- Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582838213
作品紹介・あらすじ
人生を変えるような恋愛だの結婚だのは無理だが、ひとりは嫌だ――
ゲイの夫(仮)と「結婚」と称して同居を始め、
恋愛でも友情でもない二人の生活をつくるまでを綴った能町みね子の最新作。
「ウェブ平凡」連載『結婚の追求と私的追究』の単行本化。
感想・レビュー・書評
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能町さんの知性と行動力が起こす騒動?が楽しくていつも一気に読んでしまう。今回も「偽装結婚」のあれこれを面白おかしく書いてるものと思ったら、どこまでフィクションか曖昧な若い時の恋や雨宮まみさんなどダークな部分も多くて読み応えあった。
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能町みね子が挑む、ゲイ男性との恋愛感情抜き“結婚”の記録『結婚の奴』/久保ミツロウ氏コメントあり « 女子SPA!
https://joshi-spa.jp/982189
結婚の奴 - 平凡社
https://www.heibonsha.co.jp/smp/book/b482387.html -
能町みね子さんがサムソン高橋さんと擬似夫婦(と言っていいのだろうか)になるまでのものがたり。私はどうしても「こんな相手がいて羨ましい」というところに帰結してしまうのだが、能町さんにとってそのように受け取られるのは本意ではなさそう。
とにかくこの本には自分の内面をまじまじと見つめさせられるようなパワーがあり、また読み返すと思う。人間のどうしようもなさと、希望と、いとしさのようなものが詰まっている。 -
年齢的に結婚を考えたことはある。でも、自分にはあまり向かないだろうこともうっすら分かっている。別居婚か週末婚なら、と思ったりする。
時折そう親しくない他人に結婚をせっつかれたりする。言われている意味は分かるものの、望むことの内容は個々違うのになぁとも思う。
でもずっとひとりで生きるのは淋しいことだと想像できる年齢になってしまった。
そんな、世間の常識に自分を合わせることに違和感がある私のような人(とくにアラフォー辺り)ならば、この本はとてもはまると思う。
著者の能町みね子さんは元々男性で、20代のとき性転換をして女性になった作家。
そして現在かたちとして『結婚』している相手が、ひと回りほど歳上のゲイのおじさん。
トランスジェンダー同士の、絶対に恋愛感情は芽生えないふたりの結婚。というか、共同生活。財布も別だしお互い別のパートナーを作るのも自由。読んでいて楽しそうで、羨ましくすらあった。
面倒くさい感情が絡まないから、楽でいいよなぁなんて。通常の結婚生活で生まれる面倒な感情も乗り越えることが成長に繋がるのは事実かもしれないけれど、最初から無いのなら無くたって良いのでは?とも思う。
先進的とも言えるから田舎ではなかなか難しそうな関係だけど、都会ならば成立するのだろう。
時系列も面白く、結婚(共同生活)初日の出来事から始まり、遡ってそこに至るまでのいろいろが綴られている。
途中で、数年前に40歳で亡くなった雨宮まみさん(能町さんと仲が良かったライター)のことが書かれている章は、他の章のような冗談っぽさや軽さがなくて、それが悲しみを表していた。
全体的に、とても自分を曝け出している印象で、コンプレックスを突くというか、その気持ち解るかも…という部分も多くあった。
そう感じる度に「あぁ私もほんとダメ人間だわ」とも思うんだけど。笑
結果的には、自分は自分として、世間を丸無視するのではなく、その上で自分らしくどうにか生きていくしかない、という思いにたどり着いた。
能町みね子さんの本、他のも読んでみたい。と思うきっかけになりました。 -
モテそうには見えないのにプライドだけ高い人がよく使う言葉「飽きた」(「モテない」「恋人ができない」とは言わずに「恋愛に飽きた」「恋愛するのがめんどくさい」と言うやつ)著者が「一人暮らしに飽きた」ことから結婚キャンペーンを始めます。
腹立ちや愚痴を吐き出したいときはツイッターに書いてるそうなので、日頃のいきり立ったツイートや言動と照らし合わせながら読んでみた。相思相愛で恋愛結婚した男女への異常な噛みつき方を見ていると、経済的に劣った相手と結婚と称した同居生活をしているだけでは、結婚への嫉妬や憎しみが消えないことがわかった。
