チョムスキーが語る戦争のからくり: ヒロシマからドローン兵器の時代まで

  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582703290

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  • 【由来】
    ・確か図書館のAlert?

    【期待したもの】


    【要約】
    ・我々は随分と洗練されたプロパガンダによって世論操作されており、隠蔽されている西側諸国の暴力にはとんでもないレベルのものがある。

    【ノート】
    ・今年の1月に元駐シリア日本大使による「報道されない中東の真実」を読んだ時、メディアの報道偏向が仕組まれているのを垣間見たような気がしてちょっと怖かったのだけど、この本で語られている内容はもっと怖かった。我々、西側陣営の人間は偏向したプロパガンダに慣らされており、その手法は大変洗練されたものになっている。一方、西側に所属しない陣営(ソ連、中国やイスラムやキューバ、ベネズエラなど)では複数のプロパガンダが共存している。しかし、そんなことすら我々は知らない。

    「(ヴルチェク)自由でオープンで民主的であると自称する西側諸国は、かつてのソヴィエト連邦や現在の中国で作られるプロパガンダにアクセスもできなければ、それに影響されることもなかった。プロパガンダだけではなくて、ほとんどの西ヨーロッパやアメリカ合衆国の市民はソヴィエトや中国の人たちの世界観からの影響を受けていない。ほとんど何も知らないから彼らの世界観は一極的です。(略)一方、旧ソ連や中国の人は、昔も今も資本主義や西側の共産主義解釈に精通している。ということは、どちらがオープンで知識に恵まれているのか、ということですね。中国の本屋を覗くと、資本主義の文献もたくさんある。アメリカ合衆国やヨーロッパの本屋には共産主義中国の文献などまずない。(P71)」

     手軽な例では、ロシアの日本語ニュースであるSputnik日本語版(http://jp.sputniknews.com/)にアクセスしてみるのがよいと思う。プロパガンダだなとは感じつつも、日ごろ接しているのとは随分と違う視点があるのだということは実感できるだろう。

    ・本書の中で一番怖かったのは麻薬の話。「(チョムスキー)アメリカとしてはシチリアのマフィアと南仏のコルシカ・マフィアを(スト潰しのために)再興した。もちろんマフィアもただでは労働組合を潰さないから代価が必要だった。それがヘロイン産業のマフィア支配だった。これがかの有名なフレンチ・コネクションで、南仏からはじまって世界中に広まったのです。だからどこでも騒乱や転覆があると麻薬の売買がそれにつきまとうことには理由がある。よって、もしCIAがで政府を転覆して労働組合を潰すとかいうときには、まず必要なのは人、それから裏金、足のつかない資金ですね。それら揃えば世界中どこでもうまくいく。(P180)」

     余談だけど、初代ロボコップで悪役のクラレンス(マフィアのボス)がジョーンズ(オムニ社の幹部)に「人々が集まる。それを仕切りたくないか。麻薬への需要がすごいことになるぞ」と誘われるシーンを思い出した(うろ覚えだけど)。

    ・本書で言及されていることがらの幾つかは佐藤優本でも触れられていたので最後に少しリストアップしておく。

    本書「(ヴルチェク)いまや搾取をあからさまにおこなっているのはフランスですね。アフリカじゅうでフランスが果たしている役割は信じられないくらいで、ジブチからソマリア、西サハラからリビアまでその行状は凄まじい。 (P167)」

    超したたか勉強術(佐藤優)「フランスは西アフリカで石油やウラニウムなどの地下資源を巡って乱暴なオペレーションを展開している。(93.5% *電子書籍なのでページ数表示できない)」 

    本書「(ヴルチェク)(ヨーロッパにおける)極右の台頭も当然だと思う。第二次世界大戦後にヨーロッパが世界の何千万という人を犠牲にして作り上げた、自己中心的な社会福祉システムの化けの皮がはがれてきたのです。 (P90)」

    超したたか勉強術(佐藤優)「ネタニヤフ首相は、ここに来てヨーロッパにおける反ユダヤ主義という地金が出てきたことを察知したのではないか(94.1%)」

    【目次】

  • 今の世界を見方を変えるとこうなるのだなと思った。欧米のやっていることを素直に評価すると、自由の名のもとに実際にやっていることは、自分たちの利権のために過ぎない、そのことは見えてはいたが、人種差別の根がこれほどまでに深いということは衝撃だった。ブッシュがイラクを攻めた時、道理も何もなかった。しかし彼は裁かれてはいない。それは以前から同じ思いだったが、ケネディにしろクリントンにしろ結局は同じようなことをしていたということまでは見えてはいなかった。プロパガンダにより情報が統制されているとするなら、真実を知る必要がある。

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著者プロフィール

ノーム・チョムスキー(著) 1928年生。言語学者、批評家、活動家。アリゾナ大学言語学栄誉教授。『統辞構造論』(1957年)において言語学に「チョムスキー革命」をもたらし、その後も生成文法研究の発展を牽引し続けた。エドワード・ハーマンとの共著『マニュファクチャリング・コンセント』(1988年)では自由民主主義社会における思想統制のメカニズムを分析した。またベトナム反戦運動では中心的な役割を担い、それ以降も各地の独立メディアと協力して様々な草の根運動に協力し続けてきた。主に自国アメリカの国内外での強権主義に対して、アナーキズム思想と大量の歴史的資料に基づいて重厚な批判を展開している。存命中の学者としては世界で最も多く引用されている。ウェブサイト:https://chomsky.info/

「2021年 『気候危機とグローバル・グリーンニューディール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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