三ねんねたろう (むかしむかし絵本 8)

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (1ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591003817

感想・レビュー・書評

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  • 読み聞かせしながら泣いた。


    寝太郎の村には川がない。田畑の水は雨だけが頼りだ。毎年のように水不足に陥っても、あわれな村人たちは「やれ、こまった」と嘆くか、「かみさま、かみさま」と雨ごいするよりほかに打つ手もないのだった。
    寝太郎の家は村内でもとくに貧しく、ほんの少しとれた米もお役人や地主に取り立てられる。病気のおっ母さんは「お米のごはんがたべたいのう」と言いながらぽっくり死んだ。
    おっ母さんが死んだ年の夏もまた日照りで、それまで愚痴ひとつこぼしたことのなかった若者は言った。
    「ああ、おら はたらいても はたらいても、だめなんやなあ。」


    努力も誠実さも何一つ報われない現実と母の死を受け止めるだけの気力体力を養わなければならなかった。外の声やこれまでの常識を遮断して問題を見つめなければならなかった。生まれ育った村の未来を左右する大仕事のため再び腰を上げなければならなかった……
    これだけのことをするために、寝太郎には三年三月という長い眠りの時間が必要だったのだ。

    村人たちに馬鹿にされても眠り続け、村の子供たちに囃されても眠り続け、わずかな米さえ取り立てにやってくる役人に大きな屁なんかお見舞いしながらも眠り続ける間に、ひたすら己の内面を耕し、村を救えるほどの力を蓄えた人物へと成熟していった寝太郎に、私は胸を打たれた。

    そこまで長くないお話の中で、村の子供たちの描写がやけに多いことにも興味を引かれた。
    寝太郎のことを気にかけて、ちょっかいを出し続けるのは子供たち。眠りから覚めた寝太郎の大仕事に偏見なく手を貸すのもまた子供たちだ。寝太郎が内面で滾らせていた強い生命力の匂いを、子供だけは嗅ぎとっていたのかな。

    貧しい農民達の苦しみを描きながらも、民話としてのユーモアや力強さも十分に味わえる渡辺三郎の絵も素晴らしい。本当に良い昔話絵本だった。

  • 子どもの頃、学校が休みの日には寝坊ばかりしていて、「さんねんねたろうだ」なんて祖母か母に言われた記憶がある。
    そのわりに、私はおはなしの内容を知らなかったと思う。
    図書館で見かけたので、気になって借りた。

    若者は病気の母親のために懸命に働けど、母親は死んでしまい、生活は苦しいまま。母親が死んでしまった夏から若者は眠りつづけ、三年三月たって目を覚ますと……。

    「ああ、おら はたらいても はたらいても、だめなんやなあ。」
    このセリフがささる。
    普通の小説だったら、無力感と絶望に泣いてしまうかも。
    文を担当した大川さんの「三ねんねたろうのこと」によれば、「民話は現実の生活にねざしながら、それをのりこえようとするところでうみだされている」(吉沢和夫氏『民話の発見』)とのこと。
    人の心をくんでいてユーモアもあるなんて、民話はすごい。
    人は強さで民話をうみ、民話は人をより強くするのかもしれない。
    ポプラ社のこの「むかしむかし絵本シリーズ」の違うおはなしも借りてみよう。

  • 貧しい土地で働く青年が、母の死を堺に眠り続ける。なまけものになったのかと思いきや、ねむりながら想いをめぐらして考えていたのかな。起き上がると、村のために川から水をひきはじめる。その姿に村人も感化され、みんなが無理だとおもっていたことをなしとげるのがすばらしい。働き続けてもうまくいかないときがある。思いきって休んでしまうと、ねてるあいだに体も充電されて、新しい考えや活力がわいてくるのかもしれない。