若い時に結婚願望がなくても年齢を重ねて生活に安定を求めることは恐ろしく普通のことで、著者も「常識」に吸い込まれてるんですが、セックスできるパートナーがいない鬱憤を恋愛結婚した夫婦を「常識」という枠にはめることで精神を保っているようです。
テレビでザ・ノンフィクションのジョンさんマキさん夫婦を観ていて、性的マイノリティの人たちにとってこれも普通の選択だと思っていたので、わざわざ「常識」と切り分ける意味が分かりませんでした。
夫のちんぽが入らないへの言及の仕方も、他の男とはセックスできてるんだからいいじゃん、元男性の私のほうがもっと不幸と言わんばかりにくどくどと書いてるんですが、後半では本能的にセックスしたいわけではない、自分はやりたくないけど楽しんでる人がいるのが羨ましいだけと、やけにあっさりしてるのが別にセックスする相手がいなくてできないわけではないとでも言いたげなプライドの高さが垣間見えます。性欲に対して正直にならずに少女漫画のような感情で誤魔化しているからツイッターでのイライラに繋がっているのではないだろうか。
要するにこじらせた人間とは、他人のことを否定して自己正当化し、自己愛が人一倍強く、プライドが高くナルシストな人間なのだろうと思いました。
結婚生活については、中村うさぎさんの結婚とジョンさんマキさん夫婦のいいとこどり二番煎じ。
明らかに恋愛結婚までの過程や結婚生活に対して嫉妬や羨む気持ちが読み取れるのに、私の求めているのは効率だけを追求した結婚と書きながら矛盾を感じなかったのだろうか。
プライドの高い人から恋人ができない理由を「できないんじゃなくて作らないだけ!」「恋愛に飽きたから」「恋人作るの面倒」「別にそういうの好きじゃないしぃ」などと、長々聞かされている気分になりました。 -
著者のコメントや、顔は知っていたが、著作は読んだことがなかった。
髙橋源次郎氏が紹介していたので、読もうと思ったのだが、率直にいうと、あまりピンと来なかった。
著者がトランスジェンダーであり、その苦労や悩みに共感することが難しい(あくまでも想像の域を出ない)こと、世代の違い、考え方の違いなど理由は様々だ。
文章自体はのっけから「水状のウンコを漏らした」から始まり、ユーモアが効いている。
飄々とした雰囲気も相待って、悲壮感や切迫感、マイナスの印象はない。
ゲイの夫と暮らしているのも、そういううちもあるんだな、と思うし、不倫(?)も私は良いとは思わないけれど、双方が納得しているんだったらまぁそうなんだろう。
人様の家のこと、しかも面識も何もない一読者がケチをつけることではあるまい(感想はある)。
が、どうしてもダメだったのはここだ。
127ページからの元カレの話だ。
家が超汚くて、油ぎってて、小太りで、無職で、話が合わない……。
それを我慢して、そういうもんだと納得させて付き合うのは…むりだ、まじで無理だ。
直感でダメだ、と思う人とは、付き合えない。
多分、そこには私が大して好きでもない相手と付き合った経緯があるから余計に嫌悪しているのかもしれない。
とにかくそれがもう…ご本人には大変申し訳ないが、本当に嫌だった(これ以上は言うべきではないだろう)。
何はともあれ、色んな人がいて、合う合わないも星の数ほどある。
おそらく世界は、カオスなのが「普通」なんだろう。 -
すごく自分と向き合っているところが好きです。
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読みやすくて、するすると、そうめんを啜るかのように読み終わってしまった。
読む前は特殊な話なのだろうと思っていたが、読んでみると、深く共感し、揺さぶられ、誰もが考えることのある、普遍的な話をしているように思えた。
話の随所に挟まれる、LINEや掲示板のやりとりが余計にリアルに感じさせた。 -
1ページからとんでもない滑り出しで「これは一体どう着地するんだろう…」とドキドキしながら読み進めましたが、感情の起伏が激しいこと激しいこと。
ジェットコースターに乗ってるような気分で、ハイテンションなところから一気に沈んでしまうような重たい章もあり、ある意味で体力削られる一冊でした。
『人は極力恋愛を楽しむべきである、と刷り込まれている』という一文はかなり共感した。
「ウニが食べられないなんて人生の半分損してる!」理論と同じという解説はすごく腑に落ちました。
「早く恋人つくりなよ!」「どうして結婚しないの?」とか、こんなこと言ってくる奴らに「うるせーバカ!」と言ってやりたくなりますね。
能町さんの擬似結婚体験はかなり特殊だと思いますが、そんな能町さんから見た世間一般の『結婚』というものこそ、俯瞰してみると実はけっこう異質のものだったりする。
「フツー」って何なんだ?と思わされる一冊でした。