世界史の中の日本 本当は何がすごいのか

著者 :
  • 扶桑社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594068295

感想・レビュー・書評

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  • 2023/10/20:読了
     なんだか、水で薄めた感じの内容だった。
     やっぱし、この人の本は、埴輪が一番おもしろいなー

  • 読みやすさ★★★
    学べる★★★★★
    紹介したい★★★★★
    一気読み★★★★
    読み返したい★★★★

    まさにタイトルの通り、世界史の中の日本史。各時代の世界情勢を俯瞰し、また当時の日本の視点から世界を見つめる。「世界史」と「日本史」を分断させない歴史の切り取り方が見事。中高生の必読書に推薦したい。歴史嫌い、日本嫌いにさせるような日本の教科書は、田中教授の本に取り替えるといい。縄文時代の先史から近代まで、ざっと紹介されており、歴史好きなら田中先生史観を他の著書で学びたくなるはず。
    コラムに度々登場する、支倉常長については全く知らなかった。当時の日本人の世界を学びたいという渇望、逆に外国人の日本に対する関心の高さ、双方の交流の記録を、なぜ日本では広めようとしないのか。(自虐史観を持たせたい歴史の教育上、都合が悪いのだろう)
    明治維新がイギリス(ユダヤ人)によって起こされたという見方は、西鋭夫氏、林千勝氏、副島隆彦氏も提唱している。お金の流れは歴史の流れ。
    近代は産業が発達し歴史上最も豊かで発展しているように受け止められているが、決して精神的には高位ではない。まさに。
    そして、日本はその他の国にはない、歴史が一貫した唯一の誇るべき国。恵まれた島国に生まれた日本人(性善説)に、一神教の精神(性悪説)は決して馴染まないのだ。
    日本人に自信を取り戻させる本。

  • 日本の歴史と世界の歴史を対比して綴ったもの。

    美術が専門だけあって、美術と支倉常長については勉強になった。

  • 極東の小国の日本は、世界の大きな潮流からは離れた歴史を持っていると思いがちですが、実際には時代の流れを変えるきっかけも作ってきたのだそう。

    そもそもの人間観ですが、世界各地に存在する神話の中でも、神の一部が人間になったという日本の神話は、人間への肯定的な共感があるのが特徴で、その点が西洋、中国と違うそうです。

    死ねば神になると考えている日本人の宗教観は、人間は原罪を背負って生まれてくるというキリスト教の考え方と対比的。
    日本人は、人間は、悪というものを持たない存在であるとする神道の考え方に支えられているそうです。

    アートの面では、ジャポニズムと『ニヒリズム』の思想との関係について言及されていました。
    ジャポニズムに影響を受けたフランスと、日本の美術を深く受容しなかったドイツ。そこから自然の豊穣さを学んだフランスとは異なり、ドイツは『ニヒリズム』の思想を強く打ち出すことになったのだという意見が興味深いです。

    また、オランダの17世紀の隆盛は、日本によるものだったとのこと。
    日蘭貿易で獲得した日本の銀で、財政的基盤固めをしたそうです。
    日本幕府が銀の輸出を停止した後は、大きな財源を失い、オランダは急速に衰退していったとのことです。

    世界史という全体像の中で日本をとらえることにより、時代の流れが一層分かりやすくなりました。

  • こういうのを教科書にしたほうがいいんじゃないのかなと思う。世界史がもっとわかりやすくなると思う(少なくとも日本史好きは世界史がわかりやすくなると思うし)。

  • 縄文や弥生時代を文明とするには、
    私のなかでは、クエスチョン?マークなのだが、世界史と言うのが、西欧諸国から見た世界史、というのには納得した。自分が歴史を習った中で疑問と思っていたことへの答えがあって納得した。
    日本の歴史から世界史をみる、というのはなかなかおもしろかった。

  • 高校時代に世界史と日本史を30年程前を勉強しましたが、学習した時期も異なっていたこともあり、お互いの関係を殆ど意識することなく、テスト対策に追われていただけの記憶しかありません。

    世界で重要な出来事が起きているときに、日本はどのような時代だったのかを多元的に学ぼうという意識がありませんでした。歴史を勉強ではなく興味で見ることができるようになって初めて、この本の主題である「日本人の視点で世界史を見る」ことができるようになったと思います。大人になってからの歴史は楽しいですね。

    世界と日本の歴史を比べることは、どちらが良い悪いというのを語るのではなく、お互いにどのような経緯があって現在に至るのかを知ることであり、お互いの考え方の根本を知る上で大切だと思います。

    最近は歴史を、研究者以外にも分かりやすい視点で述べてくれる本が増えてきたので嬉しい限りです。

    以下は気になったポイントです。

    ・年代史的に、日本でこういう事件が起きていたときに、世界ではこんなことが起きていたということを並列するのではなく、世界の動きが日本に与えた影響、世界の動きと比べて、日本に見られる際立った違いや特徴が、日本から見た世界史として書かれるべき(P13)

    ・ハンチントン区分を宗教の観点から見れば、1)中華文明:儒教・道教文化圏、2)日本文明:神道基本とした神仏習合文化圏、3)ヒンドゥー文明:ヒンドゥー教、4)イスラム文明:イスラム教、5)西欧文明:キリスト教、6)ロシア正教文明:キリスト教、7)ラテンアメリカ文明:キリスト教、8)アフリカ文明:イスラムとキリスト教の混淆(P17)

    ・人間観に決定的な影響を与えているのは、自然条件(P20)

