ライフ (ポプラ文庫 お 12-10)

著者 :
  • ポプラ社
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本棚登録 : 638
感想 : 56
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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591170472

作品紹介・あらすじ

快速が停まらない街、しかも駅から徒歩十五分。荒川沿いに立つ築三十年のアパートに井川幹太はひとりで暮らしていた。学生時代も、就職してからも、会社を辞めてからも、ずっとおなじ部屋でのひとり暮らし。やりたいことも見つからぬまま、気がつけば二十七歳になっていた。父は高校生のときに他界、母は再婚して別の家庭をもっていたから、いまの幹太の生活は自分ひとりだけのもの。コンビニでアルバイトをしながら、たまに結婚式の代理出席のバイトも入れる以外は、これといって何もない日々。そんなある日、上の部屋に戸田という騒がしい男が引っ越してきて、奇妙なつきあいがはじまる。図々しく遠慮のない言動を警戒していたが、自分の過ちを隠そうともしないあけっぴろげな戸田とその家族のすがたに、幹太は次第に惹かれていく。――。未来に何の期待も持てずにいた青年が、明日への一歩を踏み出すまでを描いた胸に迫る青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • 快速の止まらな止まらない駅
    アパートで暮らしている青年
    上の階に越してきた人(ヤンチャくん)の足音がうるさくて困っている。

    アルバイト暮らし、何か起きそうな起きなそうで起きたり「日記」を読んでるような感じでスラスラ読む。

    「スタートを切れてない様な状態」の話とかグッと心に響く。スタート…きれてんのかな、私は…

    「戸村飯店」でもそうだったんですが、派手ではない日常系を読むと登場人物を実際の知人に置き換えて読んでしまいます。
    戸田さん(ヤンチャくん)に近い人がいて、ほぼほぼその人で想像してしまった。荒いけど暖かい人。お調子者。

    随所に名前についての話が出てくる。
    これを読んでから働いてる職場の人達とかの名前の由来を想像して「いい名前だなぁ」とか呟いたりしてる。

    「強く押し付けない感じの物語」と言うのが新鮮で、それゆえに「死」とかが戦争や犯罪モノとは別のすごく身近なモノとして描かれている。この作者さんの他の作品が読みたくなってきた。

    • ikezawaさん
      ほぼ1日で読み終わったの、なんかもったいないわ(貧乏性)
      ほぼ1日で読み終わったの、なんかもったいないわ(貧乏性)
      2021/07/14
  • 快速の止まらない駅にあるアパート筧ハイツに8年も住んでいる井川幹太27歳。
    大学を出て、勤めていた会社を辞め、今はコンビニバイト。
    やりたいことを見つけられないまま、宙ぶらりんのまま。
    大学時代の友人たちはみんなアパートを出ていった。
    そして、真上の新しい入居者はがさつな人で、おまけに子どもまで訪ねてくる。

    淡々と過ぎていく日常。特別なことは何も起こりそうにない。
    でも、何でもないことが楽しいような気分になってくる。
    会話が多くてさっくりと読める。けど、人との関わり、ふだんの何気ない会話の大事さに改めて気づかされる。

    上の部屋の戸田さんと、離れて暮らす奥さんと子どもたち。
    そして、夜中にゴミ集積場で言葉を交わしたお隣さんや、大家さんの隣に住む高校生、喫茶『羽鳥』のおばあさんなど、幹太の周りに住む人たちがみんな温かい。

    出会いと、次第に訪れる別れも素直に受け入れて、幹太自身も新しい一歩を踏み出していく青春物語だった。
    小野寺さんの描く、さりげなさの中に隠された奥深さや、この穏やかな空気がとても好きです。

  • 著者らしい優しいストーリー。

    平凡な生活の中でも実は色々と
    起きていて、
    その色々なことに少しずつ影響を受けて

    人は成長していく。

    何かいいことないかなぁと言ってる時にでも
    自身の捉え方で、変わることがあるんだなって
    今更ながら教えてもらった気分です。

  • 小野寺さんの作品は気持ちをニュートラルにしてくれます。
    凹の時はもちろん0に戻してくれますし、凸過ぎている時は穏やかな気持ちになります。良い意味で。
    そして、相変わらず淡々と読める会話調の文体が読みやすくて心地いいです。
    内容も他作品と同様に大きな波のある展開はないですが、そこは全く気にならないです。
    大きな展開はなくても、カンちゃんの日常が気になってページをめくる手が止まらず一気読みしました。

    あと、内容ではないですが、ノンっという缶ビール同士を当てる音に妙に納得。
    中身が入ってる缶ビールは「カンッ」よりも「ノンっ」じゃんって気づきました笑

    「いえ」を読んだ後、平井駅を聖地巡礼しましたが、これは再訪決定ですね!笑

  • 穏やかな一日に、のんびり読みたい。
    小野寺さんの本はそんな気分にさせてくれる。

    ライフのタイトル通り、どこにでもいる青年の平凡な日常が穏やかにゆったり過ぎていく。

    ちょっと心が疲れた時に、小野寺さんの本って読みたくなるんですよね〜(^ー^)

  • 難しいなぁ、感想が。
    ドラマチックな出来事は何も起きない。
    けど、なぜか読み進めるのを止められない。
    なぜかほっこり。

  • とにかく「ウィンウォーン」っていうインターフォンの音の表現がすごい好き。
    小野寺さんの作品は読みやすく人間の何てことない日常の場面に共感できることが多く含まれていて読んでいてほっこりとなんだか安心する気持ちになれます。
    人との出会いはいつだって奇跡的で縁って大事だなと思います。
    人との繋がり関わりの中でちょっとした出来事が今の自分に良くも悪くも影響して日々の自分が形成されていく。
    かけがえのない日常を大切にしようって改めて感じます。

  • ☆4

    自分には何もないと思っていた幹太が、同じアパートに住む隣人たちの温かさに触れ、「生活」の輝きを知る物語。

    ほっこり温かい気持ちになりたくて、小野寺史宜さんの作品は定期的に読みたくなります(*´˘`*)
    今作でもたくさん癒されました❁⃘*.゚

  • 2019年5月ポプラ社刊。書き下ろし。2021年7月ポプラ文庫化。大学卒業後2年勤めた製パン会社、1年経たずに辞めた家電量販店。今はコンビニのバイトを続ける27歳の幹太が、大学時代から住んでるワンルームマンションの生活で、お隣りや上階の住人、コンビニの同僚、お客さん、喫茶店の店主、母とその再婚相手との関係の中で、確かな人生を作って行く。どうというところのない小野寺さんお得意の話だが、生活から生まれる率直な思いが、面白く楽しかった。

  • 他の人の背景を知ることで、優しくなり、成長していく姿がとても良かったです。

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著者プロフィール

一九六八年千葉県生まれ。二〇〇八年『ROCKER』で第三回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞し同作で単行本デビュー。著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、『ひと』『ミニシアターの六人』『レジデンス』『タクジョ!』『銀座に住むのはまだ早い』『君に光射す』などがある。

「2023年 『片見里荒川コネクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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