- Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591136218
感想・レビュー・書評
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ルリユールとは本の装丁や修復をする仕事。
風早の街で、少女が出会った不思議な造本師の女性とは。
繊細で心洗われるような物語です。
瑠璃は叔母の新盆のために、母や姉より一足早く、おばあちゃんの住む街へやってきました。
ところが、祖母は怪我で入院、瑠璃は数日を一人で過ごすことに。
犬の次郎さんの散歩をしていて、街外れにある不思議なルリユール黒猫工房にたどり着き、クラウディアに出会います。
赤い髪で青い目のクラウディアは、チキンラーメンが好きというチャーミングな女性ですが、ルリユールの腕前は素晴らしく、不可能に思えるほど。
‥もしかして魔女?
黒猫工房の前には、喋る7匹の黒猫が。
相当な思い入れのある人しか、この場所までたどり着けないらしいのです。
子供の頃に借りたままになって傷んでしまった本を修復して欲しいという男性。
思い出の写真は1枚しかないのに、アルバムを作って欲しいという老婦人みよ子の依頼。
家族も家も失われても、幸福な笑顔ばかりの写真が本当はあったことを見て欲しい‥幸せだったのだと。
このエピソードがとくに悲しみを癒されるようで、心温まります。
さらに、クラウディア自身の身の上に遠い昔に起きたこと。この国に来た理由とは‥
出だしの雰囲気からの予想以上に、ファンタジーでした。
クラウディアに頼んで修復の仕事を習い始める瑠璃。
図書館に勤めている母が持ち帰った本の修理を手伝い、本の痛みがわかるみたい、本の声が聞こえるようだといわれたこともあるのです。
瑠璃はやたら家事が出来て、出てくる食べ物は美味しそう! 食べてみたくなりますね。
そんな瑠璃もまた、子供には重すぎる悲しみを抱えていました。
遠い海で亡くなった叔母とは‥
ルリユールという一般名詞がタイトルというのはどうなのか?という気もするけれど。
人は生きている本なのだ、という言葉にこめられた思い。
丁寧な文章で、女性好みの綺麗なイメージが重ねられ、その内容は哀しみをすくい取るようにあたたかく切ない、祈りのこめられた作品という印象でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
叔母の初盆をおばあちゃんと一緒に過ごすため、家族より一足先に風早の街にやってきた瑠璃。ところがおばあちゃんは怪我で急遽入院。瑠璃はおばあちゃんの犬やお店のことを世話しながら家族の到着を待つことになった。
ちょっと心細さも感じていたが、ひょんなことから、この街にあるという、どんな本でも魔法のように綺麗に修復してくれるルリユール(本を修復したり美しい装丁を施してくれる人)の工房を見つけた瑠璃。ルリユールをしているクラウディアさんや、想いの詰まった本を抱えてその工房を訪ねてくる人々と出会い、不思議な、でもほんわりと心があたたかくなるような体験をする。やがて、風早で知り合ったさとしくんや、自分自身の過去ともつながるような出来事も…。
お話全体を通して、夢か現か…というような雰囲気があって、ちょっとドキドキしながら読んでいた部分もあった。
一番感じたのは、人と本とのつながりのこと。人の想いが本に詰まっていることって、結構たくさんあるんじゃないかな。私も本が好きで、たくさん持っている。そして、大切な思い出がある本もある。その思い出も丸ごと全部、綺麗に修復してくれる、そんなルリユールが実際にいたら素敵だろうな。 -
なんて優しい話なんだ!と、読み終わった瞬間思いました。
童話みたいな雰囲気でした。
ルリユールの技術の描写はあまり書いてありませんでしたね。アルバムの話はとても感動しました。
図書館本ですが購入して手元に置いて何度でも読みたい本です。 -
中学生の女の子がどんな本もキレイに修復する不思議な女性に出会い、成長していくファンタジー。
どのお話も、ほろ苦く切ないけどじんわり温かくなるお話でした。
もっと色々な人、本にまつわる話を読みたいと物足りなさも少し感じたけど、良かった。 -
ルリユールとは、本を修復したりする製本屋のことです。
この本は、主人公の少女がルリユールの女性と出会い、その仕事を手伝うという物語です。
村山早紀さんらしい心温まる物語で、読んでいくうちにまるで自分もおとぎばなしの中にいるような気持ちにさせてくれる本です。 -
『ひとは生きている本、生きている本がひとなのです。世界に一冊きりしかない、もろくも貴重な存在。失われてはいけない。奪われてはいけない、』
本ってやっぱりいいね。読み終わって、そう感じました。電子書籍が普及しつつありますけれども、やはり紙の本の温かさが好きです。
どこにでもありそうな町から始まるこの物語。日常に潜む非現実、という感じですかね。冒頭の描写が長く、不思議な世界にゆっくり入るようで、先がとても気になりつつ読みました。個人的には時林さんの物語が印象に残っています。また最後のほうの展開『本棚がどこまでも続いてゆく』の辺りが、子供の頃に夢見たような異世界が広がっていて、懐かしさを感じました。
文の表現としては少し思うところがありましたが、世界観にのまれ気にせずに読むことが出来ました。
この本と出会うまでルリユールという言葉さえ知りませんでした。が、いつか私も、世界に一つだけの本をルリユール職人さんに頼んでみたいです。
『物語のように不思議なことだって、たまにはあるのだろう。』
私たちの住む町にも、いつかクラウディアが訪れる日が来るかもしれませんね。 -
家族のみんなより一足早く風早の街におばあちゃんを訪ねた瑠璃。瑠璃の心の傷が、ルリユールの工房と出会うことで癒やされていく物語。語り口、出会う人や者たちの優しさに心が洗われるようでした。レモンバターのスパゲッティーや卵焼きやフレンチトーストなど、簡単なお料理だけどとっても美味しそうで、思わずチキンラーメンも買いにいきたくなりました。