虫とゴリラ

  • 毎日新聞出版
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620325804

作品紹介・あらすじ

〈虫とゴリラ〉の目で、人間の世界をとらえ直す! 
情報化社会の中で、コンピューターに支配されつつある現代日本人に贈る〈日本の2大知性〉によるビッグ対談!

感想・レビュー・書評

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  • 東大の解剖学者と京大の霊長類学者の対談
    非常に興味深い提言の数々
    永年のフィールドワークに支えられた確かな信条
    フムフムと読みました

    でも脳が緩んだ婆さんにはちょい難しいところも……
    このままではあかんよね、人間、世界、地球
    とはぼーっと考えていますが、
    そうですね、
    自然に入って行かなければ!
    自然に体を預け、五感で感じようと!

    ≪ とぎすませ 野生の感覚 ヒトの危機 ≫

  • 「虫(養老)とゴリラ(山極)」は分かりますが、このタイトルはチョットねって思いました。

    人間の社会はこれでいいの?虫とゴリラの視点で人間のおごりに物申す。という内容の本です。
    今まで山極寿一先生の著作は未読なので、養老先生との対談形式なら山極先生の知識や思想を知るのに良いかと思い読んでみました。

    芸がないと感じた「虫とゴリラ」というタイトルですが、山極先生が「と」について語る場面がありました。
    西洋の「a」and「b」は、 「a」か「a」ではない「b」であるが、日本の「a」と「b」は、その2つが同じ価値観を持って相互を了解し合える関係になるのだと。
    この発言があったから、『虫「と」ゴリラ』というタイトルにしたのだと勝手に決めつけました。

    このお二人の価値観はおそらく似ていて、対話を読んでいてもすべてを言わずとも分かり合えている感じがします。
    もう少しやさしく(知識レベルと価値観が違う)読者にもわかるように説明して欲しい箇所もちょくちょくありました。
    見方を変えると、この両者はお互いに新しい発見は見出しにくい間柄なのかも知れません。

    お二人が広範で深い知識を得た背景には、身体を使った豊富な体験が基盤にあることが良く分かります。
    情報の蓄積が進んだ現在、虫や植物は図鑑やインターネットで調べればすぐに見ることができます。
    それではダメで、「虫捕り」や「植物採集」ができる場所に行かないと本当の自然を理解することはできないと力説しています。
    自然の中では、嗅覚や触覚や聴覚など持ちうる全ての感覚を駆使しているのでインプットの質と量が違ってくるのは当然ですね。

    ところが、人間は自然を壊し過ぎたと嘆いています。
    技術が進歩し、できなかったことが「できるようになる」と人間はどんどん「やっちゃう」。
    野山を切り崩し、ビルや道路などを作りすぎた。
    その結果、昔はめったに出遭うことのなかったサル、シカ、イノシシが近年人前に現れるようになった。タヌキやクマも。

    自然現象に法則性を求める試みが行われているが所詮無理であり、自然を情報化すること自体がそもそも間違いだと養老先生は言います。
    「ここにある虫が飛んできた。何が起きますか?」って、わからない。
    確かに、いくら科学が進歩しても宇宙や地球や自然については分らないことだらけです。
    例えば、一本の木があって、枝がどのように伸びて、葉がどのように茂るかということすら永遠に分かりそうにありません。

    本対談の後半部では、虫やゴリラから離れて人間の愚かさを憂いています。

    未来の社会にとって大切なことは、安心を保証することですが、現在はそれが大きく崩れています。
    技術の進歩は安全を作ることができますが、その安全を安心にできるのは人です。
    ところが、現代は人への信頼が揺らいでいます。

    本来信頼を作るためのコミュニケーションが信頼を壊す作用を持つようになってきたからです。
    政治でもビジネスでもフェイクが流行り、信頼が破壊されています。
    人を判断する時は、結局言うことじゃなくて、やっていることで判断することになります。
    言ったことはやらないで、反省するそぶりもない人を信頼し将来を託すことはできないですから。

    安心に対する保証が感じにくいのは、自然への信頼が揺らいでいるせいでもあろうというのは本書らしい意見ですね。
    自然とも感動を分かち合う生き方を求めていけば、崩壊の危機にある地球を救うことができるというのも同感です。

  • 『動物たちは何をしゃべっているのか?』というシジュウカラの言語を研究している鈴木俊貴さんとゴリラ研究家の山極さんの共著がこの度出版されると聞き、山極さん関連でこちらの対談本を思い出し読んでみた次第。

