- Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582302301
作品紹介・あらすじ
クレオールの金字塔!この10年で最も注目すべき作品と評価されたフランス語/クレオール語小説、ついに偉業の邦訳なる。
感想・レビュー・書評
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読み始めは何の物語がよくわからず、最後まで読めるか自信もなかった。しかし、読み終えた今、感動で胸が熱くなった。テキサコの名の意味がわかった。ある日やって来たキリストが何だったのかもわかった。マリーの長い長い語り、混沌とした物語、それが何だったのかがわかった。
年表や歴史書では描ききれない真の歴史、歴史のただなかを生きたひとりの女性が語った西インド諸島のウィンドワード諸島に属するフランス海外県マルティニック島の歴史。三角貿易のためにアフリカから奴隷として連れてこられた人々の子孫、クレオールのアイデンティティを高らかにうたう。アフリカに根を持ちながらもアフリカの文化も歴史も持たず、フランス国籍でありながらもフランスの文化や歴史に同化しきれない、かつての植民地の支配構造を色濃く残した社会の底辺で生きるクレオールのアイデンティティとは何かを、力強く打ち出した叙事文学。
クレオールという言葉は、もともと植民地性を表す負の意味合いを持っていたが、シャモワゾーら新進の作家らは、クレオールを自分たちのアイデンティティを確立する新たな武器に変えた。
訳者後書きより、
「クレオール」…それは「起源」ではなく「」「生成」、「純粋性」ではなく「混血性」、「普遍性」ではなく「多様性」に基づく世界観を担っているという意味で、いたるところで「起源」、「純粋性」、「普遍性」が隘路に陥り、悲劇をもたらしている現代の世界全体へと開かれているのだ。
大事な視点だ。さらに訳者は、クレオール文学の課題も提示していて興味深い。現代のマルティニックの現実はさらに複雑さを増していると。 -
上巻参照。