新宿の猫

  • ポプラ社
3.62
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本棚登録 : 196
感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591154625

作品紹介・あらすじ

構成作家の卵である「ボク」は明日の見えない闇の中でもがいていた。そんなある夜、ぶらりと入った新宿の小さな居酒屋で、野良猫をかわいがる「夢ちゃん」という女性店員に出会う。客には不愛想だが不思議な優しさを秘めた夢ちゃんに「ボク」はしだいに惹かれていく。ふたりは猫についての秘密を分け合い、大切な約束をするのだが――。生きづらさを抱えた命が伝え合う、名もなき星のような物語。

感想・レビュー・書評

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  • よく耳にはするが、行ったことのない
    「新宿ゴールデン街」
    そこの小さな居酒屋での人間模様、猫もよう

    それぞれの暮らしが厳しくて切ない
    あがいている人人猫
    いやあ猫は達観してるかな

    ただラストがとても穏やかだったので
    静かな気持ちでページを閉じることができた

    散りばめられた詩がいいな

    うちの近所の保護猫の家族図、絵が下手だからなあ
    残念 描けないよ

    ≪ 猫たちの 秘密分け合い でも離れ ≫

  • 2019年1月ポプラ社刊。悲しく寂しい話でした。

  •  もう「叫ぶ詩人の会」の歌を聞いて以来,ドリアンのファンになってしまったので,評価は付けられない(5以外にない(^^;;)。
     さて本書について…
     新宿に住む十数匹の野良猫を題材にして小説が書けることが面白い。主人公の山ちゃんという男性(ボク)。小さな焼き鳥屋の店員の夢ちゃんという女性。その焼き鳥屋に集まる常連は,なかなかクセのあるメンバーだ。
     小説の常で,内容についてちょっとでも紹介すると,読むときのドキドキさがなくなる。だから,これ以上は書かない。
     ただ,いろんな創作や文学や芸術は,一般大衆の大多数を相手にするのではなく,目の前にいる一人に向けて行うものではないか…という作者の訴えには,納得する。
     この小説も,1人に向けて書かれたもの。その1人は,わたしであり,あなたである。そして,このレビューも,今,これを読んでいるあなたに向けて書こうと思って書いているのである。

  • お互いの気持ちを最後に詩として表現しているところが、読んでいて一番ホッとした場面だった。
    別々の道に別れてしまったけど、再び会うことができ本当に良かったと思えた一冊だった。

  • 新宿ゴールデン街。ちょっと怖くて胡散臭いけれどちょっと憧れます。
    かつての捻じれた若者達が大人になった今、昔どうしてそうなったのか分からない事だらけで、どの扉を開ければ未来につながっているのか全然分からなくて、悶えていた時の気持ちは今も残っているでしょうか。
    たくさんの猫がひょっこり顔を出す居酒屋。店員の女の子の書いた猫の家族図。猥雑でどこか暖かな人々。色弱というハンデを背負って夢であった映像の道を絶たれ、いつも背中を丸めてもがいているような主人公。初速は遅いけれど読んでいるうちに心に加速がついて、心が次々追い抜かしていく風景はかつて自分が見た風景だったような気がしました。
    昔が懐かしく、過ぎ去った時間が戻らない事が悔やまれるように、今の時間も同じように戻れない愛おしい時間だと感じさせてくれる本です。
    ドリアンさんの視点は優しい。
    また信頼できる作家を一人発見。

  • 構成作家の卵である「ボク」は明日の見えない闇の中でもがいていた。
    そんなある夜、何となく立ち寄った新宿ゴールデン街にある花梨花という小さな居酒屋で、野良猫を可愛がる夢ちゃんという女性店員と出逢う。客には無愛想だが不思議な優しさを秘めた夢ちゃんに「ボク」は惹かれてゆく。
    2人は次第に距離を縮め、猫についての秘密を分け合い、大切な約束をするのだが…。

    読んでいる最中に、これはもしかしたら、程度は分からないけれど作者の実体験も入っているのかな?と思った。というのも、夢ちゃんは詩作が趣味で、その夢ちゃんに影響されて主人公も詩を書き始めるくだりがあって、2人が書いた詩も作中に登場するから(作者は詩人でもある)。
    新宿ゴールデン街にある小さな居酒屋の描写も妙にリアリティがあって、いかにも実在しそうな雰囲気。
    読み終えた後にある一部分がノンフィクションであることが明かされて、やっぱり、と納得した。

