わたしの美しい庭

著者 :
  • ポプラ社
4.21
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  • / ISBN・EAN: 9784591164853

感想・レビュー・書評

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  • 「流浪の月」で本屋大賞を受賞された凪良ゆうさん。
    受賞作は、ちょっと重い内容なのかな…と思い、装丁の絵が明るい印象のこちらを図書館で予約した。

    なんというか、新しい時代を感じた。
    社会の主流ではない場所で生きる人たちが、互いに踏み込みすぎず、でも互いを必要とするときにはしっかりと結びついて生きている。
    誰もがこんな風な距離感で支えあって生きられたらいいのにな…。

    読んだことがあるようでない、そんな小説だった。
    さぞかしお若い方なんだろうなぁ…と思ったら、自分とそう変わらない方だとが分かり驚いた。
    すぐ年齢で考えようとする自分を反省。2020.10.23

    • naonaonao16gさん
      ロニコさん、おはようございます!

      凪良ゆうさんの価値観や距離感、素敵ですよね。
      「流浪の月」しか読んだことないですが…(笑)

      わたしもす...
      ロニコさん、おはようございます!

      凪良ゆうさんの価値観や距離感、素敵ですよね。
      「流浪の月」しか読んだことないですが…(笑)

      わたしもすぐ年齢で決めつけたりすることあるのでわかります!!
      と思って思わずコメントです。

      素敵な一日を!
      2020/11/06
    • ロニコさん
      naonaonao16gさん、こんにちは^_^

      コメントをありがとうございます!

      ブクログを始めて、色々な方のレビューと共に読みたい本が...
      naonaonao16gさん、こんにちは^_^

      コメントをありがとうございます!

      ブクログを始めて、色々な方のレビューと共に読みたい本が増えるばかりで、絶望感すら漂ってます…。
      凪良さんも、私にとっては新しい風を運んで下さった作家さんです。

      naonaonao16gさんは、柚木さんのButterを読まれたのですよね。あれはかなりヘビーですが。
      「本屋さんのダイアナ」や「さらさら流れる」も読み応えありますよ、Butterほど重くないですし。

      しかし、本当に年齢というか、分かりやすいモノに巻かれてはいけませんね…。
      2020/11/07
  • 縁切り神社を舞台にさまざまな人の境遇がえがかれていく。
    結果として上手くいかなかったり、忘れない選択をしたり、リアルだけどちゃんと小説している凪良ゆうさんの良さがすごく出ていて、良かった。

  • 「根本的な解決にはなっていないけれど、生きていく中でなにかが根っこから解決するなんてこと滅多にない。しんどい。つらい。それでも明日も仕事に行かなくてはいけない。だからとりあえず明日がんばるための小さな愉しみを拾い集めていくことが優先される」本文より。

    「流浪の月」に続き、凪良さん2作目。
    心を射抜かれた。

    巷には情報が溢れ、ハウツーや専門家による単純化された答えが用意され、随分と困難がなく生きられるはず。
    でもちっとも解決なんかしない。

    私が悪いの? どうすればいいの?
    どうしてこんな目に?

    いつも自分を責め続け、追い詰める癖がある私は、登場人物たちに自分を重ね、何か重い荷を少し解くことができた気がする。

    「考えすぎず、突き詰め過ぎず、沈まない程度の浮き輪につかまって、どこともしれない場所へと流されていく」

    そうだ、物事を根っから解決してすっきりなんて、絵空事だ。日々心の奥底に閉じ込めた寂しさ、やるせなさ、諦め、怒り等々、何かの拍子にぐっと飛び出しそうになるのを抑えながら、私もこの年まで日常を続けてきた。

    鍵をかけているつもりで、いい人やいい母親を装って生きてきたけれど、心にはどろどろとしたマグマが燻り、本当は実家の母や妹への怒りでいっぱい。
    夫にも振り回され続けた。

