暗鬼夜行

著者 :
  • 毎日新聞出版
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本棚登録 : 357
感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620108490

作品紹介・あらすじ

中学校一の文才少女の〈盗作〉疑惑が引き起こす教師、生徒、保護者たちの狂騒劇。
エンタメ小説の旗手がおくる、震撼の学園ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 元作家志望、現在中学の国語教師・汐野。学校では読書感想文コンクール選考の責任者となっている。代表となった生徒の作品が盗作だとSNS上で投稿された。盗作なのか悪戯なのか、校長・他教員、生徒家族、地方議委員まで巻き込み波紋は広がる。
    教育現場だけでなく、地方政治の問題、心の闇まで広がっていたよ、それにそれぞれのダークな部分思いっきり出てた。
    物語ではあるものの、学校の先生は改めて本当に大変だなあと思ったのと、問題の中学生が怖かったなあ。汐野の周りは歪んだ人ばかり。そんな人たちが汐野を奈落に突き落とす、げっそりしながら読み終えました。『山月記』よく読んでおくといいかも。

  • 市立駒鳥中学校は、一学年に一、ニクラスの小規模校で、目立ついじめも暴力事件もない平凡な中学校。
    作家の夢に挫折し国語教師となった汐野が、文芸部の顧問として指導し、最優秀作として全日本コンクールに出品した読書感想文が、過去の優秀作の盗作だという告発のLINEが流れる。

    感想文を書いた生徒が教育委員会の教育長の娘だったこともあり、悪質なイタズラとして片付けようとした学校側の思惑をよそに、またあらたなLINEが投稿され、やがて保護者たちを巻き込んで問題は大きくなっていき…


    月村了衛さんが中学校を舞台にサスペンス?と意外だった。
    読んでみれば、中身は中学生の話ではなく、夢破れて傷ついた自尊心と密かな野心を腹の中に育て、なお疑心暗鬼に陥って苦しみのたうち回る男の姿。

    うーん、ハッピーエンドでもない。爽快感もない。
    でも、やっぱりヒリヒリした緊迫感で、一気に読まされてしまった。

    月村作品の多くに登場する、寡黙ながら強い信念に貫かれた主人公…というイメージとは全く違う、汐野。
    ちょっと嫌な男だけれどごく普通の男が、とことん悪い巡り合わせで悪意を一身に浴びて苦しみ、悲痛な叫びだけが残るラスト。
    なんともやるせないような、もうすぐ人が獣に変じるのを見てしまいそうな。

    国語の授業シーンとして『山月記』が使われ、李徴の言葉が汐野を苛むように繰り返し挿入される。
    というか、そのために中学校を舞台にしたんじゃなかろうか。


    ところで、書道部顧問の塙が探偵役になって、哀れな汐野をギリギリでソコソコ助けたりするのかと思ったら、大ハズレでした〜。
    ははは、低俗な予測でスミマセン。

  • 人との付き合いが怖くなりました。
    高校教師、汐野に問題が有るのか?
    周りに居る人間が問題有りなのか?
    自分の高校時代を思い出すと単純だったなぁ~(笑)

  • SNSに投じられた学校代表の「読書感想文」盗作疑惑。
    渦巻く疑心が人の心の暗鬼を呼び覚まし、一人の教師を奈落の闇に突き落とす。
    エンタメ小説の鬼才が教育現場の圧倒的リアルに迫った学園震撼サスペンス!

    妙にリアルな描写もあるにはあるが、やはり絵空事であった。版元が青少年読書感想文全国コンクールの主催者の出版部門というのは、意図的?

  • 「土漠の花」がスケールが大きく面白かった。
    反してこれは中学の読書感想文の盗作がテーマ
    教師 教育委員会 役所 そして生徒
    それぞれが絡まりドキドキするミステリー
    とても面白かったのだけれど
    うーん 共感しにくかったなあ
    あまりにもエゴとエゴ

    汐野の生い立ちとか家族は?
    キャラクターが出来上がったわけが知りたいと思った
    登場人物の名前とキャラクターがごちゃごちゃになってしまった

    それにしても 中学生 こわー

    ≪ スマホから 疑心暗鬼が 一瞬で ≫

  • 読書感想文の盗作疑惑を巡る校内狂騒を舞台設定にして、現代社会の様々な問題点を鮮やかに浮き彫りにしているが、秀逸なのは小説家を希望しながらも認めらず教師に甘んじている主人公の心情を「山月記」で、登場人物たちの闇や暗鬼の姿を「藪の中」で、代弁することによってより深く抉っているところだ。読み易く書かれているが、深い洞察力によって透徹されていることが行間から滲み出ている傑作。

  • なんだろう、このあと一歩感は。スマホとかLINEを登場させてる割にはその特性を活かしきれておらず無理に時代に合わせようとしてる?動機がぶっ飛んでいて推理の斜め上だった。

  • 月村さん、新境地に挑戦⁈読書少年だったのは分かるが、舞台を中学校にしたのは失敗。いくら何でもこんな中学生は、非現実的。誰もが心に鬼を飼っているけど・・・

  • 突如、SNSに書き込まれた読書感想文の盗作疑惑。これを皮切りに雪だるまが下へ転がり大きくなるかのように次々と問題が発生します。果たして、犯人は?主人公は良い方向へ進むのか、悪い方向へ進むのか。

    月村さんというと、アクションシーンの描写が秀逸という印象でしたが、この作品では、そういった描写はなく、新たなジャンルを開拓したように感じました。

    読みやすく、犯人は誰なんだろう、次どうなるんだろうと続きが気になってしまい、あっという間に読んでしまいました。とにかく次々と展開が変わっていき、世界観の魅惑に取り憑かれました。

    将来、先生を志そうとしている人にとっては、この作品を読まない方が良いというくらい、教育現場での裏側がリアルで、大変さが窺えました。責任を背負いたくないが如く、先生達の陰の部分が垣間見れました。
    また、登場人物たちの欲望が渦巻いていて、読んでいてイライラ感が募りました。
    特に焦点となるのは盗作疑惑事件なのに、陰謀論とか関係のないことに人々が踊らされていて、深読みしすぎとか論点がズレているとか思ってしまいました。そういった点では、この時世と共通しているのかなとも思いました。

    真相が明らかになるにつれ、段々と登場人物の仮面が剥がれ落ちていく様は、読んでいて開いた口が塞がらない感覚で、呆然としました。醜さ全開で面白かったです。
    一応、盗作疑惑事件は解決しますが、その後の末路は、人それぞれで、複雑な心境になりました。良い方向へ進む人もいれば、悪い方向へと進む人もいて、主人公は果たしてどっちなのか。ぜひ読んでみてください。改めて教育現場は恐ろしいと感じさせてくれました。

  • 初見の作家である、前置きもなく端緒から物語は始まる、これはもう文学ではなくただの事件ものだ。最初から最後まで嫌ごとばかり続いていき最後は辟易とした、ちょっとこれからフォローしようとは思えない作家である。中学教師の話であるが、専門課程をこなした小学教師とは違い三流大学出でもなれる中学教師などロクな教師しかいないことは、周知の事実であるが、生徒からしてみたら熱血教師もいやだしエロ教師はもっと嫌で、ただ単にひたすら授業を進めてくれる教師が一番ありがたいのでないかと思う。

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著者プロフィール

1963年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年『機龍警察』で小説家デビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、15年『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞、19年『欺す衆生』で第10回山田風太郎賞を受賞。近著に『暗鬼夜行』『奈落で踊れ』『白日』『非弁護人』『機龍警察 白骨街道』などがある。

「2021年 『ビタートラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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