物は言いよう

著者 :
  • 平凡社
3.45
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本棚登録 : 294
感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582832419

作品紹介・あらすじ

性や性別についての望ましくない言動を検討するための基準です。しかし、意識のありようまではとやかくいいません(心の中で「このブス」「このクソババア」と思うのはかまわない。)せめて、おおやけの場ではそれに相応しいマナーを身につけよう、との趣旨で考案されました。本書を通して、笑いながらFC(フェミコード)感覚を身につければ、いやーなセクハラ、思わぬセクハラとは、もうさようならです。

感想・レビュー・書評

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  • 痛快。よくいる失言議員から村上春樹、大江健三郎まで斬って斬って斬りまくるフェミニズムの実用書。セクハラとまではいえなくても「ん?」と違和感をおぼえるような発言まで拾い、一つ一つ丁寧に解説していく。分厚く見えるがサラサラと読めてしまうのは、ユーモアたっぷりで重くないから。

  • その場ではうまく説明できないけれど腹が立ったひと言とか、政治家の失言のどこがどうダメなのか、を説明してくれます。自分自身、ああ、それでムッとしたのか、と今更ながら腑に落ちることも、自分もつい言ってしまいがちな言葉かもしれないという気付きもあり、色々発見がありました。そうとるなら、逆にこうも言えるよね、という著者の言い換えが面白かったです。

  • 本当、物は言いよう、ですな。
    こう危険な発言をよく探してくるな、と
    著者に感心しております。

    最初のほうは誰にでも分かる
    セクハラ発言です。
    明らかに言った人は配慮不足ですね。
    ユーモアどころではないです。

    後のほうは、解説がないと
    ん?と思われてしまうかもしれませんね。

    人によっては
    いちいちうっせーよ、と感じる本です。
    観点は面白いけどね。

  • 蓮舫が初当選した2004年に出版された、斎藤美奈子によるフェミコード論
    恐らく出て数年後くらいに読んだが、2020年の再読
    「これは実用書である」と書いてあるが16年前に比べてだいぶマシな世界になってるので、実用書としてはもう機能せず、歴史を感じる書物になっている。

  • これ全体でセクハラリトマス紙のような本だ。あんなことやこんなこと、言ってないか?大丈夫か?

  • セクハラ、女性差別まではいかないが、もしかするとイエローカードかな?というような発言の数々を著者はフェミコード(FC)というキーワードで何が問題なのかを解き明かしていきます。説得力にとみ、オッとこれでは私も沢山、FCものだったと深く反省させられます。確かに女性の眼から見ると、問題があることが判るのですね。(この表現そのものが、著者によればFSになるのです!人間として偏りのない眼で見るというべきであって!)懐かしい政治家の失言の数々が出てきます。森「産まない女が自由を謳歌して、年とって年金受給の資格なし」、太田「強姦するのはまだ元気。正常に近い。」、福田「そういう格好をしている方も悪い。男は黒ヒョウなんだから」、西村「強姦しても罰せられないなら、オレらみんな強姦魔になっている」、石原「文明がもたらした最も有害物はババァ」、谷垣「昔、放火は女の犯罪だった」。そして小泉「女の涙は最大の武器。泣かれると男は太刀打ちできない」も実はFS。そういえば政治家で泣くのは男が多い。そしてそれが武器になっている例は枚挙にいとまがありません。それを真紀子の涙をこのように評するのは一般論ではなく、個人を指していることで実は最もセクハラに近い発言だ、との主張です。迫ってくる鋭い舌鋒は内容豊富で紹介しきれないほど質量ともに凄かったです。酒井順子「負け犬」の解釈も私たちは皮相的に見ていることを鋭く指摘されました。