    私には幼い頃から、私を守ってくれる居場所なんてなかったんだ。
    そう、「なにがあってもここに逃げ込めば守ってもらえるんだ、ここはわたしの場所なんだと思えた(本文より)」そんな場所が心の底から欲しかったんだ。

    周囲の期待に応えようとし続け、社会の評価や規範に頼る日々は辛かったんだな。

    誰かの役に立たなくても、期待に応えなくても、生産的でなくても、そこに居ていいんだよという安心感を得る環境が全くなかった自分。

    そんな状態の自分を無価値と責めてしまうのは、たまたま不十分で不適切な環境だったからで、生い立ちでの大事にされた、愛された記憶の存在は大事なのだなと感じた。

    でも大丈夫。そんな記憶や経験がなくても、私は可哀想な人でもいい。
    「誰かに証す(あかす)必要なんてなく、わたしはわたしを生きていけばいい。」(本文より)

    そんな自分を受け入れて、私は私の人生の選択をしていくのだ。

    辛くなったら、また夜頁を開き、マンションの住人達と一緒の空気を吸うことで、明日を少し元気に迎えられそうな1冊。いつも手元に。

  • 心が軽く清々しくなる一冊。

    今作も良かった。ちょっと生きづらさを抱えた人たちで紡がれる連作短編集は心を揺さぶってかき回された。時に苦しく時に涙…なのに読後は心がスッと軽くなる。
    たぶん、普通とか定義とか…そんなの必要ないじゃないっていうものを全部引っこ抜いて持っていかれたから。
    しかも無理矢理じゃない、ごく自然に。

    そして一気に風通しが良くなる感覚に清々しささえも感じられた。

    誰もが自分に必要なものだけ残して自分の誇れる庭を心に造り上げる…それが大切。

    そして一人でも綺麗な庭だねって言ってくれる人がいたら幸せだ。

  • 縁切り神社の下のマンションで暮らす住人の物語。
    プロローグ&エピローグ(わたしの美しい庭Ⅰ,Ⅱ)と3つの章から成る。 

    1章にあたる「あの稲妻」は、人生初めての彼氏を交通事故で失った女性が主人公。事故から月日が流れ、39歳になっても心の中にはずっと彼がいる。母親が持ってくるお見合い話、職場でのお局さん扱い、年齢に見合った服装…。放っておいて欲しいのに、みんなにとっての「普通」を押し付けられる日々。彼女が望んだ縁切りは『世間体』。
    作中出てきた茨木のり子さんという方の詩がとても良かった。
    初めて付き合った人のことはなかなか忘れられることができない。私もそれで前に進めなくて悩んでいたけれど、忘れる必要なんてなかったということに気付かされた。桃子さんが今も真っ直ぐ立っていられるのは、坂口くんが惜しみない愛をくれたからだと思う。たった一人でも、自分を心から愛してくれる人がいたという事実だけで、人は無敵になれる。

    2章にあたる「ロンダリング」はゲイの男性が主人公。まわりの友達が彼を遠巻きにしながら自分を正当化する為に「ごめんな」と謝罪してきた時に、統理が言った言葉がとてもよかった。
    「理解できないならできないでしかたない。…なのにわざわざ声かけて、言い訳して、路有に許されることで自分たちが安心したいんだろう。けど良心の呵責はおまえらの荷物だよ。人を傷つけるなら、それくらいは自分で持て」
    友達なんて、数じゃない。一人でもこうしてそばにいてくれる友達がいるだけで、彼は幸せ者だと思う。

    3章にあたる「兄の恋人」は、鬱病を患う男性が主人公。(1章の主人公である桃子さんの、亡くなった彼氏の弟)
    鬱になる時って、無自覚のうちにさまざまな重圧に押し潰されてしまった時だと思う。彼は、鬱になったことであらゆるものと縁が切れたことを自覚した。失ったものは大きいかもしれないが、自分が押し潰されるほどに重いと感じるものは果たして本当に必要なものなのか?この問いに向き合うきっかけになったのはいいことなのかもしれない。

