- Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582302295
作品紹介・あらすじ
ゴンクール賞受賞作!カリブの都市の貧民窟で、都市計画家と土着の語り部女性が紡ぎだす、流転の街の物語。
感想・レビュー・書評
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読み始めは、何のことだかよく分からなかったが、並行してセゼールの帰郷ノートを読んで、物語の舞台であるマルティニック島の歴史を少しばかり理解できて、この物語が面白くなった。
テキサコという黒人の住む地区に都市計画が持ち上がり、それに反対するその地区の老女マリー=ソフィーが地区の成り立ちの歴史を物語る。聞き書きをする役人も、地区には歴史書には書かれていない混沌とした物語があることに気づく。
この島のこの地区の黒人たちは、アフリカから連れてこられた奴隷の子孫であったが、アフリカには根ざしておらず、かと言って、マルティニック島の属する本国のフランス人のアイデンティティも持っていない。
マリーは、どこにも根のない、この島のこの地区で混沌とした物語にこそ根ざしている、それにこそ価値があるのだとの信念から物語る。
フランス人の真似も、アフリカ人の真似もする必要などない。自分たちはこのテキサコにこそ根ざしているのだと。
セゼールの主張したネグリチュード(黒人性)からさらに進化したクレオール性を力強く打ち出した傑作。
クレオール文学に関して、さらに学んでみたいと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
感想は下巻で
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フランスのカリブ海の植民地、マルチニック出身の作家によるクレオール文学の白眉。
一つの街を誕生させた女性のとめどない語りによる年代記。
フランス植民地としてのマルチニックの歴史、政治、社会、人種問題、街と辺境とのせめぎあい・・・など様々なテーマを包含しながらも、やはり一人の女性の愛と戦いの物語である。
とにかくある女性の人生、喜怒哀楽の遍歴についてのとめどない語りに身をまかせる、そんな本。