- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784584136157
作品紹介・あらすじ
日本は70年前も「資本主義」の"強国"だった。「金本位制」復帰による「世界恐慌」で瀕死の欧米、「共産革命」のソ連&中国…。グローバル経済の荒波に立ち向かった日本の苦闘を"経済的視点"で描く。
感想・レビュー・書評
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正直この論調はあまり好きではないのですが、戦争というものがなぜ行われるのか、デフレだとか金本位政策がどのような歴史を作ってきたかというのが分かり易く語られています。
上念さんのこの辟易する論調を我慢できるなら内容は良いので、お薦めの1冊です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今までに何冊か、日本はなぜ大東亜戦争に突入することになったのかを解説した本を読んだことがありますが、いずれも政治の観点から考察したものでした。確かにそれは事実だと思いますが、私の理解力に問題があるとは思いますが、ピンと来なかったのが印象です。
この本は、それを経済の観点から解説しています。第一次、第二次世界大戦ともに、ドイツや日本が米英の経済覇権に挑戦しようとした戦争であるという考え方です。この本では世界大戦の定義を、その勝者が次の世界の覇権を握ることになる戦争、としています。
それによると、現在はすでに第三次世界大戦が始まっていると見ることができるようです。以前に予言本で第三次世界大戦が21世紀直前頃から起きると書かれていたのを思い出しました。
特に、ドイツや日本が戦争に向かった原因として、当時の生活が不安定で、精神的に追い詰められていたから(p4)という内容は印象的でした。現代にも通用することのように思われました。
経済を通して現代史を見ると、私にはとても興味深く読むことができました。この本の著者の上念氏の本はこれで数冊になりますが、毎回読むたびに楽しませてくれます。今後も期待したいですね。
以下は気になったポイントです。
・第一次世界大戦の終結から昭和恐慌にいたる間に経済が低迷した本当の原因は、デフレである。人々は、株価大暴落から始まる世界恐慌の原因がインフレと思っているが、世界恐慌も昭和恐慌もすべてデフレを原因とする、長期的な経済の低迷である(p18)
・人口が減少、外国から安い製品が入ってきたからデフレになるのではない、お金不足で発生する貨幣現象である(p19)
・植民地獲得の目的は、1)増加する本国人のはけ口、2)原料供給地、3)過剰生産品を売りさばく市場(p24)
・オランダ、スペイン、ポルトガルは植民地に投資せずに搾取してきたので、結果的に植民地経営に失敗して植民地は独立したケースもあるが、本国からの投資と技術移転でその地域の文化・文明を高めたケースもある(p27)
・戦争がプラスになるケース、1)その国が不況である、2)戦場は本国から遠い、3)失業率が高く兵員の動員可能、4)経済がデフレ気味(p32)
・欧米のほうが技術力が上だったにも拘わらず、日本の輸出産業が延びたのは技術優位のおかげ(p53)
・イギリスと交易する国にとっては、イギリスの制度である金本位制度を模倣すれば貿易決済業務を効率化し、為替リスクが低減できた(p59)
・景気が良くて仕事が順調ならば見向きもされなかったであろう共産主義は、デフレのおかげでイギリスのみならず欧州の労働者の期待をひきつけた(p68)
・戦争の反動で景気が悪くなったと言われるが、本当は、全世界的な金本位制の採用が発端で、金の産出量の低下がそのシステムの余裕を失わせた。(p96)
・イギリスがアメリカへの金流出を嫌って、利上げしたために、国内で金をあまり使わなくする=財政緊縮政策となった(p97)
・日露戦争の戦費調達は、国債発行によるもので外貨建て、実質的には金で返済するのと同じ意味(p98)