    ・徳川幕府がオランダと門戸を開いたのは、プロテスタントだから、キリスト教布教を先兵として侵入し、侵略・征服し、収奪するカトリック勢力との違いを幕府が見抜いていた(P29)

    ・自然採集経済を基本とした自然状態とは、人間にとっては事が起きない、つまり戦争が起きないということの現れであって、不幸な状態だと考える必要はない、都市が始まる以前の世界のほうが平和であった(P33)

    ・農耕が開始されたことは、これまでの獲得経済から、自分たちで生産する生産経済に転換した、これは自然の豊かさの中で生きることができなくなった、農業革命は地球環境破壊の出発点(P34)

    ・1992年、青森県三内丸山遺跡が発掘された、これは紀元前5500-4500年前にかけて栄えた縄文時代の集落跡、狩猟・採集経済が行われ、集会場や神殿があった(P37)

    ・インダス文明は成立した場所で、舗装道路・下水設備・大浴場等が完備されていたが、流域の樹木が乱伐されたことで洪水が起きて、紀元前1800年頃に衰亡した(P39)

    ・古代文明によってつくられた様々なモニュメントが、実は、人工的につくり出された自然である(P43)

    ・日本の神話では、天地の中から生まれた伊邪那岐(いざなぎ)の左の目から天照大神、鼻から須佐之男命(すさのおのみこと)、神の一部が人間になった、中国の盤古神話では、盤古という怪物の体にたかっていた虫から人間が生まれた(P47)

    ・一神教は、基本的に移動(ゲルマン、中国、モンゴル等)する民族がつくり出すもの、その民族が土地との強固な結びつきを持たないので、土地やその自然に対する依存が少なくなる。争いが生じるので言葉が重要になり、これが一神教がつくられる基本になる(P51)

    ・民族が移動するために、土地にまつわる神話が断絶する、日本の場合は同じ土地に暮らし続けているので、その神話と歴史が連続する(P57)

    ・朝鮮は一つにまとまらず、4世紀頃には、高句麗・新羅・百済に分裂、日本と密だったのは百済(P59)

    ・朝鮮は、日本統治下でハングル語綴字法(ていじ)法統一案が考案され、朝鮮人が朝鮮語の発音通りに文字を書けるようになった(以前は正式文書は漢文で操れるのは両班階級)、ハングル語が当然となっている土台は日韓併合時代に築かれた。(P63)

    ・ペルシアの侵攻に対して、アテネを中心に200余りのポリスが、デロス同盟を結成した、これに対してペロポネソス半島の諸ポリスは、ペロポネソス同盟、これで敗れた(紀元前431-404)アテネは、ギリシア世界が崩壊した(P74)

    ・出雲地方にあった勢力(西日本を中心にした「海人」)が、大国主命を中心に支配していた、それに対して東国の「天照大神」を拝する縄文時代からの勢力が九州と結んで、交渉により国譲りされた(P93)

    ・徳川家康が天下を制しているが、内部は各藩に分かれている、この形の上に新道という宗教の精神性をい備えた権威である天皇がいる、この天皇の存在により日本の統一は保たれる(P105)

    ・聖徳太子は皇子という身分だったので、基本的には神道の祭司、太子が仏教を取り入れたことで、神道の中に仏教が入っていったというのが重要(P112)

    ・イスラム勢力であるサラセン帝国は欧州を侵攻したが、これに対してフランク王国のカール・マルテルは、73年にトゥール・ポアティエの戦いで勝利し、これから欧州が力をつけていった(P121)

    ・イスラム世界では、科学・数学・医学・天文学等が発達し、グレゴリウス暦よりも正確な、ジャラリー暦もつくられた(P127)

    ・1942.2.15、イギリス領のシンガポールにおいて、パーシバル将軍率いるイギリス連合軍は、日本陸軍に降伏、これによりイギリスの世界制覇が最終的に終止符をうつ節目になった、これ以後イギリスは東洋から撤退した(P134)

    ・古いものと新しいものの共存・共立が、日本の歴史の継続性、文化の継続性を保障している、これが中国と日本の最大の違い(P143)

    ・南ドイツの3万キロくらいだった銀が、1570-1630年の間に、アメリカ大陸から20万キロが入ってきたことで欧州が豊かになった(P192)

    ・最初にイギリスと闘った薩摩、それから4国艦隊と戦った長州の両者が、一番敏感に植民地主義に危機感を覚えた(P211)

    ・オランダは、日蘭貿易によって獲得した日本の銀によって、17世紀の隆盛を築き上げたといっても過言ではない、1668年に幕府がオランダ船による銀輸出を停止すると、オランダは急速に衰退した(P236)

    2013年9月8日作成

  • 従来の世界史は西洋史であり戦争史。日本人の立場と視点で見直すと。神道は多神教の典型。ピラミッドより規模が大きい古墳、文字はないが文化はあった。キリスト教を布石として侵略、銃があり、鎖国で守った。大戦は植民地主義・帝国主義との戦い。

    世界史と日本史を、分けるのでも、併記でもなく、相互の影響とともに記述されるのは、新鮮味がありました。

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著者プロフィール

昭和17(1942)年東京生まれ。東京大学文学部仏文科、美術史学科卒。ストラスブール大学に留学しドクトラ(博士号)取得。文学博士。東北大学名誉教授。フランス、イタリア美術史研究の第一人者として活躍する一方、日本美術の世界的価値に着目し、精力的な研究を展開している。また日本独自の文化・歴史の重要性を提唱し、日本国史学会の代表を務める

「2024年 『日本国史学第20号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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