ビオレタ (ポプラ文庫 て 3-1)

著者 :
  • ポプラ社
3.63
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本棚登録 : 2020
感想 : 144
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591154359

作品紹介・あらすじ

婚約者から突然別れを告げられた田中妙は、道端で大泣きしていたところを拾ってくれた菫さんが営む雑貨屋「ビオレタ」で働くことになる。そこは「棺桶」なる美しい箱を売る、少々風変わりな店。何事にも自信を持てなかった妙だが、ビオレタでの出会いを通し、少しずつ変わりはじめる。人生を自分の足で歩くことの豊かさをユーモラスに描き出す、心にしみる物語。

感想・レビュー・書評

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  • 婚約者に一方的に別れを告げられて、道端で泣きじゃくっていた田中妙は、いきなり菫さんという身長が170㎝もある女に呼びかけられ、家まで連れて行かれた。
    菫さんの経営する、棺桶を売っている「ビオレタ」という雑貨屋で働くことになる。
    ボタン屋の千歳さんとも知り合い、とりあえずの職場と、とりあえずの恋人と、とりあえずの日々を過ごすことになる。
    妙がノートに書き連ねた言葉や、菫さんの言葉がチクッと突き刺さるんだけど、いやな感じがしない。
    さびしいとか、必要とされていないとかうじうじ考えちゃってるけど、妙はほんとは幸せなんだよ。
    出てくる人みんなが飾り気がなくて、優しくて、ほんの少しの目に見えない何かに気づいて成長していく妙が微笑ましかった。

  • ☆4

    可愛らしい手作りの小物が並ぶ雑貨屋さんに「棺桶」が置いてあるの!?と最初は驚いたのですが、読み進めていくうちに「ビオレタ」に菫さんが作った棺桶を見に行ってみたいと思えてきました!(ブックカバーも絶対可愛いだろうなぁ…)

    主人公・妙の周りの人たちが素敵な人たちばかりで(特に妙のお父さんが良かった!)読後はほっこり温かい気持ちになれるそんな物語でした❁⃘*.゚

  • 自分の心をちゃんと言葉にして互いにぶつけることの大切さ。
    寺地さんのデビュー作だけれども、この時から一貫してテーマになっているんだなと感じさせられた。

    最初から終盤まで、だいぶ曲があったり、悲観的だったり、面倒くさいなって人が出てきて、ムカムカしたけど、最後まで読んで良かった。


    「感情でも、記憶でもいいけど、そういうのを埋葬する必要のある人がいる。行き場のないものを引き受けてあげるぐらいのことはしてあげたい」

    という理念の雑貨屋ビオレタ。

    「棺桶」なる、埋葬のための小箱を売っているビオレタ店主の菫と、主人公の妙、周りの人たちの物語。

    菫の言葉もよかったが、お父さんの言葉もよかった。
    時々、考えさせられる言葉が落ちてくる。

    刺繍や、カレー、家族、「強い」「弱い」、「名前について」など、その後の寺地さん作品の要素もいろいろ出てきて面白かった。

    一番よかった言葉、印象に残っている言葉。

    ・「強い」は「弱い」の対極じゃないよ。自分の弱さから目を逸らさないのが強いってことだよ。

    ・話しているあいだに本人のなかで、
    『なんらかの劇的な変化』が起こることがある。


    ここからは、ネタバレあり考察です。ご注意をm(_ _)m













    はじめ、姉への印象がものすごく悪かったのに、最後ガラッと変わる。
    ここまで変わるのはなんでかなと思ったら、作中に別のシーンだけれど、「投影」という言葉が出てきて、それかと思うに至る。

    心理学的に「投影」とは、
    『自分が思っていることを、自分が思っているのではなくて、人が思っているのだろうというふうに思うこと。』

    『自分のなかにあるということを認めるわけにいかない欲動や感情を外に出してしまって、自分にあるのではなくて、外に、ほかの人のほうにあると思うという防衛の仕方。』
    「精神分析的人格理論の基礎」p85 馬場禮子より


    だから、勝手に思い込みで悲観的になっていた妙は、自分が姉に対して思っていたことを、姉が自分に対して思っていると、捉えていたのかなと。

    最終盤、お母さんに自分の気持ちを言葉にしたことで、ちゃんと、お母さんにもお姉さんにも向き合うことができるようになり、「投影」という防衛をしなくても、意思疎通ができるようになった。

