- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784584126110
作品紹介・あらすじ
20年間に渡るアメリカによるアフガニスタンの支配は終焉を迎えた。タリバンの復権は何を意味するのか? 日本にはどんな影響があるのか? そして大きな歴史の流れのなかでアメリカの終焉を決定づけるきっかけになったと語るのが、イスラーム法学者の世界的第一人者・中田考氏。中田氏は現在のタリバン指導部との親交も深く、世界でも稀に見るタリバンの思想と政治組織に精通した人物。はじめて語られる「タリバン復権の真実」に読者は驚愕と衝撃を受けるにちがいない。今後の国際情勢を見極める上で必須の教養書の一冊。
感想・レビュー・書評
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今年の8月15日、タリバンが復権
その後アメリカ軍がアフガニスタンから撤退しました。
驚きました。
日本で言えば戦前に戻ってしまうような?
いえ、私の個人的なイメージでは
オウム真理教に乗っ取られるような。
そんなおバカな私の疑問に十分応えてくれる本でした。
中田考さんは灘中高から東大出のムスリムで
イスラーム法学者、同志社大学神学部教授。
(佐藤優さんと対談してほしい)
〈人権、自由、民主主義が、西洋・イスラームを問わず、普遍的な価値ならば、まだ理屈として通ったのだが、イスラームでいう人権と自由は、西洋とは全く異なる概念であり、民主主義は、そもそもイスラームに適合しない。
つまり、土台となる原理が異なっていれば、その上に構築される諸概念も制度も全く異なる体形を成す。異なる価値の体系にあるイスラームを力で服従させようとしても、あるいは「啓蒙」しようとしても、全く通じないことを理解しなければならない〉
これは内藤正典さんの解説ですが、
この本を読むとあの故中村哲さんも
タリバンに対して肯定的とわかります。
また、巻頭にはカラー写真
日本を訪れたタリバン!
全員一致望んで行った広島平和記念資料館。
タリバン、おもしろそうです。
気になります! -
読んでいて頭痛がしてくる本。
タリバン政権を西欧側ではなく向こう側から評した本が読みたくて購入。タリバンの声明の邦訳が一次資料として載っており、民主主義とは宗教より個人の自由を重視する西欧文明の価値観でありイスラームの教えを基盤とするアフガニスタンとは相容れない、と思想面での根本的な断絶を示しており、こりゃ分かり合えんわ、と納得した。女性は身体的に男性と異なるのだから社会的な役割を区別するべきだ、という主張も、これに人権概念持ち込んだらけんかになるわ、とも。解説で内藤昌典同志社大教授がこの20年アフガニスタンはアメリカを侵略者としか見ていなかった、としているが、それもなんとなく腹落ちする。
こうして読んでいると宗教を基に国家運営するなんて破綻するでしょ、と思ってしまうが、日本からすればアメリカだって無宗教者が増えているとは言え未だにそれなりの割合の人が進化論を否定したり大統領就任時には聖書に手を当てているわけで、宗教を完全に切り離して社会を運営していくのは難しいのだな、と改めて思わざるを得ない。
最終章では21年のアメリカの撤退についてアメリカの敗北、中国の時代か、という論調を肯定的に載せているが、個人的にはあれは敗北ではなくより優先順位の高い懸案(中国、コロナ)に舵を切るためであり、ガニ政権に責任を押し付けられるという判断の上で行ったものなので、これを切り取ってアメリカの凋落とかグローバルパワーの衰退とかだと語るのは片手落ちだと思う。勿論綺麗に終わらせるに越したことはないが、その為に派兵期間を延ばしていれば今頃批判のタネになっていただろう。
それ以外は著者の主観で断片的な事象から結論を引っ張ってきており、参考にならなかった。アルカイダとの関係や内政など最も気になるところを語らずにタリバンは敬虔な信徒である、それに比べてアメリカはひどい、傀儡政権の腐敗はひどいと攻撃し、著者の実績自慢と他の研究者への個人攻撃まで飛び出す始末。
というか著者のWikipediaを読んであ、これ触れちゃダメな人だと理解した。ライトノベル作家って、、いやちょっと面白そうだけども。
冒頭の思想面の相違は面白かったのと、やっぱり本を選ぶときは著者経歴と出版社をちゃんと見ようねという改めての気づきを与えてくれたので星1.5。
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俺の説では欲望の次元を上げる!のが人類が生き延びる途なんじゃないかと思ってんだよな…おのれの欲望を超えた正義や公平。それを欲望できるかどうか?それが実現できればもっと生きやすくなるんじゃないかと…
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ざっくり言うと、そもそも西洋の思想とイスラムの思想は全く違うもので、タリバンを悪と決めつけるのは良くないということが書かれている。
たしかにアメリカが正義という一方的な考え方は良くないが、タリバンもテロなどを通して多くの民間人を殺してきたのも事実。
作者はタリバン寄りな意見ではあるが、私はあまり受け入れられなかった。
ちなみに、イスラムやタリバンの思想を解説している部分が多いので、現地情報や取材記事をもっと読みたい人にはあまりオススメできない。 -
ムスリムである著者がイスラム教サイドから発するタリバンの実情。非常に興味深く読んだし、なるほどと思う部分もあった。特に難民支援に対しての欧米諸国の矛盾(もちろん日本も)には納得するものがあったが、女性の権利問題に関してはひたすら疑問符が浮かぶばかり。
アフガニスタンの中の自治区的なことではいけないのかな?と素朴な疑問。同じムスリムでもタリバンに賛同できない人は多いように感じるが、実際どうなんだろう。
本書にたびたび出てくる“水と油”のように決して混ざり合うことはできない原理であることを踏まえてお互いに尊重しあう姿勢は大切ですね、武力ではなく。 -
イスラム国とアメリカが去り、タリバンが復権したアフガニスタンと日本はこれからいかに関わっていくべきなのか。イスラム法学者でムスリムでもある中田孝氏が歴史やイスラムの考え方に触れながら考察する。
私たちは多様性を理解し、受容しながら未来を生きなくてはならないと思う。 -
東2法経図・6F開架:312.27A/N43t//K
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いろいろと考えさせられる一冊。自分の考えを試されるという意味では役に立つ。再読はしない。