〔白川静の絵本〕サイのものがたり

著者 :
  • 平凡社
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582403398

感想・レビュー・書評

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  • 白川静さんの絵本

    「サイのものがたり」

    おすすめです。漢字の理解、楽しさを知ってもらうなら、この本から入るのがいいかと。 「もし文字の背後に、文字以前の、はかり知れぬ悠遠なことばの時代の記憶が残されているとすれば、漢字の体系は、この文化圏における人類の歩みを貫いて、その歴史を如実に示す地層の断面であるといえよう。またその意味で漢字は、人類にとっての貴重な文化遺産であるということができる」

    漢字の成り立ちや意味付けは、専門家によってかなり異なるのだが、白川静さんの「口」は、ものすごく納得がいく。暦を掲示したり、熟語を紹介したり、、白川さんの本を手にしたからといって、漢字の指導は成り立ちだ!と傾きがちですが、多様な切り口が必要で、そうでないと、こどもは、飽きてしまう。だって、漢字は、記号じゃなくて、文化だからさ。そんなとき、この絵本を少しでも紹介すれば、かなり効果はあると思う。

    梅原猛さん、市原悦子さん、日本語の、大和言葉について、語れる人が旅立ってしまった。ことばは時空をこえる。白川さんの文には、まさにそう感じる刹那がある。ぼくも、紹介されたときは、気づかなかったけど、この本は、すごい。ぜひ、手にとって読んでほしい。金子さんの絵と合わさると、また格別なのだ。すてきな本を手にとることができたと、感謝しまくりだろう。ありがとう!!

  • 漢字の成り立ちを通して、人と神との関係が絵本として描かれています。
    白川先生の言葉は、スケールが宇宙のように大きく美しいです。
    白黒灰朱で描かれた、ミニマムな意匠の絵も美しいです。

  • 漢字には、神さまの息がかかっているとずっと思っていた。
    いつか漢字について深く学びたいと思っていたので、この本を知ったときには小躍りした。

    現在「口(クチ)」で表記される文字は、
    サイの器を表していたという。
    サイとは、空っぽであるべき器だと。
    ノリトのために。つまり祈りのために。
    人もサイの器なんだと思った。
    よき通り管は空っぽが望ましい。

    サイの器は後年、口になった。
    口は人間を表す。(人口とか)
    口(舌)を神さまはよく戒める。
    サイから離れ、身体的な口になった文字。
    連想が広がっていく。

    しかし、後半はどうも読みづらい。
    引用文で成り立っているためかしら?
    切り貼りっぽい。
    白川静氏のオリジナルに今度あたってみよう。


  • 美しい本。
    絵によってゆっくりと理解していくことができる。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/756566

  • 白川ワールドの魔力にはまる・・・そうだね。
    「漢字は人類にとっての貴重な文化遺産である」という白川先生の言は悠遠だ。

  • とてもよかった。太古の昔を感じる、長い時の流れを感じる絵本。
    ことば(漢字)の解説なのに、「こう生きるべし」と言われているような厳かな気持ちになる。廿=口 の部首や一部をもつ漢字を取り上げて、その成り立ちを紐解きながら、おもに、古代の人たちの考えを解説。

    この本は、白川静の文章から解説を抜き出し、絵をそえて、再構成したという。白川静の漢字の世界に魅せられた、という作者の根底の想いだけあって、その世界観にぞくぞくしながら読める。始まりはシンプルで、どんどん複雑になっていく、その構成が見事。

    「絵本」という媒体で再構成されていて、絵のイメージ(白と黒の、影画のようなコントラスト)が、その漢字にこめられた人々の営みの理解の助けになる。文章は少ないが、行間をたっぷりとっている効果が十分に出ていて、じっくりと読みたい、考えさせられる本。

    また、解説の文章では、その説明として出てくる漢字と、見た目的な表示としてでてくる漢字の、二種類があって、幾通りにも文章が読めるのがおもしろい。
    そのこともあって、シンプルだけど時間をかけたい本。紙の中に、コトバの中に閉じ込められた時間に思いをはせたくなる。

    古の祈りや祭りの精神、漢字の意味、中国の思想などに興味がある人におすすめ。

  • 白川静の深淵のほんの一端にでも触れたものだが、その一端でも、その難解さが現れていることを知らされる。

    自分達が何気なく使っている文字にも歴史と大いなる意味が、それがたった一文字であろうとも含まれていることを知らされる。

    幾星霜にも及ぶ文字の悠遠さに辿りつけるのは、まさに人生をそれに費やし、いや同一となりえた人物でしか至らないのではなかろうか。


  • 2018年、いちばん心に留まってます。
    晴天の霹靂でした。

    わたしたちの遠い祖先の「祈り」のものがたり。

    この本は「文字がまだ無かった時代のはかり知れぬ悠遠なことばの時代の記憶」を漢字から体系的に解き明かしていった、白川静先生の学問に金子都美絵さんの絵が加えられたアンソロジーです。

    漢字のかたちの中には、それぞれとても多くの物語が籠っています。
    できたのは3,000年以上も昔、中国の殷の時代。森羅万象に霊が宿り、自然が恵みでも、畏れでもあり、人間は自分たちの願いを文字に込めました。

    「口(くち)」という漢字は、祝詞を入れる器の形がもとになっていて、「サイ」と読みます。

    「告」「右」「問」「聖」など、どれもこれも「おおおおー!」と納得いく成り立ち。
    むっちゃシビれる。

    親子でお気に入り。

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