  • 政治家、作家、その他著名人の発言を"FC"(=フェミコード)に抵触するか否か、一つひとつをチェック。その発言の背景にある凝り固まった偏見、思想にまで爽快にメスを入れる(重箱の隅をつつくような難解?なものもあるにはあるけど)。
    社会人になると、まずは「黙っておくのが大人」みたいな価値観を植え付けられる。でもだんだん立場が上になっていくにつれて、好きなこと(というか、本音)をなんでも言ってもいい、みたいにいつの間にか思い込んでしまっている人が多いのでは?
    斎藤氏の考えを突き詰めていくと「絶対的な自由、個人主義」になるだろう(違うかな?)。個人的には大賛成。だって男や女といったステレオタイプ的偏見は、その枠から外れた人を苦しめるから。男女の差はあっていい。けれどもそれを押し付けるな、というそれだけの話。「p310 ジェンダーフリー思想は男女の差異をなくせとはいっていないはず。赤と青の二色に分類する前に個人差を尊重しろ、十二色を十二色のまま認めよ、と要求しているだけなのだ。」この部分がフェミニズム思想の核心部分全てを表しているはずだ。
    でもこんなことを言うと、「収拾がつかなくなる」「まとまりがなくなる」「秩序が乱れる」なんていう保守派の方々の反論が想像されて、なんだか気分が暗くなる。彼らは自分がたまたま典型的な「男」や「女」に属することができたことをもっとラッキーだと思った方がよい。

  • こう言われたら、こう言い返す!今度から実践します!

  •  政治家の発言から文学的文書まで、FC(フェミコード)に触れると思われる発言を抜き出し、それのどこが問題なのかを分析した本。興味深い。

     FCに触れる発言というのは、つまりはセクハラ的発言と言うことである。「女性は子を産む道具」だとか、「女の涙にはかなわない」とか「なぜ抵抗しなかったのか」とか「レイプできる体力がないのは問題だ」とか、そういうことである。ちなみに、今書いたのは全部政治家の発言だ。

     フェミコードという言葉を使うところに作者の思いを感じる。しかるべきレストランにはしかるべき服装で行くというドレスコードと同じように、フェミコードも、公の場所で誰もがきちんと守るべきマナーという意味合いが含まれるからだ。

     他人に嫌な思いをさせて普通でいる人は、それほど多くないはずだ。だから、「そういう発言はFCに触れますよ」ということ、つまり「あなたのその発言は、意図にかかわらず人に不快感を与えていますよ」と教えることはとても大事なことだと思う。

     僕自身は、そういう気持ちで本を読んだ。自分自身の言動を振り返り、顔を赤らめたりするところもたくさんあった。恥ずかしい。

     ただ、告発的な意味合いで言えば、そういう穏やかな言い方にとどまらないのが、未だに日本の現状であるのも確かだ。柔らかな外見の隙間から、ふとのぞいてしまった本音、という印象の発言が多い。また、いわば利権を守り聖域に踏み込んでくる輩を不当に傷つけ追い払おうとする小心さを感じることも多い。

     なるほどあと思うのは、FCに触れる発言、いやこの場合はセクハラ発言といってもいいと思うんだけど、そういう発言が一種のサービスから生まれてくることがあるってことだ。「子どもも産まずに遊んでいる女性の老後を国が面倒見るのはおかしい」というニュアンスの発言は、幼稚園関係者の集まりで生まれる。目の前にいる聴衆への「よいしょ」が、別の立場にいる人への蔑視になっていくのである。(ちなみにこれは自民党の首相経験者)

     作者自身がうまく書いてくれているように、個人個人の差を超える大きな属性のようなものを想定し、それを個人個人に当てはめようとする思考法そのものがおかしいのである。これは、ジェンダーのことだけではなく、様々なことに言える問題だと思う。ものすごくいろんなところに横行しているし、僕自身、ある特定の面について、自明のようにそういう考え方をしているところがある。

     作者自身が「実用書」であると述べている本である。実用書として、勉強させてもらいたいと思う。

  • 最後の方は「それも、フェミコード引っかかりますか…」
    という感じのものが多かったけど、それまでは、
    「そうだそうだ! もう斎藤さん、言ってやって言ってやって!」
    というもののオンパレードでした。

    今まで暴言吐いた人はこれを読んで、「なぜ、自分の
    あの発言がよろしくなかったのか」ということを
    学んでいただきたい。

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著者プロフィール

1956年新潟市生まれ。文芸評論家。1994年『妊娠小説』(筑摩書房)でデビュー。2002年『文章読本さん江』(筑摩書房)で小林秀雄賞。他の著書に『紅一点論』『趣味は読書。』『モダンガール論』『本の本』『学校が教えないほんとうの政治の話』『日本の同時代小説』『中古典のすすめ』等多数。

「2020年 『忖度しません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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