人はなぜ「自由」から逃走するのか: エーリヒ・フロムとともに考える

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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584139714

作品紹介・あらすじ

◎なぜ安倍晋三、小池百合子は圧倒的に選挙に強いのか?
◎なぜ人は強いリーダーを求めてしまうのか?
◎自由を捨ててまで「英雄待望論」に熱狂してしまうのはなぜか?
◎世界同時多発的に起こっているこの現象は時代をどこへ連れていこうとしているのか?
トランプ、プーチン、ボリス・ジョンソン、習近平、安倍政権……独裁的で強引な政権手法が席巻しはじめた、時代のゆくえと個人の生き方を指南する。
いまこそ知るべき最重要古典、エーリッヒ・フロムの『自由からの逃走』を100分de名著でもお馴染みの哲学者仲正昌樹が世界一分かりやすく解説し、時代をどう見通し、生き方をどう選ぶべきか、を知る手がかりにする。
フロム生誕120年、没後40年の記念碑的な年ゆえに、大統領選はじめ世界の激動の今年下半期にフロムの書はリバイバルや解説書などで注目されます!

感想・レビュー・書評

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  • フロムの『自由からの逃走』に現代社会の文脈を含ませた解説書。フロムによれば自由には2つの側面があると述べており、それは「〜からの自由」という制約からの解放を意味した「消極的自由」と、「〜への自由」という自らの目標などを追求する意味の『積極的自由』があるという。

    一見、消極的自由よりも積極的自由の方が本質的な感じがするが、実際後者は時に厄介な存在になりうる。自由であるが故に、不安や孤独を感じることは意外にあるのかもしれない。特に大学生の自分にとっては、ある程度のことは「自由」に決めれる年齢になってきた。しかしそれが原因で何をすべきか分からず迷走することになったり、自由であることに責任や重圧を感じることもある。

    重荷に感じてしまう自由とは何か漠然としたもので、それ故に杞憂になってしまうのかなと思った。物事を可視化・明確化していくことは大事だなあと再認識。原作も読む。

    • ともひでさん
      >重荷に感じてしまう自由
      自由そのものが常に責任という重さを孕んだものだと俺は思う。
      (つまり自由は全て重い。)

      ではなぜその責任...
      >重荷に感じてしまう自由
      自由そのものが常に責任という重さを孕んだものだと俺は思う。
      (つまり自由は全て重い。)

      ではなぜその責任は「重い」のか。
      ”責任=立場上当然負わなければならない任務や義務”、であり自由という立場を取るに当たって生じる任務や義務がある。

      就活という文脈で話すと、自由に自分の仕事を選んだ結果、起きる全ての事象は自分が原因というわけで、この「全てが決まってしまう」ことに対して重圧を感じるのではなかろうか?

      ただ冷静に考えてみれば、これまでの人生で行ってきたあらゆる選択で同様の重圧を感じるべきであったし、この重圧と向き合う覚悟を持つことによってのみ人は輝く。
      2021/07/19
    • 中尾さん
      (ごめんコメント今気づいた、、w)

      >これまでの人生で行ってきたあらゆる選択で同様の重圧を感じるべきであったし、この重圧と向き合う覚悟...
      (ごめんコメント今気づいた、、w)

      >これまでの人生で行ってきたあらゆる選択で同様の重圧を感じるべきであったし、この重圧と向き合う覚悟を持つことによってのみ人は輝く。

      わかりみが深い、、今後の選択においては「どれくらい覚悟を持てるか?」が1つの判断基準になりそうだね。
      2021/08/01
  • エーリヒ・フロム『自由からの逃走』の議論の流れに則りながら、全体主義を可能にした歴史的・社会的条件を確認している内容。

    関連する思想家・学者の論(ルターやフロイトなど)も多く引用しており、世界史的な知識の補足も多くあり、前提知識が少なくても読みやすい。

    主に西洋近現代の話題だが、所々で現代日本に引き寄せた解説も入れてくれていて、その点も読みやすい。

    『自由からの逃走』自体については、引用はまあまあ多いが要所要所だけ。
    『自由からの逃走』を深掘りする系統の本ではなく、それを取り巻く諸議論を概観できる書籍。

    所々で「詳しくはこっちも読んでね!」的に著者の別著書を参照するようにお薦めされるのが、上手だしなんか可愛い。

    (メモ)
    ["自己否定"して、より大きなものの一部になったつもりになることで、不安を解消しようとする](p67)は、「時間や労力を既に投資していると、投資し続けることが損失だと分かっていても『元を取りたくて』後に引けなくなる」サンクコスト効果(コンコルド効果)で強まる面もあるのかなと思った。

