探り感と異なり、ワクワク感が募る。

    これは、見たままを楽しむだけだろうと思いきや、今度は色と色との重なりと組み合わせがあり、これを理解しようとしても「?」なので、感じたままに綴ると、私は黄色とピンク色の組み合わせが好きかな。これがおそらく、音楽と鳥とが織り成すシンフォニーが聞こえてくるようで、見ているだけで心地好くなってくる。

    それから印象的だったのは、弓矢で射ようとしている、的の多色さで、私には色が多いほど、それを成し遂げるための緊張感みたいなものも重なっている気がして、実際にどんどん捲っていくと、そこに描かれている、とりとめのないエピソードを知っていく事で、これだけの出来事が裏に潜んでいるのだから、この一矢に賭ける思いは、さぞ相当なものなのであろうと、想像してしまう。何書いてんだかって感じですけどね。

    また、その的の裏を振り返る度に実感するのは、赤の存在感で、私にとって赤といえば、燃えるような一瞬だったり、ものごとの始まりであったりするのだが、その中でもギターのサウンドホールの存在感は、たとえ弦が切れていても、そこから素敵な音が聞こえてきそうで、これぞ正に色の持つ力だと思い知る。

    そして更に、前を向くだけではなく、時には後ろも振り返ってみると、これまた違う光景があって、こういうのはお子さんの方が、すぐ見つけそうですよね。そんな好奇心旺盛なところ、私も見習いたい。

    特に、最後の公園を歩きながら振り返ってみた時の、サーカスの黄色とピンク色の名残は、まるで秋の夜空とお月さまみたいで、木々の美しさとも重なって、とても綺麗でしたよ(もちろん猫もね)。

  • ブクログでフォローしてる方々が紹介されていてとても気になったので手にしてみた。

    紙の材質だったり、穴が空いていたりと、いろいろな仕掛けがあり大人でも楽しめる。一度では気づかない事もあり何度も読み返してみたくなる絵本だった。

    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      snow108さん、こんにちは(^^)
       チーニャと、申します。フォローしていただいてましていつもありがとうございます。
      私も読んだこの本を...
      snow108さん、こんにちは(^^)
       チーニャと、申します。フォローしていただいてましていつもありがとうございます。
      私も読んだこの本をレビューしていただいてとても嬉しくなりました~
       これからもどうぞよろしくお願いいたします(^ー^)
      2023/02/12
  • 霧の中、進行方向もぼんやりで、振り返って、ぼんやり見えていたものが、急にくっきり見えたり。
    霧の街を歩く不安な気持ちを再現。
    そして、そんな霧の中に突然あらわれるカラフルなサーカス。
    ページを捲ると思いもよらない展開が次々と。
    そして、また霧の中。
    サーカスが賑やかだっただけに、しーんとした気持ちになる。

  • あまりにもかっこいい。そしてワクワク!!
    こんなにワクワクできて、それでいてシンプルなしかけ絵本は初めて!!
    きりのなかのサーカス…本当にサーカスに辿り着くまでのきりのなかを進んでいく臨場感がたまらない。
    きりをトレーシングペーパーで表現していて、表裏両方に印刷しているから、向こう側もページの裏側も透けて見えて、きりのなかの見通しの悪さと揺らぎとスリリングさを、シンプルでわかりやすく表現している。
    なんてかっこいいんだろ!
    きりのなかにあるモチーフ…イラストたちもモノクロでとってもかっこいいんだ。ところどころある数字はなんだろ?意味なんかなくてデザインなのかな?だってかっこいいもんな(語彙力)!
    そしてカラフルなサーカス!
    めくるたびに発見とユーモアがあって、もうワクワクがとまらない。
    そこ繋がってるんだ!わあ、穴があいてるだけなのにこの穴のなんて表現の魅力的なこと!
    しかけ絵本だけど、どこもいじる必要なんてなくて、シンプルにページをめくるだけで、ワクワクへと導いてくれる。
    衝撃的な絵本だった…何回でも読みたい。

  • 紙の素材や、ページの切り抜き方が工夫されていて、強いて言えばしかけ絵本に入るのかと思います。
    言葉ではなく、見せ方で目を奪われる絵本。おしゃれです。

  • イタリアの美術家<ブル-ノ・ムナ-リ(1907-1998)>の、トレ-シング・ペーパ-を素材にした 「霧」 のベールの中から現れる、視覚と感性に訴えてくる臨場感あふれる〝サーカスの世界〟への誘い。 ページを繰るごとに想像力を試される、奥行きの深いデザイナ-・ブック。 翻訳とあとがきは、詩人の谷川俊太郎サンです。

  • 芸術畑の教材と聞いて納得した。

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著者プロフィール

ブルーノ・ムナーリ(BrunoMunari)
1907年ミラノ生まれ。イタリアの前衛美術活動「未来派」に共鳴し、造形作品の発表をはじめる。1930年代よりグラフィックデザイナー、アートディレクターとして本の編集や装丁を手がけ、戦後ダネーゼ社をはじめとするプロダクトデザインの仕事も多数。1954年、55年、79年にコンパッソドーロ賞を受賞。子どものための実験的な絵本やワークショップによっても世界に知られ、1974年、84年に国際アンデルセン賞を受賞。60年代以降、ハーバード大学で視覚表現によるコミュニケーションについて講義を行うなど、新しい時代のためのデザイン教育に尽力。1998年の没後なお、創造の本質に迫る教育の普及に貢献し続けている。

「2018年 『点と線のひみつ ブルーノ・ムナーリのデザイン教本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ブルーノ・ムナーリの作品

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