ヒロイン

著者 :
  • 毎日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620108704

感想・レビュー・書評

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  • 母からバレエから逃げて入ったところが「光の心教団」だった。
    そこでの生活から突如、幹部男性に何も知らされずに同行させられたのが23歳の時。
    それが白昼のテロ事件であり、逃げ続けることになった岡本啓美。

    名前を変え、場所を変え、生まれた赤ん坊とも別れ、いろんな傷をつけながらも年を重ねるごとに傷も癒えてしまったのではないのか…。

    ワンウェイのことだけをいつまでも思いながらもジョーとの結婚写真を撮ったあとには、もう終わりだろうか、と思ったに違いない。
    誰になったとしても、きっと終わりは来るだろうから。
    そう感じたような最後だった。

  •  桜木紫乃さんの作品は初読みです。何作か読みたいものもあったけれど、この作品を図書館から借りることができたので、読んでみました。

     主人公は、岡本啓美…母がバレエ教室を経営していることもあって、啓美も過大な期待のもとバレエに取り組んでいたが、それから逃れるように「光の心教団」に入信し、信者とともに共同生活を送っていた。その生活が一変するのは、1995年3月、渋谷駅で毒ガス散布事件が発生してからのこと…。教団幹部の貴島に事情も説明されまいままに連れまわされた渋谷で、犯行を実行したのは貴島だったが、貴島とともに実行犯として啓美まで指名手配されてしまい…その日から17年にも及ぶ逃亡生活について描く…。

     17年…逃げていたのではなく、捕まらなかっただけだと、啓美は言います。23歳から40歳までの17年間…啓美に救われた人もいれば、逆に啓美と関わったために人生を狂わせてしまった人もいる…。なんとも波乱万丈で濃厚な人生の一部始終…!逮捕後の啓美はどうなったのか、啓美に関わった人たちはその後どうなったか…知りたくなります。17年の間に、啓美は罪を重ねてしまうけれど、啓美は愛し愛されたかっただけなのかな…と、そして啓美をキライにはなれない私がいたりします。結構ボリューミーな作品ですが、夢中になって読めました。

  • 居場所求め彷徨 人の心とは [評]横尾和博(文芸評論家)
    <書評>ヒロイン:北海道新聞デジタル
    https://www.hokkaido-np.co.jp/article/933168/

    桜木紫乃さん「ヒロイン」 無実の彼女は17年逃げ続けた「虚構じゃないと見えてこない真実もある」|好書好日(2023.10.03)
    https://book.asahi.com/article/15015945

    オザワミカ(@mica_ozawa) • Instagram写真と動画
    https://www.instagram.com/mica_ozawa/

    ヒロイン | 毎日新聞出版
    https://mainichibooks.com/books/novel-critic/post-638.html

  • 逃亡犯はこんな風にして助けられ、助けながら生きているのかも。
    桐島聡の約50年の日常はどうだったんだろう。

  • 2023年初版。もちろん、オウム真理教の地下鉄サリン事件をベースにしたフィクション。17年に及ぶ女の逃亡劇。女たちが主役。母からの呪縛から逃れようと宗教に辿り着いた主人公が、指名手配を受ける。意図せぬ指名手配。流れ流れて17年。いろんな女たちに影響されながら生きる主人公。いつも怯えながら生きることは、どんなことなんだろう。先日、自ら名乗り出て死んだ桐島容疑者の心中は、どんなものだったのか。読後感は、ありきたりではありますが男は弱く、女は強いということでしょうか。

    • schieleさん
      yhyby940さん、こんばんは〜

      逃亡犯の事を[ヒロイン]とするのはどうなんだろう?とは思いますが、興味をそそられる内容ですね〜チェック...
      yhyby940さん、こんばんは〜

      逃亡犯の事を[ヒロイン]とするのはどうなんだろう?とは思いますが、興味をそそられる内容ですね〜チェックしておきます!
      感想、参考になります!
      2024/02/17
    • yhyby940さん
      コメント、ありがとうございます。確かに「ヒロイン」というタイトルには違和感ありますよねえ。それなりに楽しめました。
      コメント、ありがとうございます。確かに「ヒロイン」というタイトルには違和感ありますよねえ。それなりに楽しめました。
      2024/02/17
  • 本作の主人公・岡本啓美は宗教団体「光の心教団」によるテロ実行犯として指名手配され、17年間潜伏しながら逃亡している。啓美と共に逃げているような気持ちで読み耽っていたところ、似たような現実のニュースが飛び交った。70年代の連続企業爆破事件で指名手配されていた桐島聡容疑者(70)とみられる男が名乗り出たというのだ。驚いた、事実は小説よりも奇なり! 小説の主人公・啓美の生き延びる強靭な姿勢を思いながら、死亡してしまった桐島聡容疑の暮らしぶりを想像した。架空の存在で罪を犯してはいない啓美との比較は簡単にできないのだが、逃亡時間の長さと男と女の違いもあるような気がしてならない。啓美が単に逃亡者としてのみ描かれずに、普通に生きる一人の人間としての悩みや苦しんでいる姿とだぶり与したくなる。出来る事なら捕まらずに生涯を閉じさせてあげたかったと願うのは、理に外れている?
    ブクログさんのレビューの中に、どうしてタイトルが『ヒロイン』なのという疑問が書かれていた。彼女はバレエ教室を営む母親に幼い頃から生活を厳重に管理され一流のバレリーナとなるべく育てられている。啓美は逃亡中に自分とは違う人物に成りすましながら歩んできた。つまり与えられた役を演じていたヒロインだったということだろう。

  • 漂う一冊。

    何も知らずに同行させられ、いつの間にか逃亡犯へ…一人の女性の逃亡人生を描いた物語。

    逃亡者として生きる岡本啓美はまるで流木。

    ただわけもわからず流れのままに漂い、その場、その地で束の間の出会いと別れを繰り返す。

    当たり前の幸せを…一人の男との出会いにより、逃げる緊張感もいつしか日常に溶け込んでいくさまは初めての漂着を思い、せつなさを運んだ。

    と同時に人は見たいものしか目に入らないという言葉に重なる彼女の姿。

    目の前のものしか目に入らず、ただ、今の状況を淡々と処理していく姿。

    そこに怖さと生きる強さを感じた。

  • 生を受けた名前を捨て「誰か」として生きる主人公
    逃げる生活の中で本当の自分の心理と向き合い
    「誰か」として自分の人生を生きるヒロイン
    どん底では小さな幸せでもきらきらと輝くのだろう

  • オウムの地下鉄サリン事件を思い出した。
    ワンウェイは結局どうなったんだろう? 
    2人の関係がはかなくて読みながら切なくなった。

  • あの事件を元にしたフィクションだけど、どうしても事実と重ねてしまい、ヒリヒリとした臨場感が伝わってくる。

    著者が描く女性は、どうしてこんなに切なく強いのか。

    なんだか読み進めるのが辛くもあり、女性のしたたかな怖さもリアルである。

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著者プロフィール

一九六五年釧路市生まれ。
裁判所職員を経て、二〇〇二年『雪虫』で第82回オール読物新人賞受賞。
著書に『風葬』(文藝春秋)、『氷平原』(文藝春秋)、『凍原』(小学館)、『恋肌』(角川書店)がある。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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