(185)子どもの発達障害 誤診の危機 (ポプラ新書 さ 16-1)
- ポプラ社 (2020年2月13日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591166147
作品紹介・あらすじ
【その子、本当に発達障害ですか?】
【誤診が生まれる理由とは?】
信頼できるお医者さんは人気で予約がとれないならば、
ぜひ、この本を読んでみてください!!
「発達障害」について正しく理解し、
当事者やその家族、関係者が幸せな人生を送るために。
2002年の文科省の調査結果を境に、「発達障害」は一般的に知られるようになってきました。
一方で、受診者の増加とともに、過剰ともいえる診察、診断が見られるようになっています。
医師、専門家として多くの子どもを診てきた著者の診察室では、
通常学級に通うような子どもが、別の専門施設で「重度自閉症(スペクトラム障害)」と
診断されたというような、いわば誤診を受けた子どもが、2割ほど見られるといいます。
発達障害にまつわる近年の変化と、一般的な理解の隔たりを踏まえ、基本的な考え方から最新の知見までを伝えます。
【著者プロフィール】
榊原洋一(さかきはら・よういち)
1951年東京生まれ。東京大学医学部卒、お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、
同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長。小児科学、発達神経学、国際医療協力、育児学。
発達障害研究の第一人者。著書多数。現在でも、子どもの発達に関する診察、診断、診療を行っている。
感想・レビュー・書評
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■エピジェネティックス
・遺伝子は変わらないが表現型は変わる
・一卵性の双子を除いて顔をはじめとする身体のつくりがみな違う。その違いは約3万ある遺伝子(ゲノム)の組み合わせによって生じる
・遺伝子の本体はDNAで両親から遺伝子のセットを1組ずつもらう。もらった遺伝子2セットは身体を構成する全ての細胞の中にあり受精の時から一生そのままで変化しない
・遺伝子という設計図から実際に身体がつくられるときDNAによって書かれた遺伝情報は約20種類あるアミノ酸に翻訳されアミノ酸が鎖のようにつながって身体の構成成分であるたんぱく質が合成される
・稀にDNAが変化(変異)することがあるが、そうするとアミノ酸が変化し異常なたんぱく質がつくられる。これが遺伝病の原因
・遺伝病の原因となるDNAは受精前に精子或いは卵子の中で起こるのが普通でいったん受精すると一生遺伝子は変わらない
・ところが遺伝子は変わらなくても、そこから翻訳されてできるアミノ酸やたんぱく質が変化することが分かり遺伝子は変わらないのに合成されるたんぱく質が変わるという事実を研究する学問領域或いはその現象をエピジェネティックス(ジェネティックするは遺伝子工学という意)と呼ぶ
・このエピジェネティックスで一卵性双生児が両者とも自閉症を発症する率が100%ではないことや、第一子との出産間隔が短い第二子が自閉性症になる率が高いことが説明できる
■DNAも他の化学物質と化学反応を起こすことがある。DNAにはメチル基やアセチル基が結合できる。メチル基やアセチル基はDNA大きな分子化合物の表面と結合するだけなので遺伝子の基本的な構造は変わらないというおおきなぶんしかごうぶつのひょうめんとけつごうするだけなのでいでんしのきほんてきなこうぞうはかわらないところがメチル基やアセチル基が結合する場所によっては遺伝子がアミノ酸に翻訳される過程を妨害し翻訳されて合成されるたんぱく質の量や質が変化することがある。遺伝子本体は変化しないがメチル基やアセチル基が結合することによって遺伝子が変化するのとほぼ同じことが起こる。これがエピジェネティックスの研究によて明らかになった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
目に見えない発達障害の誤診の現状について述べている。
本当かな?と思うところもあったが、本書の通り診断を覆す柔軟さを取り入れることは今後求められるだろうと思う。誤診でなくとも、発達によって障害といわれるに相応しくなくなった子どもが発達障害と言われ続けるのはおかしい。
著者は発達障害を狭い範囲で捉えているようだ。
過剰かもしれない診断であっても、受診の背後には親の子育てに対する不安や孤独感があるかもしれない。支援につなげるための少々大げさな診断はやむを得ない部分もあるのではないか。 -
岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00603397
【スタッフコメント】
発達障害と診断されたり、その疑いがあると言われる子どもが増えていますが、本当のところはどうなのでしょうか。発達障害は怪我や病気のように見て分かるものではなく、判断の基準も不明確で、診察をする側の解釈や、される側の説明の仕方でも、診断が変わってしまいます。しかし、その診断によってその子の人生が大きく変わってしまうので、よくよく考えていかなければならない問題なのかもしれません。 -
発達障害は過剰診断されている?