  • 「うちのむらには、ねたろがござる」とこどもらがうたった。しかし、そのねたろうが村のためにはたらくというお話。

  • 2023.3.2 1-2

  • パパと読書

  • いっぱいねて、どんどんおおきくなるところが、一ばんすきです。

  • 「ぐうったらぐう」とか、おれのおとうさんみたいでおもしろかった。ちゃんとみぞができてよかった。

  • 思ったより字が多く長かったが、面白かったと息子には言われた。

  • 元々、働き者なんだもの、やる時はやるよ。

  • 働き者の若者が、母親が無くなった後、
    「おら はたらいても はたらいても、だめなんやなぁ」と言って、
    寝てしまいます。

    子ども達がからかっても、お役人が取り立てに来ても、全然起きない。

    日照りが続き、村が苦しんでいたある日、
    むっくり起き上ったねたろうは、
    遠くの川から水を引けばいいと言い、ひとり作業に没頭します。

    はじめは相手にしなかった村人たちも、いつしか一緒に作業し、
    灌漑が完成し、作物が豊かに実る村になったお話。

    子ども達が、ねたろうをからかう歌も、テンポがあって面白い。

    私独自の解釈ですが、
    きっと、母親が生きている間は、
    「母を楽にしてあげたい」という若者の気持ち(目標)があったんだと思います。

    それが、母親が亡くなってしまうことで、急に目標を見失ってしまい、
    「だめなんやなぁ」という虚脱感に襲われたのでしょう。
    この後の、急に灌漑を始めるきっかけはわかりませんが、
    きっと、寝てばかりに見えた若者の深層心理に、
    行動につながる確信があったのでしょう。

    目標を持った人間は、とても強い。
    目標と確信があれば、周りが何と言おうと、やり遂げる力を削ぐことはできないんですね。

  • 2014/9/9 朝4年生 ASA FUJ
    2015/3/17 朝5年生 

  • できればずっと寝ていたい人、朝ごはんより断然二度寝を選ぶ人、必読です。そんな人を心配そうに見つめるあなたも、是非。(はま)

  • 4歳。日本の昔話。民話をあまり好まないのですが、ユーモラスな寝太郎の行動が楽しかった様子。

  • 【経緯】
    どんなんだっけと思って

    【書き出し】
    とんとむかしであったそうな。
    あるところに、年がら年中寝てばかりおる、お百姓の若者がおった。

    【感想】
    「寝ることでしか逃れられない農民の苦しみ」が主題だったのね!
    呑気な絵とタイトルからは想像がつかなかったけど、ハッとさせられました。
    これ、サラリーマンに置き換えて現代風に読むこともできるわー。

    【引用】
    「ああ、おら 働いても働いてもだめなんやなあ」といった。
    それからふらんふらんとして帰ってきよると、まるで魂が抜けたみたいになって寝た。

    【不可解】
    川から水ひこうって思い立ったのが急すぎて。神のお告げ的なものだったのん?

  • 3年寝るというのが、お話にとってどういう意味づけなのか、やっぱりよくわかんないのが面白い。

  • 超共感する(というかうらやましい)3年寝太郎

    あらためて読んだら「あれ・・?こんな話なの?」ってかんじでした。

    働いても働いても暮らし向き楽にならず、
    おなかいっぱい米が食べたかったといってお母さんが死んじゃって
    3年寝た寝太郎は
    隣の村の川から水をひっぱってくるため溝を掘りだして
    とうとう完成させてしまった!ねたろうえらい!

    寝てたこととはあんまり関係ないのかな

  • S太朗4歳9カ月出会った本。幼稚園の年中組みになって、毎月1冊絵本を持って帰るようになりました。その月、先生が読んでくれたものを月末に持ち帰り、またお母さんと読んでね、ということらしい。昔話って、本当に読んでいない…そういう意味でも貴重なのかもしれない。

    ねたろうは天狗になりすまして、隣のお金持ちをだまし、その娘とまんまと結婚する。ずっと寝てすごしてたぐうたらな男が、そこから一生懸命働くようになった…不思議だ~~!

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