・ロシアは、オーストリアのセルビアへの宣戦布告を受けて動員を開始する。すると、フランスはドイツに攻撃されることになる。ドイツはフランスとロシアの挟み撃ちになるため(p109)
・ドイツは東部宣戦では連戦連勝して、ブレスト=リトフスク条約により、ドイツ・オーストリア・トルコ連合軍の勝利確定、それにより、フィンランド・バルト3国・ポーランド・ウクライナは独立した(p111)
・日露戦争の対外債務10億円は、アメリカからの物資調達の特需により28億円もの外貨を獲得して財政状態は好転した(p115)
・貿易収支1億円の赤字=資本収支が1億円の黒字ということ、これは国内需要がなく供給力が余っているので、黒字は資金ニーズのある海外に流れていることを意味する(p131)
・ドイツでゼネストが行われていたさなか、中央銀行は紙幣を印刷して、ゼネストに突入した労働者に日当を配り始めた。これがハイパーインフレのもと(p138)
・ハイパーインフレの起きる最低条件、1)生産設備の破壊、2)労働力不足、3)高額紙幣の大量発行(p139)
・関東大震災の被害は、当時GDPの4割、国家予算の5倍、東日本大震災の場合は、国家予算の17%、GDPの3.6%(p142)
・第一次世界大戦前の為替レートは、1ドル=約2円、金本位制を再離脱すると、1ドル2円から5円まで大幅下落した(p149、188)
・イギリスが金本位制を停止すると、自国通貨をポンドにリンクする国(オーストラリア、ニュウージーランド、南ア、インド)が現れた。ポンドを外貨準備としてロンドンの銀行に預け、貿易決済を行った。ポンド切り下げの恩恵を蒙れた(p196)
・226事件の後、二度とクーデター騒ぎを起こさないように、軍部大臣現役武官制が復活し、結果的に内閣を潰す力を得た(p210)
・もともと海軍が持っていた作戦プランは、フィリピンでアメリカ軍を殲滅して、大量の捕虜を奪還するためにやってくるアメリカ海軍と艦隊決戦をするというもの(p214)
・ドイツは1914年、日本は1945年、ソ連は1991年にアメリカに敗北した、今は支那が台頭しつつある(p217)
・イギリスがアメリカに屈服しなければならないと悟ったのは、1922年2月のワシントン会議における「四カ国条約」、このときにに日英同盟も終結(p218)
・大東亜戦争の被害総額は、約1340億円、当時の国富(国民の正味資産)の41.5%(p222)
・軍人:360、軍需関係従事者:160、支那大陸からの引揚者:650万人の合計1000万人以上の失業者が発生した。戦死者185、負傷行方不明者67、離散者875万人であった(p222)
・1946.2.16に預金封鎖発表、翌日に実施、旧円紙幣は3.2に廃止(p226)
・1947年発表の価格統制により、工業総平均賃金は戦前平均(1934-36)の、27.8倍の1800円、基礎物資価格は60倍程度となった(p230)
・1949年にGHQは1ドル=360円とし、1950.4.25から実施、当初日本側が想定していた300円よりもかなり円安であった(p236)
・1950年7.6には、225種の単純平均株価は62.3円となり最安値となったが、1952年には180円となった(p242)
2015年4月3日作成 -
大東亜戦争が起きた経緯を経済的な観点から読み解く一冊。
そもそもの悪は、金本位制にあったと著者は考える。
金本位制では、各国の通貨発行量は、国の金保有量に縛られるため、国が成長する過程においては、どうしても通貨が足りなくなる。
通貨が足りなくなると、デフレになり不景気になり、国民は困窮する。
国が通貨発行量を調整できるようにするためにも、各国は金本位制から脱却するべきだったのに、金本位制に縛られてしまったがために、経済は混乱し国民は困窮した。
平和な時は見向きもされない極端な思想も、生活が逼迫すると、危険思想に国民は飛びついてしまう。
こういった経緯で日本は、大東亜戦争に突っ込んでしまった。
そして、ドイツでは第一次世界大戦の賠償に苦しめられた国民が困窮し、ヒトラー政権が誕生した。
