- Amazon.co.jp ・本 (48ページ)
- / ISBN・EAN: 9784579401642
感想・レビュー・書評
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昨日に引き続き、読むのを楽しみにしていた1冊。「小さなきかんしゃ」に出てきた登場人物のお父さんが出てきたりして、「小さなきかんしゃ」を読み返したり・・本当に楽しい!グレアム・グリーンのファンになった。日本語訳も楽しい。エドワード・アーディゾーニの絵も素晴らしいな。
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リトル・スノーリング村に住んでいる、サム爺さんと旧式の消防ポンプ車、引き手の子馬のトビーは、この村唯一の消防団として勇敢に活躍してきました。
ところが、町長さんはサム爺さんがキライでした。
村へ視察に行ったときに挨拶をしない…。
そこで、町長はサム爺さんを追い出してしまおうと、ロンドン市長へ手紙を書きます。
「新しい本物の消防自動車を送ってくだされ」
消防記念日は年に一度のイベントでした。
サム爺さんも年に一度の晴れ舞台をと、消防車をピカピカに磨き上げ、その日を待ち望んでいました。
ところが…
ロンドンから新式の消防自動車が導入され、消防記念日はそのお披露目になり、サム爺さんと小さなしょうぼうしゃはお払い箱になってしまうのです。
突然の失業にサム爺さんは途方に暮れます。
「そうじゃ!行商をやろう!」
トビーとしょうぼうしゃは行商の車に変わり、商売の日が続きます。
サム爺さんの丸く寂しそうな背中が悲しげです。
冬のある日、
新式消防車の若い仲間に遭遇します。
サム爺さんは雪で覆われ雪だるまみたい。消防車には雪が積もって大きなクリスマスケーキみたいな無様な格好です。
彼らからはからかわれ、雪玉を浴びせられ、
「もう、いやだ。もう、おしまいだ」
クリスマスの休暇中、
サム爺さんは家を出ませんでした。もう家賃を払うお金もありません。大家さんに会うのが怖かったのです。
それ以上に、食べるものすらありません。
すもものプディングが一つ。
小さなパイが1ダース。
それが、サム爺さんに残された食料の全てでした。
朝ごはんは、小さなパイを半分に割って。
昼ごはんは、残りの半分とプディング一切れ。
晩ごはんは、パイ半分かプディング一切れ。
お勝手で立ったままの寂しい食事がサム爺さんの心境を代弁しています。
大晦日の夜。
もう半分のパイしか残っていませんでした…。
その夜、新しい消防団の人たちはパーティーに酔いしれていました。
その時、クートさんの農場から火が出ました。
サム爺さんは寂しく寝ていました。
焼き豚を食べる夢を見ながら…
夢の中の焼き豚はなぜかパイの味。悲しすぎる展開に涙です。
しかし、奇跡は起こります。
クートさんの農場に来ていたトビーは火事を知らせにサム爺さんを起こしに行きます。
起こされたサム爺さんは、
現役の頃と見まごうばかりに、トビーと小さな消防車を従え、
「ハイ、ヤイ、ヤイ、ヤイ」
と掛け声をかけて現場へと向かいます。
もうお正月の明け方になっていました。
火は消し止められました。
村の人はサム爺さんへの仕打ちを後悔しました。
消し止められた後、新しい消防団の人はノコノコやってきて面目は丸つぶれです。
そして…
町長さんは辞めさせられ、
新しい消防団はロンドンへ送り返されてしまいます。
サム爺さんへは勲章が贈られ、
トビーには高級角砂糖がご褒美に!
村の人びとは
新しい消防署を建て、サム爺さんを迎え入れました。
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新しい物、古い物の入れ替わりは何処の世界にもある姿です。
新旧交代の狭間には、哀しみや喜びの素朴なありさまを私たちは立ち会わなければなりません。
そんな様子をしみじみ描いた傑作です。
小さな子供の視点では、「しょうぼうしゃ」への関心が主だと思いますが、30歳を超えてなお、深い余韻を得られる、非常に珍しい大人が読むべき絵本だと私は思います。
グレアム・グリーンは小説書きが本職で、絵本の原作は4作品しかありません。
このお話は1946年に出版され、1973年になってアーディゾーニの挿絵で絵本化されました。
日本では文化出版局から1975年に出版され、2000年に6刷が出て以降、ついに絶版となりました。