スマホを捨てたい子どもたち: 野生に学ぶ「未知の時代」の生き方 (ポプラ新書 や 8-1)

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591166130

感想・レビュー・書評

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  • 評価が難しい本だ、なぜならほぼ断絶した二つの部分に別れるから。

    ゴリラの社会を観察して、その洞察を人間の社会に適用させる部分は文句無しに面白く、多くの示唆に富む。特に言語性と非言語性の他者に対する接触への考察に何度もうなされる。

    言葉が編み出されたのはもしかしたら意味の伝達のためではなく、対面を長引かせる手段かもしれないこと。動物は通常触れ合いを通じて一体化することによって関係性を築くが、人間はコミュニティーを広げてしまったために距離を保って繋がれるようにするなにかが必要であった。好きでも嫌いでもない、あるいは好きじゃないけど貴重など、様々な複雑な社会的な関係を築けるようになったのはそのおかげであること。また書き言葉が読み手本位であり、あくまで実際の事象を抽象化したものに過ぎずどうしても認識の変容が起きてしまうという指摘もとてもSNSの問題点の本質をついた指摘だとは感じる。

    その一方で、インターネットの世界にどっぷり浸かっている私としては、作者のインターネットに対する視点がどうしてもjudgementalに感じる。インターネットでは生身の人間としては存在しえなくて、点としてしか浮かべないと断言したり、ネット社会故に自己実現や自己責任が問われるなどあまりにも多くの問題をインターネット社会に背負わせている気がする。彼の指摘する多くの問題はインターネット社会だからではなく、核家族化、個人のコミュニティーからの離脱、が引き起こしている問題ではないのだろうか。個人の集合体ではなく集団への回帰、バーチャルな体験ではなくリアルな世界という論調なのは分かるのだけれども、それらを妨げているのは果たして全てインターネットやスマホなのか。作者がみているインターネットの世界はたったの一部なのではないかともやもやしてしまう。

    専門家は専門分野外のことについて、こうも断定しない方がいいじゃないのか、と思ってしまったのは否めない。それでも、とことん示唆深い記述が随所に散記されているこの本を、人間とはなにか社会とはなにか言葉とは何かを考えたい人は、絶対に読んだ方がいいと思う。

  • スマホとゴリラがどう関わるのか
    ものすごく興味を持って読み進めた。

    コミュニケーションの道具としてのスマホが
    私たち人間に、中でも子どもらに
    どのような影響を与えるのか
    野生のゴリラから考える新たな視点に
    納得いく点が多かった。

    スマホに子育てさせるニュースを
    以前見たことがあるが
    親子のコミュニケーションという点では
    やはり心配になってしまう。

    ゴリラの子育てから
    人間の子育てを見直すきっかけにもなる。
    著者の講演会を聞いてみたくなった。

  • 現代社会のコミュニケーションの問題点を、類人猿とヒトとの性質の差から紐解く視点が非常に面白かった。
    ヒトは共感力で家族と地域社会という性質の異なるコミュニティを両立できているという記述があった。私たちが様々なコミュニティに属していることは当たり前に思えるが、実際はヒトとの距離の取り方が難しいと思う場面も少なくない。
    ヒトが言語によって獲得した「距離を置く」という技も、そればかりだと距離が遠くなってしまう。やはり直接会って、目を見て話し、同じ空気を吸って、コミュニケーションの楽しさと難しさの両方を味わうことが、人として生きる喜びにつながるように思う。
    コロナ渦でなかなか人と会えない今だからこそ、その価値を重く感じる。

  • 人と人との信頼関係は身体をつなぎあわせることでしか築けない、なるほどと思った。一緒に食事をする共食が大事だという主張も、アタリより著者の方が説得力があった。
    ゼロかイチを極めるような今の発展の仕方(西洋的な考え方)には行き詰まりがあって、中庸的な考え方に変化するようなことが起こるかも、というところが面白かった。
    正解はひとつではないし、現状以外の正解もある。そういう自分や身の周り、社会の変化を楽しめるようにしたい。

  • 面白い。

    ぼんやり考えていたことがすべて言語化されていた感じ。ポストコロナの人と人の関わりを考える上で最良の一冊。

  •  この本を読んで知ったことは、例えば、よその赤ちゃんをあやすとか抱っこするとか、うつむき加減の少年に語りかけるとか、そういう大人や青年のふるまいに温もりやありがたさを感じるのには、森林からサバンナに出てきてからの人類の暮らしのなかで、そういう行動に大きな意味があったからだ、ということだ。
     言葉を使えるようになって人間の脳がどう変化したか、AI・ICTが普及すると人間の脳はどうなるのだろうか、といった話も興味深かった。

  • 京都大学総長の山極寿一氏が語る、ゴリラに学ぶ「ヒトの未来」。ゴリラに学ぶ、ヒトにしかない能力とは?ヒトの限界を超えたテクノロジーとどう付き合い、幸せになるか・・・!

  • 人間として大切にしていくことは、やはり、そういうことだよなぁ。日常に潜む違和感にもやもやするのは、私の野生の心の叫びだったのか。

    コロナウイルスとの付き合い方と、心の叫びと、果たして、人間はどうして行くべきか。不正解でなければいい。そう、不正解だなければいいのかもしれません。

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著者プロフィール

第26代京都大学総長。専門は人類学、霊長類学。研究テーマはゴリラの社会生態学、家族の起源と進化、人間社会の未来像。

「2020年 『人のつながりと世界の行方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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