ぼくたちはまだ出逢っていない (teens’ best selections 62)

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591174999

作品紹介・あらすじ

イギリス人の父親と日本人の母親を持つ中3の陸は、バスケ部の豪大から何かと絡まれ、暴力を受けている。
一方、母親の再婚を機に岡山から京都に引っ越してきた中2の美雨は、学校にも、家にも、居場所がなく、京都の町をさまよい歩いては時間をつぶす毎日。いつものようにさまよい歩いていたとき、ショーウインドウに飾られた器が月明かりに一瞬きらめくのを見た美雨は、その美しさに心奪われる。そのときの胸の高鳴りが、美雨を思わぬところに誘っていく……。
それぞれに自分のアイデンティティを探すなかで辿り着く、「漆」がつなぐ陸と美雨、ふたりの出逢い。
京都を舞台に、伝統工芸の「漆」「金継ぎ」を扱いながら、子どもたちを取り巻く社会問題をも描いた青春小説。

***************

【目次】
1.おれって、何者?
2.あたしって、自意識過剰?
3.「バス」
4.骨董屋
5.十円ハゲ
6.「月光」
7.蛇の木
8.大也
9.「バス」2
10.漆芸修復師
11.傷跡
12.ペイン、ペイン、ゴー アウェイ
13.傷だらけの木
14.出会い
15.なんか、おれ。負けてる気がする
16.マグカップ
17.勉強するのはなんのため?
18.合格祝い
19.いさかい
20.ありのまま
21.ホームパーティー
22.つなぐ
23.萌芽更新

感想・レビュー・書評

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  • “金継ぎ”のことを何かで知って、小説で扱ってるのはあるのかな?と探してティーンズ向けのこの本を手にとりました。

    迷いや孤独を抱える多感な年頃の中学生3人が主人公。”金継ぎ”という技術、職人と出会ったことがきっかけで新たな道が拓けていく。「ありのままを受け入れ、傷ついたその姿に美を見出す」「修復してもう一度命をふきこむ」長く受け継がれてきた金継ぎの真髄を直感的にすごい!と感じ、関わっていく中学生達の素直さが愛おしい。

  • 児童書。
    親の再婚、引っ越し、闘病、いじめ…登場人物の中学生がそれぞれ悩みを抱える中、「金継ぎ」が三人をつなぎ合わせ、乗り越えていく。
    日本の伝統工芸である漆、金継ぎというものをテーマにもってきたところがよかった。
    古いものを大切にすると同時に、新たなものも生み出す感覚は、確かに人間関係にも大事だなと思った。

  • 金継ぎの、「割れたものを割れた形も尊重して修理する」という伝統技能が、傷ついた心が元通りになる姿に抽象化されるのは使い古された表現であると感じます。
    金継ぎは金継ぎだから美しい、で良いと思うんですよね。もっとストイックに金継ぎの世界を表現してくれて良かったんじゃないかと思ってしまいます。
    漆を採取する時、木に畏敬の念を持つのはわかります。でもそれを自分に当てはめて抽象化するのが鼻白む。漆が傷つくのと人間が傷つくのは違いすぎるよ。

    批判から垂れ流しましたが、金継ぎをテーマにした小説は初めて読んだので、少女が京都の街で器に出会う様や、骨董作品の表現をうっとりと楽しませていただきました。金継ぎの世界をもっと読みたいなぁ〜。

  • クラスメートに執拗な暴力をふるわれている中3の陸
    イギリス人の父、英会話の幼児教室講師の母、人懐っこい弟、家族との暮らしはあたたかい
    そして、陸の輪郭を描いてくれる親友の樹がいる

    再婚した母と、再婚相手の住む京都に引っ越してきた中2の美雨
    とつぜん出来た義父と1つ年上の兄に気をつかうばかりで馴染むことが出来ない
    学校ではサッカー部エースの兄の妹として目立たないよう息をひそめて過ごしている

    美雨は月の金継ぎをほどこされた器と出逢い、陸は漆と出逢い、樹は一緒に歩いてくれる女の子と親友を通して出逢う


    ○自分も『世界!ニッポンに行きたい人応援団』のファンで金継ぎの回見てました。ので、金継ぎの物語と聞いて思いだしていたら、よもやよもやでした。作家さんが素敵と出逢うと物語が生まれちゃうのか
    ○最初、静かな冷たい息をひそめるような物語の始まりだったのが、「出逢って」から目線が前を強く向いて、陸も美雨もわだかまりを振り払うように歩き出した
    ○迷っても間違っても壊れても、というメッセージが届くといいな

  • 思っていたよりがっつり漆の話だった…。表紙とタイトルからは想像できなかったけど、途中で表紙に金継ぎが表されているのを発見。素敵なデザイン。
    壊れても修復できる。修復したからこその美しさがある。最後、三人が笑っててよかった。