    まず、タイトルと装丁が良い。とてもシンプルでド直球。
    そして出だしのプロローグから対談がいきなり始まっている。助走無しのスタートダッシュ。
    それでいてストイックに生物学的な話だけが語られるかと思えば、社会論、教育論、日本人論などに話が及ぶ。タイトルに反して、人間について語ってることの方が多い。最早何でもあり。

    虫やゴリラに関する知識を通して、我々人間を見つめ直す対談。ご年配のお二人だからか、「今の若い人は…」「今の世の中は…」と嘆き節が多く飛び出す。でも、知の巨人が子ども教育を憂えている姿は、その真剣な眼差しは、老人の戯言のように扱っていい類のものでは無い気がする。
    これはなかなか予測のつかない本だった。

  • 一般教養として読むのももちろん楽しい1冊ではあるが、「教育」の視点から読み進めると、ハッと気付かされることがほんと多いなと痛感。
    今の教育がいかに自然の摂理に反してるか、養老さんと山極さんは的確かつ痛快に断じてくれているので、私にとっては清々しい気持ちにさせてくれる内容だった。
    やはり、経済界に動かされている今の日本の教育は不健全なんだなという確信を、またひとつ得ることができた。

  • 虫の専門家とゴリラの専門家の対談本。いかに人が自然を差し置いて自分勝手なモノの見方をしているかを考えさせられた。専門的な話を軸に、身近なテーマを幅広く扱っているため、とても読みやすく読み応えもある一冊であった。

  • 人間を外から(自然側から)見てきたお二人が、現在の人間社会に対する危機感を話し合う。

    なんでも情報化、均一化、工業化することによって、こぼれ落ちるなにかがあると。うまく言語化はできないが、人間に必要なものがそこにはあると。

    情報に溢れる中、情報化された部分だけを鵜呑みにするのではなく、情報化されきれていない部分まで物事を見てみるよう意識して見たい。

    少し抽象的で理解しにくいところがあった。
    お二人とも知識経験豊富なため、行間で語り合っている部分が多々あったのかもしれない。

  • 動物としての人間、日本人を考えたときに、当たり前だけど現代社会はとても不自然で、その不自然が歪みを生んでいるのは、誰しも感じるところはあると思う。そして、そんなときに自然の中にいる動物や虫たちのような生き物、或いは田舎の生活などから学ぶことがたくさんあるのだなあ、と思わされる対談。学んだからといって、すぐに変えられるわけではないのだけど、それでも不自然さに気がつくだけでも価値があるのではないか。

  • Amazonセールで安くなっていたという理由だけで購入したが、ここ最近で1番面白かった。

    人は物事に意味を見いだしたがるが、自然界から見ると意味がなんて存在しないことも多々ある。
    無理に意味を見出そうとするから自分の都合の良いように解釈して作り替えようとする。

    私自身、何かしらの意味を持って行動すべきと常に考えている中で、この考えは新鮮だった。

  •  新聞書評や書籍広告で面白そうな本があれば、切抜いてコルクボードに貼付けている。その後、縁があったり機を見たりで入手したら、コルクボードから外した書評の切抜きを本に挟んでシオリの代わりにして読んでいく。
     『虫とゴリラ』も書評の切抜きをコルクボードに貼付けていたもので、市立図書館で借り受けた一冊だ。解剖学者で昆虫に造詣の深い養老先生と、ゴリラ研究者で京都大学総長の山極先生の対談だ。自然科学を研究してこられた2人の先生には、現代社会の進化が自然界の普遍性から大きく逸脱していると見えているようだ。
     対談の内容は、山極先生の書かれたあとがきに上手くまとめられている。あとがきだけでも十分感じ入る内容だが、全編、なるほどとうなづきながら、面白く読めました。

  • 2021-09-06 amazon p1992021/10/05 読了

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著者プロフィール

養老 孟司(ようろう・たけし):1937年神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。医学博士(解剖学)。『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。『バカの壁』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。同書は450万部を超えるベストセラー。対談、共著、講演録を含め、著書は200冊近い。近著に『養老先生、病院へ行く』『養老先生、再び病院へ行く』(中川恵一共著、エクスナレッジ)『〈自分〉を知りたい君たちへ 読書の壁』(毎日新聞出版)、『ものがわかるということ』(祥伝社)など。

「2023年 『ヒトの幸福とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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