    ほのぼのした雰囲気で優しい物語だが、登場人物の人柄が良すぎるのか、メルヘンな世界観が強く、リアリズムの私にはそこまで合わなかったかな。
    ちなみに、この縁切り神社、縁切りの効果はない模様。1章で桃子さんが形代をお祓い箱に入れた直後から、母親が新しいお見合い話を持ってきていた(笑)

  • 複雑な家庭環境、性的マイノリティ、恋人との死別、うつ病…
    どれも重いテーマなのだが、この作者が書くと全く悲壮感がなく、とても読みやすい。
    これは、前作の「流浪の月」でも同じく感じていて
    この作品もすごく期待感いっぱいでよみはじめたが、まさに期待を裏切る事のない素晴らしい作品でした。

    その中でも、一番好きな話が「あの稲妻」
    このしょうの全てを表している詩集の一部
    (茨木のり子)
    けれど歳月だけではないでしょう
    たった1日きりの
    稲妻のような真実を
    抱きしめて生き抜いている人もいますもの

    そして、桃子が
    こんなに長い時間が過ぎたのに
    わたしはやっぱりあなたが忘れられない
    だから、もう、そう生きていってもいいかな?

    そう!それでいいと思う!!
    恋人がいない、結婚してない、子供がいない
    世間体という目が、かわいそう、不幸だみたいな視線を向けてくる…
    本当に余計なお世話だ!
    そんなもの以外にも充分に幸せに楽しく生きていく道はいくらでもあるのだ
    忘れられない恋を引きずって、たまに思い出して
    幸せな気分に浸ったて全然いいのだ…

    ヘンテコな人間関係の中で、すくすく育っていく百音ちゃん。
    きっと素晴らしい感性を持った素敵な女性になっていくんだろう…

    いつか続編で、百音ちゃんがもう少し大人になって
    素敵な出会いや恋愛をしている姿を描いて欲しいと思っているのは、俺だけではないはずです…

  • 好きだ。この人達の距離感、屋上庭園の開放感。
    読んでいてこんなに癒されたのは久しぶり。
    「幸せに決まった形なんてない」
    統理のセリフが物語を読み終えた今、納得できた。

    地元の人から”縁切りさん”と呼ばれる神社を屋上にもつマンションを舞台にした連作短編集。
    ”縁切り”の名の通り、悪縁を断ち切ってくれる神様が祀られているという。
    そして神社の周りに広がるのは、季節の花々が咲き誇る庭園の森。
    小道で散歩したりガーデンテーブルでお茶したり、とちょっとした憩いの場となっている。

    そんな緑豊かな屋上庭園に集まる人達も個性的。
    血の繋がない前妻の子・百音を育てる統理、同性が恋愛対象の路有、亡くした恋人を長年想い続ける桃子、鬱病を患い会社を辞めたひきこもりの基。百音は5歳の時に両親を亡くしている。
    皆それぞれ不安要素を抱えているけれど、無理せず心をフラットにして日々を生きている姿にとても好感がもてた、というより、こんな美しい庭園にいつでも自由に行けるなんて羨ましい。
    日々のストレスも自然に溶かしてくれて、気持ちもリフレッシュできそう。
    もちろん続編希望の一冊である。

    • HARUTOさん
      おはようございます。この作品、私も気になってました。こんな屋上庭園に行ってみたいです
      おはようございます。この作品、私も気になってました。こんな屋上庭園に行ってみたいです
      2021/07/15
    • mofuさん
      HARUTOさん、こんにちは。
      この表紙の絵のように、花や緑が溢れる素敵な屋上庭園でした。私も行ってみたいです。
      物語の内容にも癒やされまし...
      HARUTOさん、こんにちは。
      この表紙の絵のように、花や緑が溢れる素敵な屋上庭園でした。私も行ってみたいです。
      物語の内容にも癒やされましたよ。
      メッセージをありがとうございました(^^)
      2021/07/15
  • 図書館で予約待ち、忘れた頃に順番がきました。
    わたしの美しい庭『百音園』屋上庭園チューリップ、紫陽花、モッコウバラ、スカビオサ、サルビアなど手入れされた空間で癒されながら、縁切り神社へお参りして、いろんなものを手放したい。

