- Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591121764
作品紹介・あらすじ
復員後、焼け跡の東京で殺人犯となった戦友は、天城の稜線に姿を消した。元刑事の訪問を機に、「私」は旧友の足どりを追い始めるが…。謎めいた精神の軌跡を描いた田村泰次郎の『男鹿』。大げさな自漫話から、うっかり上客を迎えることになった男の、滑稽な身の処し方(ゴーゴリ『幌馬車』)。豪雨の夜、祝宴が繰りひろげられる家に、招かれざる客が一人、また一人とまぎれこむ。牧羊地の闇にひそむ恐るべき事件(ハーディ『三人の見知らぬ客』)。逃亡者たちが放つ、鮮やかな一瞬の物語。
感想・レビュー・書評
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田村泰次郎は『肉体の門』の著者…こういうアンソロジーでないと手に取らなかったタイプの作家だが、戦争体験と骨絡みの世代特有の凄みのある人物像。追われるものがいつしか追うものの内面と一体となっていく展開はまるで『エンゼル・ハート』を思わせる。
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「男鹿」
昔話と現代が混じったようなお話。
心の居場所・平穏が、大木戸のあり様を変えたのか。
鹿という、人間からかけ離れたものを持ってきて、極端に表現している。
犯罪者や、道に迷った者、欲や自我に捕らわれたものが、そこから心を解放できたとき、姿かたちを超越した純粋さ・神々しさがあふれる。
そんな話だったと、私は感じた。
「幌馬車」
地主チェルトクーツキイの滑稽さ・愚かさに苦笑してしまう。
でも、私にとってはそれだけの話だった。
前半、やや読みにくく、眠くなってしまった。
「三人の見知らぬ客」
面白かった。
これほど巧みに人を欺けるのか、と、感嘆する。
肝が据わっていないとできない。
厚かましく、堂々として、機転が利く。
ずるい男だ。 -
テーマタイトルからすると暗い話ばっかなのかなと思いきや、特に洋物2編はコミカルな奴でした。
さくっと終了。
装画 / 安井 寿磨子
装幀・題字 / 緒方 修一
底本 / 『田村泰次郎選集 第4巻』(日本図書センター)、『ゴーゴリ全集 3 中編小説』(河出書房新社)、『ハーディ短篇集』(岩波文庫) -
田村泰次郎『男鹿』
ゴーゴリ『幌馬車』
ハーディ『三人の見知らぬ客』 -
百年文庫21冊目は「逃」
収録は
田村泰次郎「男鹿」
ゴーゴリ「幌馬車」
ハーディ「三人の見知らぬ客」
どれも初めて読む短編。「男鹿」の中で語られる「私」の戦友が描かれる様子は深い余韻が残った。ゴーゴリには笑いが欠かせない。あと、ハーディの一編のどことなくみせる不穏な感じは精神分析の題材に使えそうな気がした。