- Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591132258
感想・レビュー・書評
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明野神社の狛犬には、150年前に狛犬を彫った石工の魂が宿っています。
「あ」には親方の、「うん」には弟子・佐助の魂が。
彼らは話すことも動くこともできるのですが、6歳以上の人間には聞くことも見ることもできません。
彼らは人知れず、日々軽口を叩きながら明野神社の番をしているのです。
行方不明の犬を探す青年・耕平の力になりたくて、がんばる佐助を応援したくなってしまいます。
親方の言いつけをがんがん無視しちゃうので、読者はハラハラさせられっぱなしなのですが…。
情に厚い江戸時代の若者の一生懸命さが、ほほえましいのです。
それぞれの魂が宿った狛犬ですが、「あ」は親方の最期の作品、「うん」は佐助の初めての作品、というのが物語をより味わい深くしています。
岡本順さんの表情豊かな挿画がすてき。
ちょっと怖い顔をしている狛犬ですが、表紙の佐吉のなんともコミカルな表情にくすっと笑ってしまいます。
裏表紙のほうはにらみをきかせた親方。
この親方と弟子のコンビ、ぜひほかの作品でも読んでみたいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
伊藤遊さんで作者買いでした。挿絵が岡本順さんでますます嬉しい♪
狛犬のバディものなんて、発想が奇抜すぎてさすがです。
ただ狛犬だけに、かなり動きが制限されてしまう(なにせ石なので…)のが、お話のつくりとして不利だった気がします。
作者の伊藤遊さんは『鬼の橋』や『えんの松原』でとても濃厚で面白い平安物を書いていらっしゃったので、その時のような濃いワクワクを期待していました。
本作は、それに比べるともう少し気軽に読める感じだと思います。
口が悪い親方だけど、本当はとても弟子思いで情の厚い人(狛犬?)だと伝わってくるところが好きです。生前の親方と佐助の物語も読んでみたいな。 -
和風ファンタジー。
これも、どこかで読んだことがあるようなパターン。でもほのぼのとしてほんのり温かい。 -
昔の石工の魂がこもっている狛犬たちと近所の人々との、不思議で心温まるファンタジー。
狛犬の作者である「親方」と「佐助」は死んだ後、狛犬の阿と吽にそれぞれ魂を残し、現代まで残っています。
情けなくて親方に怒られてばかりの佐助の元に、愛犬がいなくなってしまった青年が訪れるようになり、彼に親しみを感じるようになった佐助は、色々な策を練って青年を愛犬の元へ導いていきます。
伊藤遊さん作ということで飛びついて読みましたが、この表紙では子ども受けはしないだろうなと思います。
『鬼の橋』『えんの松原』のような重いファンタジーではなく、さらっと読めて、心が温まる優しいファンタジーでした。 -
150年前の石工の魂が宿る神社の狛犬。名工と言われた親方の宿る「あ」と若い弟子の佐助の宿る「ん」。狛犬の魂が解るのは7歳未満の子どもと100歳以上のの老人だけ。かわいがっていた愛犬が行方不明になって心配している若い工員の耕平と、幼稚園児の翔太。佐助の「ん」を介して、愛犬の行方を捜す。
神社の狛犬という日本的な設定で描く、時代を超えたファンタジー。今までになかった設定で、おもしろい。