増補 借家と持ち家の文学史: 「私」のうつわの物語 (956;956) (平凡社ライブラリー 956)
- 平凡社 (2023年11月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582769562
作品紹介・あらすじ
男たちは「家造り」を小説に書き続け、女たちは「家出」ばかりを書いてきた。明治から150年の小説群を「家」で読み解いたときに見えてきた、日本の家、家族、家庭の形。
感想・レビュー・書評
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天涯孤独の身の上でなければ、人は一たびは「家族」の中で暮らす、そしてそのうつわである「家」に住む、持ち家や借家の違いはあれ。戦前の明治民法下には「家」制度があり、「家」制度の桎梏との対決ということが個の自立を目標とする近代文学上の大きなテーマの一つであったし、そもそも人間の営みを描こうとする小説においては、生活の拠点、うつわである家が舞台となることが多かった。
しかし、家族はともかくとして、家族のいれものである「家」に着目した文学史という視点が面白い。本書では、明治から令和まiでに書かれた小説を取り上げ、「家族」について、家/家庭/個人という関係性が、またうつわである「家」について、いろり端のある家/茶の間のある家/リビングのある家/ワンルームとその変遷していく様が、具体的な引用で紹介される。
読んだことのある作品もあるのだが、引用されている箇所は本筋とはほとんど関係ないと読み飛ばしてしまっていたところが多いので、「ああ、そういう読み方もできるのか」と思うことしきり。
また、男性作家が主として家の内部と家族のありようを繰り返し書いていたのに対し、特に戦前の女性作家の作品に、父の家又は夫の家から出ることを描く「家出小説」があり、その舞台も多く借家であったが、それが自由のものに見えたとの指摘は新鮮だった。
本書は増補版で103編もの作品が紹介されている。興味のある一冊を読むのも良いが、著者がいう大量の文学作品を「一冊の大河小説」として読む読み方、複数の作品を読むことで、その間のつながりや変化というものを読み解く読み方というものも面白いのではないかと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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