  • 陸(りく)はイギリス人の父、日本人の母を持つ中学3年生
    美雨(みう)は母の再婚相手の家で暮らす中学2年生

    同級生からのいじめに悩む陸と、家庭に居場所がないと感じる美羽

    それぞれにアイデンティティを探してさまよう2人を「漆」がつなぎ……

    《京都を舞台に、伝統工芸の「漆」「金継ぎ」を扱いながら、子どもたちを取り巻く社会問題をも描いた青春小説。》──出版社サイトより

    章ごとに陸と美雨、それぞれの視点で交互に語られる全23章
    各章がさほど長くないので、テンポよく物語が進行して読みやすい

    ・いつだって、おれはそばにいる

    ・ありのままを受け入れ、傷ついたその姿に美を見出す。

    ・たとえどんなにバラバラに見えるピースでも、ひとつになると、こんなに美しい姿に生まれ変わることができるんだよ。

    まわりのことばを素直にうけとめる中学生の瑞々しい感性がすがすがしい

    《伝統技法「金継ぎ」に彩られた出会いと修復の物語》──帯の紹介文

    YAで定評のあるポプラ社teens' best selectionsレーベルから、2022年10月刊

  • なんとも清々しい。いじめや親の再婚、体の不調など、見た目は元気そうに見えて、心にはいろんなことを抱えて悩みながら日々過ごしている子たちが、古くから伝わる伝統文化に触れることで、自分の抱える人生の課題を乗り越えるきっかけを掴み、成長していく。子どもらが抱える悩みも共感できるものであるし、成長のきっかけとなる日本古来の伝統技術、漆を使った器の修復作業にも興味深いものがあった。古くからあるものがその技術だけでなく、多くの人の心を通じて大切に受け継がれていくさまには若い世代の方にも感じることがたくさんあると思う。

  • さくさく読めて、面白かった。
    中3の陸と樹(と大也)、中2の美雨。自分とは何か、家族と友情と金継ぎの話。
    美雨は金継ぎに出会ったことで、家族との関係や人との縁を考えるきっかけとなった。
    陸と樹の進路といじめと友情。
    どこで3人が出会うのかとおもいきや、漆がきっかけでこの3人が繋がった。

  • いじめに悩むミックスルーツの陸、そんな陸の心の拠り所である樹、母の再婚によりできた新たな「家族」に居場所を見つけられない美雨。
    それぞれがそれぞれの形の傷を持つ「ぼくたち」を繋ぐのは『金継ぎ』でした。

    最近でこそ、オシャレでサステナブルな趣味としてスポットが当たることも増えてきましたが、やはりまだまだ渋いイメージのある「金継ぎ」。
    そこに中学生を掛け合わせるという、なかなかに特殊な角度から切り込んだ作品でしたが、伝統工芸の奥深さに爽やかさと甘酸っぱさが薫る良作だと思います。振り返れば首を違えるほど思春期が遠のいた大人には、そこに一滴の寂寥感も加わってしまうほどに「可能性」というものの眩しさも感じました。

    壊れたカケラを繋ぎ、修復した傷に美を見出す日本独自の精神を、人と人、自分自身に照らし合わせる構図も、児童書としてかなり効果的な表現で、子どもたちの胸に刺さりやすそう。
    金継ぎというものの存在を理解して表紙を見ると、なるほどと思わせるデザインになっていて素敵です。

    何年か前に国際平和デーの式典で、国連事務総長が日本の金継ぎを引き合いに出し、世界で起こる紛争による亀裂を埋めるためにその理念を用いようと言っていました。そんな風にも表現できる伝統技巧を日本人として誇る気持ちも育ってほしい。

    ルビしっかりめで、ストーリーや文章は小学校高学年からイケるかなと感じますが、実物の金継ぎ作品を見たことのない子は想像だけでは実像に結びつきづらいかも。個人持ちのタブレットで調べさせてもおもしろそうです。

    天平堂も衣川さんも実在のモデルがあるようで、漆のことや後継者問題と一緒に、中学生にはその辺まで興味を派生させてほしいと思います。

  • 金継ぎに魅せられた中学生の美雨と漆に心を奪われた中学生の陸を軸に物語が展開していく。
    それぞれ家庭や家族形態からくる問題を抱えている。

    漆と言うと触るとかぶれるもの、という子どもの頃からのイメージしかなかった。
    金継ぎについても具体的には知らなかった。
    漆の樹液を採取された後の木に思いを馳せ、そこに自分の境遇を重ねてしまう陸。
    痛みを知る者だけが感じることができる情景かもしれない。
    中学生が主人公だが全体に静かに物語が進んでいく。
    京都の古い町並みも懐かしい京都弁から浮かんでくる。
    陸の親友の樹も含め、問題を抱えながらも前へ進もうとする中学生の姿が爽やかで読み応えがあった。

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著者プロフィール

児童文学作家、日本児童文学者協会会員

「2017年 『ぼくらの山の学校』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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