ゆめみの駅 遺失物係 (ポプラ文庫ピュアフル あ 5-2)

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591155691

作品紹介・あらすじ

あたしが失くしたのは、「おはなし」でした――。
世界中から忘れられた物語が届く遺失物係での、不思議な七日間。

越してきた田舎の町で、中学校に馴染めずにいた少女は、
ひょんなことからゆめみの駅にある遺失物係にたどり着く。
そこは誰かが忘れた「おはなし」が世界中から届けられ、
「遺失物語台帳」に収められている不思議な場所だった。
係の人から一日一話ずつ物語を読み聞かせてもらいながら、
自分が失くしてしまった物語を探すのだが――。
痛みを抱える人にそっと寄りそってくれる、切なくもやさしい物語。

感想・レビュー・書評

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  • 酒井駒子のイラストの表紙に惹かれた。
    ゆめみの駅の遺失物は物ではなく「お話」。
    期待しすぎないで読む方がいい。

  • 物語が愛おしくなる物語。

    駅の遺失物係で、物語を探す物語。

    私たちは物語をなくしていて、そして物語を探している。
    人の物語と出会うことで、自分の物語を思い出すこともある。

    やわらかで、あたたかくて、やさしい物語でした。

  • “がっかりすることには慣れています。それに、立ち直るコツも知っています。かんたんです。それ以上を望まなければいいのです。”
    “手にしていたはずのものを、気づいたら失っていたのです。”
    “失くしたことだけがわかっていて、なにを失くしたのかを覚えていないだなんて”

    小説の始めの方からこんなフレーズが続いて、ひきこまれて読んでいった。
    月曜日から日曜日までひとつずつ、誰かに忘れられた物語がゆめみの駅の遺失物係によって、おはなしを失くした「あたし」に読まれていく。
    小川未明の童話にも似た少し悲しくて寂しい雰囲気だと感じたけれど、読後感は泣いたあとみたいに少しすっきりしている。
    現実の世での喪失感て、そう簡単に拭えるものではないけど、救いのある話でよかった。

  • 中学生の少女が失くしたお話を探しに辿り着いた、ゆめみの駅の中にある遺失物係。
    そこは誰かが忘れたお話が世界中から届けられる不思議な場所。
    係の人から一日一話ずつ読んでもらい、少女は自分の失くしたお話を探していく。

    がっかりすることには慣れているから、と学校にもなかなか馴染めずいつも寂しい思いを抱えていた少女。
    自分を小さな籠に閉じ込めていた少女は色々なお話を聴く内に、徐々に自分の世界を広げていく。

    子供に限らず大人も日々色々なものを失くしている。
    けれど失くしたものはどこかにあるはず、と諦めきれない。
    そんな諦めの悪い人達の心の奥深くには、こんな遺失物係が潜んでいるのかも。
    私の失くしたお話も遺失物係に届けられていないかな?
    失くした分だけ新たに創り生み出していくのもまた人生だ。
    そんなメッセージの込められた優しい物語だった。
    係の人が読んでくれたお話はどれも素敵。
    酒井駒子さんの、優しくてちょっぴり寂しげな表紙の絵に吸い込まれそうになる。

  • 作者の名前に見覚えがあるな、と立ち止まったら『天のシーソー』の方だった。
    これも縁なので、購入。

    おはなしの遺失物係。
    主人公は、生活の中で夢や希望を抱くことを上手に諦めながら生きている女の子。
    彼女が落としたはずのおはなしを聞きに、遺失物係を訪れるというストーリー。

    遺失物係さんのおはなししている姿を思い浮かべながら、さまざまなおはなしへ飛んでいく。
    彼の声は、きっと柔らかくて静かなんだろう。
    音と文字は別々の機能を有しながら、同じおはなしを辿ってゆく。

    アヤといしこさんのおはなし。
    バクの母子。てんとう虫の恋。
    病気の少年と暗闇。

    どれも、どこかに憂いがあって後が残る。
    女の子のように、こうなって欲しい、や、それは切ないな、と思う話もある。
    でも、それを作り出した人がいて、語り継ぐ人がいることの不思議を思った。

    ゆっくりとした時間を過ごせた。

  • タイトルとあらすじと装画にやや期待しすぎたな。
    文体がちょっとくどくてあまり好きな語り方ではなかった。
    土曜日のおはなしが好きだな。

  • 誰かが失くした物語は「ゆめみの駅の遺失物係」に届けられるそうです。7つの拾得物語はどれも切なくもほんのりと暖かく、それを読み聞かせてもらう訥々と語るのが特徴的な少女と一緒になってあれこれと思索を巡らすのが楽しくありました。

  • 小説と児童書の間のような本。
    静かで、あたたかいけど、寂しくて。
    「かたくてあたたかくてつめたくてやわらかいもの」の空気感を思い出しました。

  • ★4.0
    誰かが忘れた"おはなし"を読み聞かせてくれる、ゆめみの駅にある遺失物係。各章で読まれる"おはなし"は、まるで絵本を読んでいるかのように情景が目に浮かんでくる。そして、忘れられていくものに儚さを感じるだけでなく、静かに寄り添う優しさと温かさもしっかり健在。中でも、一番のお気に入りは最終章の「青い人魚とてんとう虫」で、切なさと希望のバランスが絶妙だったと思う。少女のその後は分からないけれど、大人になった彼女=著者のような気がした。ただ、唯一の欠点はページ数が少なく、読み足りなさを覚えてしまうこと。

  • リリース:明子さん

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著者プロフィール

山梨県甲府市生まれ。1994年に「ふゆのひだまり」で小さな童話大賞大賞、「いただきます」で同選者賞今江祥智賞、2001年に『天のシーソー』で椋鳩十児童文学賞、2018年に『満月の娘たち』で第56回野間児童文芸賞を受賞。主な作品に『頭のうちどころが悪かった熊の話』(新潮文庫)、『星につたえて』『ふゆのはなさいた』(アリス館)、『夜叉神川』(講談社)などがある。

「2021年 『メンドリと赤いてぶくろ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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