そもそも発達障害という総称のくくりは適当でなくそれぞれ違う障害であるという基本的な話から丁寧に発達障害について解説していく。
誤診についてというよりはしっかりした解説により発達障害とは何かをちゃんと知る本ではあるが、一般の方だけでなく専門で関わっている人にも興味深い内容がけっこう書かれている。 -
今まで当たり前だと思っていた診断基準に対する認識を強く改める必要性を感じた一冊。
間違った認識が識者に指示されていたのがまだたったの60年前と考えるとまだまだ未解明な部分が多い分野。
だからこそ学び続けることが重要。 -
初心者には分かりやすく、発達障害の3類型が書かれている。そこにおける、社会、診断などの問題点も分かりやすく述べられている。
入門書として○。 -
「発達障害」の誤診・過剰診断が増えている!
・普通学級に通う、成績が中ぐらいの小学生が、友達に乱暴をしたことで発達障害を疑われ、地元の発達障害の専門家から「重度自閉症」という診断をつけらた
・発達障害という名称は診断名ではないが、誤って理解されている
・ギフティド児が発達障害と誤診されている
発達障害研究の第一人者である小児科医が臨床の現場で起きている誤解に危機感を覚え、警鐘を鳴らす
・発達障害とは「注意欠陥多動性障害」「自閉症スペクトラム障害」「学習障害」を総称した名称
・大人になってから注意欠陥多動性障害を発症することがある
・女性の注意欠陥多動性障害は男性に比べて「格段に少ない」のではなく、決して稀なものではない
など、基本的な知識から最新の知見までをまとめた一冊
巻末付録のDMS-5にもとづく診断基準(著者訳)は子どもを見取る参考になる -
特別支援教育に携わる人だけでなく、通常学級の担任、また、新規採用教員に、ぜひ読んでもらいたい。
保護者にも読んでもらい、医者の判断が必ずしも正解ではないこと、世の中にまだ理解が深まっていないことなどを知ってほしいが、「誤診かもしれないから、うちの子は大丈夫」というように捉えてほしくはない。
発達障害を抱えて生きにくさを感じているのは、発達障害をもつその子(人)本人であることを十分に知った上で、関わる人たちは対応していくことが必要なのだと、この本を読んで感じてほしい。 -
発達障害ということば、使い方が変わってきているためか、人によっての受けとめ方に大きく差があるように感じる。必ずしも知的障害があるわけではない。過去にはアスペルガーと呼ばれていた人も含めて自閉症スペクトラム障害、ADHD(注意欠陥多動性障害)、それからLD(学習障害)、これらの総称が発達障害であって、発達障害という診断名はないとのこと。それぞれにそれぞれの症状があり、それぞれの対処法がある。スペクトラムという幅を持たせた命名のためか、過剰な診察・診断が行われるようになっているという。私の体験からでは、明らかにADHDと思われる小5生がいたが、母親は認めたがらなかった。20年ほど前のことである。一方、5年ほど前には、アスペルガーと診断されたという中2生がやってきたが、学力は申し分なく、友人関係でも特に問題なく(特に友人をつくる必要もないので)、どちらかというと自転車で琵琶湖一周(ビワイチ)するなど、なかなかユニークな少年だった。素人判断はよくないが、いろいろな子どもを見ていると、この子は何らかのLDではないかとか、ADHDではないかと思えるようなこともちょくちょくある。それをわかった上で対応してあげられればいいのだが、なかなか多人数を相手にしていて、特に他に迷惑がかかるような場合には厳しく対処するよりない。それで、二次障害を生み出しているとしたらなんとも申し訳ないが、難しいところだ。本書を読んで、女子のADHDも結構あるということを知った。そう言えば思い当たる子もいる。それと大人の発達障害も思い当たらないでもない。