歴史は繰り返す。再び国民が、極端な危険思想に染まってしまわないように、経済を安定させることが国の責務であると著者は主張する。
戦争は政治の失敗であると再認識した一冊。 -
(2015年発行)
・日本はなぜ戦争をしたのか→悪手を打つように敷かれたレールの上を強制的に走らされた。
・世界恐慌も昭和恐慌の真因はデフレ=お金不足で発生する貨幣現象。
・島国であるイギリスが経済大国になった理由。金本位制は効率的に貿易決済を行ううえですぐれた制度。19世紀の世界貿易はイギリスが確立した国際金本位制度で飛躍的に進歩。
・金本位性を採用する限り、その国の金の保有量を上限としてそれ以上のお金を供給することができない。
・長期デフレを脱却して19世紀後半にアール・ヌーヴォーの運動がおこった。その作風は産業革命的な工業製品のアンチテーゼ。
・1906年サンフランシスコの大地震→保険会社の保険金支払いに巨額の資金必要→金本位性だったので、ロンドンから金を輸入→イギリスによる金の過剰防衛→1907年恐慌
・日本だと日露戦争後に戦後恐慌。中国や朝鮮に投資を行うため金の国内からの流出がおこる。国内で使う金を減らすか外国から調達するしかない。しかしイギリスが利上げしていたためたくさんの金利を支払わないと調達できなくなっていた。
・1931年、日本は金本位制を離脱。
・イギリスが金本位制を停止すると、自国通貨をポンドにリンクする国があらわれた。スターリン・ブロック。悪名高いブロック経済。
・戦後、アメリカは日本を弱体化して2度と戦争ができない国にする予定だったが、冷戦構造の激化により日本経済を復興させなければいけなくなる。 -
たかだか250ページの本に一ヶ月半も掛かってしまった…今年はほんと読書に回す時間が取れない…と言い訳
やっぱり歴史は繋がっているので大東亜戦争へたどり着くまでに一次大戦辺りからの世界情勢を踏まえておかないと訳分からんになりますわな〜金本位制への復帰後の世界経済の流れやブロック経済の影響など日本国内における紆余曲折は非常に面白かったです。こういう歴史を読むとやっぱ歴史って繰り返すんだ…って思っちゃいます。何回も同じミスして覚えるんじゃなくて一回で覚えたいもんですよね(笑)
経済対策など難しい話がいっぱい出てくるけど、分かりやすいと思います。「そういうことだったのか」って思うトコがあって面白い一冊でした。 -
このシリーズのいつものごとく、タイトルに出てくる大東亜戦争への流れは後半の終わりの方まで出てきません。
第一次世界大戦までの世界の情勢と経済の変動から大戦後の各国の動き、『金本位制』の始まりとそこからの脱却が主な軸です。
この本が発売されたのは2015年2月ですが、2019年5月現在も、この本の終盤に書かれている状況はあまり変化がありません。 未だに増税やむなし論を強弁している人たちにはどんな思惑があるのでしょうか。
民主党政権下の経済政策の論調と大東亜戦争突入前に経済失速させた連中の言ってることが同じなので政策失敗は当然だが、なぜ今の自公政権も同じ轍を踏もうとしているのか理解に苦しみます。
やはり内部に暗躍している何者かが居るのかなぁ。 -
「金本位制」に着目しながら、1900年代前半の世界史を分析しています。
中学、高校で学ぶ世界史、日本史は、歴史の流れを思想・宗教などに基づいて理解しようとしますが、本書は経済の観点から説明を試みており、とてもおもしろかったです。
あとがきに「衣食足りて礼節を知る」という言葉がありますが、そういう人間観をベースに、経済に着目して歴史を見ています。 -
どうして学校教育では金輸出だとか解禁だとか言葉を教えるだけでその意味を教えないのだろうか。片岡直温の失言はなにを意味していたのか、そのときの台湾銀行、鈴木商店との関係は(これはこの本に特段と書かれてないけどさ)。そういうところを明らかにしないで、ただ言葉だけ覚えさせる日本の歴史教育。大丈夫かー!と思った。
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金本位制が世界不況をもたらす
経済不和が、極端な考え方に民衆を誘導