- Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591104941
作品紹介・あらすじ
わたしたちはずっといっしょ。このまま永遠に。娘の13歳の誕生日には新しいドレスを作ってあげよう。あの子の美しさを際立たせるすばらしいドレスを。小さな望みなら好きにかなえてやろう。わたしは幸せでたまらなかった。-どうしても子どもをもちたかった女は、魂とひきかえに自分の娘を手に入れた。だが、美しく成長した娘はひとりの若者と出会い、それを機に3人の運命は大きく変わり始める-。
感想・レビュー・書評
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「ラプンツェル」を下敷きにした――というか、そのままの、ドナ・ジョー・ナポリさんの小説。
娘と母親の時間というのは、ほんとに特別なものだと思う。至福の時というか自然に許された共生の時間というか。でもその時間は当然のように過ぎ去り、娘は自立していくもの。でもそれが我慢出来ない母親がいたら。そもそも、娘を得るために払った犠牲があまりにも大きかったら。だから時間を止めようと思ってしまったら。
娘であろうと息子であろうと配偶者であろうと、他人にあまりに強く執着するのは不幸の始まり、というごく初歩的なことを知らないと大変な目に遭う、ということかな。
最近、子供というものは3歳までに一生分の親孝行をしてしまうもの、という言葉を実感として受け止めている私は淡々とそう思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
きのう読了。はじめての作家さん。
グリム童話の「ラプンツェル」を下敷きにした作品。ラプンツェル視点やコンラッド視点のターンもあるけど、母の部分だけ一人称(わたし)だから、魔女視点で翻案し直したものかしら。ひたひたと迫る母子癒着の狂気から辛くも娘が逃れる話、だけれど、せっかく現代に翻案するなら、当然のように異性愛オチなのはやっぱり気になる。人里離れて(男にとられるのを警戒する母親のもとで)育てられたラプンツェルが、自分がいずれ結婚して母になるはずという認識をどこで得たのか少し疑問。
もうちょっともとの話から離れた展開にしてもよかったような。 -
最初から最後までおとぎ話でした
下書きありにしろ、なかったにしろ面白く読めました -
グリム童話の〝ラプンツェル〟を下敷きにして、書かれたファンタジーです。
16世紀半ば、スイスの人里離れたアルムで暮らす母と少女。母娘が町に出向くのは、年に2度だけ。愛情に満ち、平和で牧歌的なふたりの生活が揺らぎはじめたのは、町の鍛冶屋で少女と伯爵家の息子が、偶然出逢ったことが切っ掛けでした。しだいに明るみになっていく、母親の暗い秘密・・・・・。
善と悪は、紙一重で隣り合ってあるものです。善からから悪に踏み込むのは簡単なことですが、いったん闇に足を踏み入れた者が良心を取戻し、許しを得るのは、容易なことではありません。愛するあまり、心が歪んでしまうということもありがちです。
これは、子供を授かることのなかった女性の哀しい物語です。あきらめなければ望みは叶うといいますが、人生はそうそううまくいくとは限りません。あきらめるのではなく、不運を受け入れることも、時には必要なことかもしれませんネッ。 -
ほぼそのまま、いわゆるラプンツェルの話なのですが、おとぎ話というよりも、中世ファンタジー・ラブロマンス。ちょっと大人向け、でも、ドキドキしながら少女にこそ読んでほしい一冊です。心理描写が繊細で、また情景描写がとても美しい。ラストシーンも好き。
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娘の13歳の誕生日のために町へと買い物にでてきた母娘。贈り物を内緒にするため、娘のツエルを鍛冶場へ残し、買い物をする母。
ツエルはそこで馬と仲良くなり、その馬の持ち主である男と出会う。その男、貴族のコンラッドは、娘のために鴨の卵を手に入れようと奔走する。
娘ツエルを愛するあまり、塔にとじこめる母。
「ラプンツエル、ラプンツエル、おまえの髪をたらしておくれ」
そう、あの童話「ラプンツエル」を元にした物語。
子供が産めないから、悪魔に魂を売ってでも手に入れた娘への痛いほどの母の愛の物語になっています。 -
童話ラプンツェルを題材にした物語。
童話では描かれる事のない魔女側の物語に、とても切ない。
魔女は誰よりも人間らしく、誰よりも魔女らしく、そして誰よりも母だった。 -
元の童話をアレンジなしに膨らませてある。話は知っているはずなのに世界に引き込まれる。