すきまのおともだちたち

著者 :
  • 白泉社
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本棚登録 : 535
感想 : 101
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  • Amazon.co.jp ・本 (145ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784592750109

作品紹介・あらすじ

「過去の思い出って淋しいのね」旅先で出会った勇ましい女の子と私との、いっぷう変わった友情の物語。

感想・レビュー・書評

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  • ちょびっと難しいファンタジックなお話。

  • 大人のための童話。
    人生の出来事も、すきまに落ちて「小さなおんなのこ」と過ごした時間も、「過去の思い出」になってしまう。
    でもそれらは続いていく。
    たくさんの小波を乗り越えて。

    挿絵が、物語をさらに美しい世界へ導いてくれる。

  • ものごとを、あるがままに受け取ることの大切さを教えてくれる。
    この先、人生に迷って、どうしたらいいかわからなくなったとき、またこの本を読みたい。そうしたらきっと女の子が教えてくれる。
    「そんなの、生まれたばかりのへびの赤ちゃんにだってわかることよ」と。

  • 『ホテルカクタス』のようなメルヘン。劇的なエピソードはなく、淡々と進むけれど、全体としてとても優しい。

  • 私は当たり前に過去の思い出がある今に生きている。だからこそ、目の前の事象をより複雑に、困難に捉えてしまう。お皿が言った「私たちを本当にしばるのは、苦痛や災難や戸棚ではないのよ。幸福な思い出なの」という言葉によって、そんな自分をはっきりと自覚した。

    「そんなの、生まれたばかりのへびのあかちゃんにだってわかることよ」
    自分の中で複雑化する問いに頭を抱えてはこの本を読み返し、おんなのこの言葉に反省しては過去の思い出の上を生きていく。

  • 新聞記者として働く若い女性が、すきまに滑り落ちるように女の子とお皿のいる場所へ飛ばされた。
    女の子とお皿は彼女をお客さまとしてもてなしてくれるが、今までいた世界とはすこし勝手が違うみたい。数日かけて馴染んできたところで唐突に彼女は元の世界に戻される。

    その後も数年おきに”すきまの場所”へ飛ばされる彼女。
    女の子とお皿はまったく変わらず彼女を受け入れてくれる。彼女だけが年を重ね、やがて孫もできる。彼女は誰にもその場所のことを話さなかった。

    女の子は思い出を持っていなかったが、彼女が何度も訪れることで過去の思い出を持った。思い出は素敵なものに見えたが、寂しくて、悲しくて、じれったくて、絶望的なものでもあった。

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    以前はよくテレビゲームで遊んだ。ロールプレイングゲームの町にいるモブキャラは基本的にいつでも同じことを喋る。どれだけプレイ時間が増えようが、そのゲームをプレイするのが何年かぶりであろうが変わらない。「やあ、ここは〇〇の村だよ」
    同じことしか話さないモブキャラを怖いな、と感じることもある。この人は永遠に同じセリフを言い続けるのか、と。

    ”すきまの場所”にいる女の子とお皿は年をとらない。ずっと変わらない。その場所を訪れる女性だけが年を重ねて、容姿もすこしずつ変わっていく。それでも彼女たちは友人だ。

    変わることや、変わらないこと。
    思い出を持たないことと、過去の思い出を持つこと。

    どちらも素敵で、どちらも悲しさを含んでいる。

  • メインとして登場するのは「おんなのこ」だけど、タイトルは『すきまのおともだち「たち」』と複数形。
    あの世界の全てが、彼女にとってはおともだちになったのかもしれない。
    いつ行けるかわからないけど、たまに旅に行くことができるあの町が。

  • 挿絵と文章がひとつになって、柔らかくて優しくてきらきらとしていてとても素敵な世界だな。

  • 逃避願望

  • 初めての江國香織さん。
    絵本のような、童話のような。
    優しく、不思議なお話。
    何かの拍子に落ちてしまうかもしれない「すきま」
    こんなに優しい「すきま」ならどんなにいいだろう。
    変化のない、緩やかな優しい世界。
    女の子は女の子のまま。
    過去の思い出とは、淋しくもあり絶望的でもある。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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