オペラの20世紀: 夢のまた夢へ

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  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (813ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582219722

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  • プッチーニ、Rシュトラウス、ドビュッシーのような伝統的に思いがちな作品も20世紀であるが、その後も実に魅力的な作品が多いことを著者は力説しておられる。映画、ミュージカルなどのライバル娯楽台頭によるオペラの危機が叫ばれ、過去への甘い憧憬と感傷、そして退嬰的な特徴があったオペレッタはその渦の中に飲み込まれたが、オペラは生き残った!。
    20世紀は新しいオペラは不調のように思われるイタリア以外でも、国民学派と呼ばれる音楽が独伊仏以外の各国で隆盛を迎える。(それが、文化周辺国という差別!では)ヴァーグナー音楽・ヴェリズモの影響、そして独伊ともにこの音楽の潮流がファシズムに結びつき、オペラ界には強く、大きな影響を与えた。音楽だけではなく、世界史・現代史、哲学などの広範な知識に基づく実に内容が豊富な大冊。正味700ページ上下段は圧倒的迫力。代表的な現代オペラとして「モーセとアロン」、「ルル」、「ヴォツエック」「ボーギーとベス」「ピーター・グライムズ」など既に有名になった作品が紹介されている他、ジョン・アダムズ「中国のニクソン」に詳しいページが割かれる。伝統的な西洋の音楽をベースに、パロディとしてではなく、江青やニクソン夫人のアリア、そして毛沢東、周恩来、キッシンジャーなども登場する内容はオペラが扱っても決して可笑しくない領域であり、既に歴史になっていると考えれば、興味深い。ぜひ一度聞いてみたいと思った。

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著者プロフィール

1958年生まれ。東京大学大学院教授、表象文化論。音楽評論家として朝日新聞ほかで演奏会評を執筆。日本音楽学会会長。主著に『前衛音楽の漂流者たち──もう一つの音楽的近代』(筑摩書房)、『フェッルッチョ・ブゾーニ──オペラの未来』(みすず書房)、『戦後の音楽』(作品社)、『オペラの20世紀──夢のまた夢へ』(平凡社)など。

「2023年 『日本の作曲2010-2019』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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