    同章のカルヴァン派の話題[努力できるということ自体が、自分が救われた人間に属していることの一つの前兆](p77)でも上記と同じことを感じた。
    [不安を一時期に忘れるために、勉強や仕事に必死に打ち込む](p78)は自分もやりがちなので、心に留めておこうとも思った。

    [不心得者を糾弾してやりたいという強い衝動ゆえに、"道徳にうるさい潔癖症的な人間"を演じる、あるいは、実際そういう人間になり切る人がいる](p82)もとても身につまされる。
    ネット上の「無断転載」「パクリ」で叩いたり炎上させたりする人の心理もこれに近い場合がありそうだと思ったが、[かなり安易な形で拡張したもの](同)と説明があった。

  • 「自由からの逃走」:自由に慣れた近代人が、強い権威に惹かれ、自発的に従属するようになるメカニズムを直接的に論じた著作である。
    オリジナルは、プロテスタンティズムの影響が考えられている。新型コロナ下での強い矯正処置を求める声と異論が言えなくなる風潮は、全体主義の前兆と思われる。
    二つの自由、自由の二面性、サディズムとマゾヒズム、「死」の抑圧、それでも生きること、と多面的な解説が続く。
    あとがきで、金沢大文科系学生をデスるのはおまけか。

  • 会社の図書館にあったやつ。難しくてよくわかんなかった?

  • 東2法経図・6F開架:361.4A/N35h//K

  • 自由の背景にある孤独と不安について深く理解できた。

    自由は非の打ち所がない概念のような印象を受けるが、その背景には孤独と不安が隠れている

    消極的な自由は人に孤独と不安をもたらし、それは人を権威的なものに従属させてしまう

    それはサディズムでありマゾヒズムでもある
    そしてそれらが生み出す権威主義的な思想はファシズムにつながっていく

    では、積極的な自由とは何か?
    それは個人の能力を伸ばし、成長と幸福を感じることができる自発性のあるものである

    故に飢餓の恐怖などはBIなどで排除した上で労働を促さなければならない

  • あとがきがえげつない…

  • 各作品は、ミッキーの“勝利”で「ハッピーエンド」に終わるように見えるが、フロムは、その“勝利”の危うさに注意を向けている。彼に勝利をもたらすのは、偶然と、「逃げ去る能力」と言う極めて消極的なものである、と言う。

  • p.40「〜からの自由」という形を取る消極的自由と、「〜への自由」という形を取る積極的自由

    p.83自分がそれに関して他人を糾弾している問題が、自分自身にも当てはまる可能性があり、無意識的にすごく気にしている点であったことに、何かのきっかけでふと気付くという現象に即して考えれば、分かりやすくなるだろう。〜自分自身のことはどこかで分かっていても、認めたくないので、その″気付き″を無意識の中に追いやろうとするが、その反動で、他人と同じような欠陥が目につき、腹が立つ。


    p.112 私たちの「主」体性は、他者に依存している。「主」的に振る舞おうとすればするほど、他者からそう認められる必要性が生じる。

    p.143 自分にとっての特別な他者がどんな問題も解決してくれると錯覚することから問題が生じてくる。恋人は自分だけを絶対的に愛してくれる運命の人だと思い込むと、″裏切られ″、失望する。幻想だったと分かる。それまで「魔術的助け手」だと思っていた相手に反感を抱き、その

    p.191現代社会に生きる私たちは、自分が何を欲しているかは自分自身が一番よく知っていると教えられている。しかし、実際には、「欲すると予想されるもの」を「欲している」にすぎない。


    p.199自発性を発揮することができないまま生きてきて、自信を失った人々、権威を求めている人々は、個人の自己を超えたものを示してくれないと、高貴な思想だと感じられなくなっているのである。

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著者プロフィール

哲学者、金沢大学法学類教授。
1963年、広島県呉市に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科地域文化専攻研究博士課程修了(学術博士)。専門は、法哲学、政治思想史、ドイツ文学。難解な哲学害を分かりやすく読み解くことに定評がある。
著書に、『危機の詩学─へルダリン、存在と言語』(作品社)、『歴史と正義』(御 茶の水書房)、『今こそア ーレントを読み直す』(講談社現代新書)、『集中講義! 日本の現代思想』(N‌H‌K出版)、『ヘーゲルを越えるヘーゲル』(講談社現代新書)など多数。
訳書に、ハンナ・アーレント『完訳 カント政治哲学講義録』(明月堂書店)など多数。

「2021年 『哲学JAM[白版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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