    まさに、話すことで『なんらかの劇的な変化』が起きたのだと思う。

    それで姉に対する感情も変わり、前半とは比較にならないほどの、良い姉の描写になっているのかと思った。

    全然、違うかもしれないけど(笑)

    蓮太郎も大分変わった。最後の蓮太郎はよかった。妙に話を聞いてもらって、蓮太郎も変わったのかもしれないな。

    最後まで読んでよかった。
    【誰かに話すことの大切さ】

    ちなみに気軽な投影はしょっちゅう起こっていると、かるーく馬場さんも言っている。

    「勝手な思い込みといわれるのが投影です」と。

    だからこそ、もしかしたら勝手な思い込みかもしれないからこそ、不器用な言葉でも、勇気を振り絞って、言葉にして差しだすしかないんだなあ。

    聞き手がそれをちゃんと掬うのも大事だけれども。

    感想がここまで長くなるほど、いろいろ考えさせられる本だった。

    寺地さん恐るべし。

  • 寺地はるなさんを最近知って、立て続けに読んでます。
    あー、、、ってなるフレーズが散りばめられているのがいいなと思う作家さんです。

    「とりあえず田中さんは、相手の返答をいちいち予想するその鬱陶しい癖を直したら良いと思うのよ」
    こう言ったらこういう返事が来るに違いない、だから言うのはやめとこう、なんて先回りして黙り込んでいたらねえ、なにも伝わらないよ

    親は大切に。みんな言う。みんな、みんな、みんな同じことを言う。わかってることをみんなから言われるのはしんどい。正論はしんどい。

    あー、、、ってなります。
    そうだよねーって。
    反省でもあり、共感でもある。

    自分は誰からも必要とされてない、って思っていても、気づいてないだけで案外愛されているかもよ?案外周りの人は話せばわかってくれるかもよ?と、思わせてくれる小説でした。

  • 面白かった。何度も笑った。
    ちょっと泣けたところも。
    それでいて、人が持っている毒というか裏、奥のほうも見え隠れしていて、ただのいい話っぽくはない。でも、ドロドロはせず。そこが良い。

    自分のことを冷静に分析して指摘してくれる人がいて、主人公は幸せだな、と思う。



  • 久しぶりにミステリー以外✨
    全体感として、ユーモア満載。
    会話と会話の間などに心の中の気持ちやそれを言葉にした比喩みたいなものが散りばめられていてクスっと笑えるところが面白い。

    心に秘めた何かというのは、表からは見えず、人それぞれ何かしら抱えてたり、同じ事への感じ方や考え方もそれぞれ。
    自分の物差しで、何事も判断しない。しっかり思ってる事伝えてみるって大事な事。

    登場人物みんな素敵でした。
    叔父さん面白い!お父さん優しい!

    ビオレタ行ってみたくなる、たくさん買ってしまいそう笑

  • ユーモアとリズムが好み。妙、菫、千歳さん、蓮太郎の関係は、現実ではなかなかない関係性のはずなのに、なぜだかリアルさを感じました。

  • 寺地作品5作目。これがデビュー作か!人物設定も会話も随所にスパイスが効いてて、ファンタジーの様な素敵な小説です。

  • 読後感が良い。読むと前向きな気持ちに。
    ビオレタは棺桶を売る雑貨店。婚約破棄され号泣する妙は、菫に拾われ働く。そこで菫の元夫、息子、客と出会い、失恋から立ち直り成長していく。

  • 寺地さんの本が好き、なのだが、あまり響かなかった…かな。サラりと読めて、あぁこういう描き方や感性が好きだなぁとは思うのだけれど。

    人は前に進むと決めた時に何かを捨てるのかもしれない、でも、それを入れる箱を〝棺桶〟と呼ぶことに違和感を覚えた。何か、違う、と。
    自分の中で違う呼び方をしたいから(でも何て呼ぶかと言われると浮かばないのだけれど)、共感しきれなかったのかもしれない。

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著者プロフィール

1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。他の著書に『わたしの良い子』、『大人は泣かないと思っていた』、『正しい愛と理想の息子』、『夜が暗いとはかぎらない』、『架空の犬と嘘をつく猫』などがある。

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