- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582856668
作品紹介・あらすじ
「ショック療法」の主唱者ミルトン・フリードマン-彼の経済理論は「人類のために最大の貢献」をしたとされ、一九七六年にノーベル経済学賞という栄誉が与えられた。だがそれは、最高評価に値する真の「発明」だったのだろうか。政治とメディアとの三つ巴で強引に推進された新自由主義的政策と、その帰結たる半世紀後の絶望的なまでに荒廃した世界状況を思うとき、そもそも経済学的権威とは何かと疑問を抱かずにはいられない。経済学の深い闇に鋭い批判的考察のメスを入れ、経済学者の果たすべき社会的責任と使命を問う。
感想・レビュー・書評
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新自由主義批判の本は数あれど、「小さい政府vs大きい政府」という図式にはまった議論がほとんどだ。対して本書の主眼は、政治からの市場の完全なる自律を強調するがゆえに、実際には強権的な政治的介入を必要とするにもかかわらず、あたかも政治などの要素は考慮する必要がなく、純粋な市場原理だけで決定がなされるかのごとく擬制する「新自由主義的統治」を批判の焦点に据えている点にある。そのような統治の端的なあらわれが、ナオミ・クラインの指摘した「ショック・ドクトリン」あるいは本書のいう「経済ジェノサイド」にほかならない。すなわち、「古い政府を新しい種類の政府におきかえる」ような政治的外科手術である。
ホモ・エコノミクスを純粋に経済面だけで切りとられたフマニタスと表現しているのはなるほど、と思ったけど、フマニタス/アントロポスの対比を納得させるだけの厚みはやや欠けるかも。むしろ慎重さよりは勢いを残した筆致に好感をもった。たぶん経済史や思想史の基礎知識がない初心者にはちょっと読めにくいとは思うけれど、新書にしてはかなりボリューム感ある一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
冒頭の「ショックドクトリン」に対する筆者の考察がとても納得のいくものだったので、思わず買ってしまった。
フランクの「従属理論」がフリードマンと繋がっているとは知らず、思想史としての面白さを堪能できた。
フマニタスとアントロオポスという二つの概念を使って、フリードマンの思想を検討しているわけだが、だんだんフマニタスとアントロポスが何なのかがわからなくなってしまった…
部分、部分ではわからないところもいくつかあったが、筆者が主張するのは「誰に」とっての経済学なのか?というところだろう。
その問題意識には、私も多いに共感するところである。 -
2015.01―読了
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新自由主義、フリードマン主義批判。著者のバックグラウンドが欧州大陸系の経済思想にあるようだ。その点も興味深い。
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大学時代、先生が書いた本→教科書として読んだ。
生きた経済学、という点で行動経済学に通じるものがあると思う。大虐殺って戦争などでしか聞かないけど、経済政策による大虐殺もあるのだという話。
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フリードマン批判として期待して読んだが、ちょっと自分の思っていたものとは違った。実体経済を分析してというより、フリードマンを批判した学者(ガルブレイスとか、アンドレ・グンダー・フランクとか)による反論を紹介するのがメイン。タイトルに「経済思想」という言葉を入れて欲しかったかなぁ。チリをはじめとして、フリードマンの直接・間接の影響によって経済運営をした結果、どうなったかということをもっと突き詰めて解説して欲しかった。
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イッキに読めた。
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反新自由主義の観点から編集した資料集としては優秀。
「本」として読みたいのであればナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』を推す。