    登場人物の台詞がドラマのようにやりとりが生き生きしている。
    「幸せに決まった形なんてないんだから。」
    「生きていく中でなにかが根っこから解決することなんて滅多にない。」
    「とりあえず明日がんばるための小さな愉しみを拾い集めていくことが優先」
    「誰と誰が手を取り合っていいんだって、それが世界を救うこともわかった」
    それぞれの登場人物の抱える想いにじっと息をひそめて事のなりゆきを見守るように読み進める。心の整理ができたときは、長旅を終えて安堵と疲労が混じったような心持ちになる。
    「大人になるにつれ、感覚には思い出という付加価値がつく」
    「大切な人を亡くすということは、あらゆる場所に目に見えない傷をつけられる」
    自分の想い出に重ね合わせる辛さもあるけれど、浄化するような効用も感じる。ブグ友さんのレビューを読みながら復習しています。

    • Manideさん
      ベルガモットさん、こんにちは。

      いいですね、表紙のイメージが、ほんと、いいのかもしれないです。ベルガモットさんの感想を見ていて、よい空気を...
      ベルガモットさん、こんにちは。

      いいですね、表紙のイメージが、ほんと、いいのかもしれないです。ベルガモットさんの感想を見ていて、よい空気をまとった気分になれました(^^)

      「とりあえず明日がんばるための…」という言葉が、ほんと、ホッとした感じです。いい作品ですね。
      2023/10/20
  • マンションの屋上庭園にある「縁切り神社」に関わる人たち、訪れる人たちが描かれている作品…。宮司で翻訳家の統理、統理の亡くなった妻の子である小学5年生の百音、統理のクラスメイトでゲイの路有、このマンションで暮らす桃子、以前このマンションで暮らしていた桃子の恋人(事故にてすでに他界)の弟の基…それぞれがその立場や境遇をに対して、自身で向き合っていく…。
    作中、統理が百音に対して「手を取り合っていけない人なんていないし、誰とでも助け合えばいい。それは世界を豊かにするひとつの手段だと、少なくともぼくは思っています。」この言葉が響きましたねぇ…ウクライナとロシアとの戦争が長引いていたり、コロナの終息が見えなかったり不安定な世の中ですが、手を取り合って助け合って乗り切りたいですよね!読み終えて、すごく穏やかな気持ちになれました。
    凪良先生に『続・わたしの美しい庭』なんかも読みたいな~今作の登場人物の今後、数年後とか気になる!そんなリクエストしたくなりました。

  • すごく素敵な物語だった。
    登場人物全員と友達になりたいと思った。
    屋上庭園に行って、皆と話してみたいと思った。


    最後の章にある、一つの文章にグッと来た。
    【百音ちゃん、事実というものは存在しません。存在するのは解釈だけです。】

    人はそれぞれの人生の中で、さまざまな経験を持ち、他人が想像できないような思いをする。その一つ一つに善悪など付けられないのかもしれない。
    そう考えた上で、人と接することができたら、世界はもう少し優しくなれるのではないかと思ってしまった。切ない。

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著者プロフィール

1973年生まれ、京都市在住。2007年、BLジャンルの初著書が刊行され、デビュー。17年『神さまのビオトープ』を刊行し、高い支持を得る。19年『流浪の月』と『わたしの美しい庭』を刊行。20年『流浪の月』で「本屋大賞」を受賞する。同作は、22年に実写映画化された。20年『滅びの前のシャングリラ』で、2年連続「本屋大賞」ノミネート。22年『汝、星のごとく』で、第168回「直木賞」候補、「2022王様のブランチBOOK大賞」「キノベス!2023」第1位に選ばれ、話題を呼ぶ。翌年、同作の続編にあたる『星を編む』を刊行した。

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