    「ボク」は色弱というコンプレックスを、夢ちゃんは生い立ちの壮絶さと斜視気味であるというコンプレックスを抱えていて、生きる上でのハンディを感じた経験から生きづらさを抱えながらもどうにか生活を立てていた。
    そんな2人だからこそ、多く言葉を交わさなくても分かり合える部分があったし、惹かれ合ったのだと思う。
    それが実を結ばないとしても、ずっと心の中に在って忘れることはない相手というのは実際にもいる。同じ世界の中で幸せでいてくれることを心から願える相手。

    ドリアン助川さんの小説には生きづらさを抱える人が多く登場する。読んでいて共感する部分もあるし、うまく立ち回れない登場人物に胸苦しくなることもある。
    だけどいつも優しい。他人から見れば幸福な人生には見えないかもしれないけれど、それぞれ幸せなかたちを見つけて生きていく人たちの姿が描写されているから。
    読み終えた後はじーんと温かい気持ちになる。
    この小説もそうだった。すぐ側にいそうな平凡な人たちのひっそりとした人生ドラマが、丁寧に綴られていた(ちなみに猫の描写もとても丁寧だった)。
    「ボク」と夢ちゃんの、お互いを守り大事に思う気持ちが眩しく、そして切ない物語だった。

  • あっというまに読んだ。

    目。瞳。
    みんな違う色だし、みんな違うものが見える。
    でもそこがすてきなところ。

    そして最後の注釈がまたいい。

  • ゴールデン街に行ってみたくなった。この本の中に出てくるような興味深い人たちが本当に集っているのだろうか。いつか覗きに行ってみたい。
    ミステリアスな夢ちゃん。話の中盤までは、彼女のことを魅力的に感じていたのに、だんだんとそれが薄くなり、最後のトルコから届いた彼女の詩を味わうことが出来なかった。私の読んだときの気分の問題かもしれない。

  • 1962年生まれ、ドリアン助川さん、初読みです。「新宿の猫」、2019.1発行。新宿ゴールデン街が栄えた時代、斜視の夢ちゃん22歳が働いている「花梨花」という居酒屋を舞台にした物語。猫たちは自分の家族として、17匹の猫の家族図を冷蔵庫に貼り、廃墟となったホテルの一室で猫たちを世話し続ける夢ちゃん。そんな夢ちゃんに魅かれる構成作家で色弱の山ちゃん。「猫たちに幸せあれ」、そんな気持ちがこみあげてくる作品です。

  • テレフォン人生相談のドリアン助川さんとして知っていたのですが、小説はどうなのかなあと、読んでみました。やはり優しい人の書かれる小説だなあと思いました。これからも色々読んでみたいです。

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著者プロフィール

ドリアン助川 訳
1962年東京生まれ。
明治学院大学国際学部教授。作家・歌手。
早稲田大学第一文学部東洋哲学科卒。
放送作家・海外取材記者を経て、1990年バンド「叫ぶ詩人の会」を結成。ラジオ深夜放送のパーソナリティとしても活躍。担当したニッポン放送系列『正義のラジオ・ジャンベルジャン』が放送文化基金賞を受賞。同バンド解散後、2000年からニューヨークに3年間滞在し、日米混成バンドでライブを繰り広げる。帰国後は明川哲也の第二筆名も交え、本格的に執筆を開始。著書多数。小説『あん』は河瀬直美監督により映画化され、2015年カンヌ国際映画祭のオープニングフィルムとなる。また小説そのものもフランス、イギリス、ドイツ、イタリアなど22言語に翻訳されている。2017年、小説『あん』がフランスの「DOMITYS文学賞」と「読者による文庫本大賞(Le Prix des Lecteurs du Livre du Poche)の二冠を得る。2019年、『線量計と奥の細道』が「日本エッセイスト・クラブ賞」を受賞。翻訳絵本に『みんなに やさしく』、『きみが いないと』(いずれもイマジネイション・プラス刊)がある。

「2023年 『こえていける』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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