ヒロイン

著者 :
  • 毎日新聞出版
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感想 : 87
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620108704

感想・レビュー・書評

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  • 装丁:田中久子さん
    装画:オザワミカさん

  • ワンウェイと幸せになってほしかったなぁ。
    なんであの時すぐに出頭しなかったのか悔やまれる。

  • 教科書に載るほどの事件をモデルに書かれたことがすぐに分かります。
    報道を知った時のショックもあったので、最初は思ったように読み進められませんでした。

    最初から終わりに向かっているようなストーリーでした。
    主人公に限らず登場人物は優しさや思いやりのようなものを見せるのですが、ギョッとする様な冷徹さや計算高さも併せ持っていて、そこが私的には人の味わい深さを感じました。

    桜木紫乃さんの文章は私は好きですが、この本は桜木さんファンでも好き嫌いが別れそうだなと思いました。

  • 渋谷駅毒ガス散布事件の実行犯「光の心教団」の貴島紀夫と当日一緒にいた教団の岡本啓美の17年にわたる逃亡記。

    啓美は貴島と別れ一人で実父と再婚相手の住む新潟に行き、そこに匿ってもらい、再婚相手みどりの手助けにより容姿を変えます。

    次は2000年、スナック梅乃でママの梅乃の実の孫娘であるジャーナリストの鈴木真琴の名をもらい鈴木真琴として店で働きます。
    そこで中国人のワンウエイという男に啓美は出会います。

    バレエ教室の教師である母親にバレエの英才教育を受けて育った啓美はそれが嫌で「光の心教団」に入信しました。そこで怠惰な生活を送るようになっていました。

    そして啓美の母と父は離婚し、父は再婚しますが再婚相手のみどりと娘のすみれに暴力を振るうようになりました。

    そして、スナック梅乃での生活。
    ワンウエイとの逢瀬。
    梅乃の死。
    そして…本当に盛りだくさんな内容がまだまだ続きます。



    地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教の事件を想像して読み始めたらこれは桜木紫乃さんによる新たな逃亡するヒロインの物語でした。


    わたしの罪はー子を産んだこと。
    わたしの罪はー生まれた子に名を与えなかったこと。
    わたしの罪はー忘れられぬ男に出会ったこと。


    逃亡生活でも、これだけの人生が生まれるものなのですね。

  • なんか主人公にあまり悲壮感が感じられなくて、
    そんな適当な感じで逃げられるのか疑問に感じた。現実は案外そういうものなのかもしれないけど、読んでいてやたらイライラした。凪良ゆうや町田その子を好む私にとっては、主人公の心理描写がすごく適当だなと感じられた。

  • 犯した罪は出頭しなかったこと
    ずっと逃げ続けたこと
    「私は逃げていたわけじゃない、見つからなかっただけ」って、なんて図々しいと思ったけれど、ラスト近く、ふと、本当にふと、「パパ、ごめんね」とつぶやくのが切なかった
    ページを戻してもう一度プロローグを読み返す
    どうしてヒロインだったのか、誰がヒロインだったのか、わからないままでいる自分がとても心許ない

  • また親ガチャ失敗の話かとうんざりしながら読み出したが、オウムと『八日目の蝉』を合わせたような話だった。
    人気本なので人物もよく書けてるし、展開も面白かった。
    あっさり読めた。

  • 自分の思いを持つことすら許されず、何かを信じることがどういうことなのか分からないまま、流されるように生きる。
    この作者は、そんな人を目の離せないような危うい魅力を纏わせて描く。
    そして、そういうあなたはちゃんと自分の意思を持って、何かを信じることができているのかと問われているような気になる。
    親がつけてくれた名前があり、戸籍によって身元を保証されている。それだけで自分の居場所が守られていると疑わずにいるけれど、それは本当に間違いないんだろうか。
    自分自身の手で得た居場所を、自分自身の手で捨て続けざるを得なかった主人公に、哀しみと、なぜか憧れのような、複雑な思いを感じてしまった。

  • 見つかってほっとしたような、このまま山口一(このも偽名)の妻山口りりとして介護施設で働いて逃げ続けて欲しかったような…。
    でもプロローグは捕まるところから始まっているからわかってはいたんだけど、どこでどうなってそうなってしまったのかがいろんな展開をしながら飽きずに興味深く読んだ。
    教団に入ったことが罪なのか(バレエの英才教育を受けるも花開かず毒親の母に暴言吐かれ叔母に誘われて行ったセミナーでここが居場所だと思ってしまったのもわかる)
    何も知らず貴島についっていって渋谷で毒をまいたのをあとから知ってそこから長い逃亡生活が始まる。
    岡本啓美(本名)はすぐ出頭して事情を説明すれば良かったのか。
    変に機転がきいて生き延びる生命力が強くて、強運だったのが災いしたのか幸いだったのか。
    スナック”梅乃”で鈴木梅乃の孫の鈴木真琴として店のママをしながら暮らしていけてれば…
    でも梅乃が癌で死んでから雲行きが…
    ほんとうの孫の鈴木まことが(この人がなりすましを提案して祖母の梅乃も納得済みで匿ってくれていた環境)
    指名手配犯の貴島と同棲して貴島が自殺しその遺体を解体し
    実家に’梅乃”の床下に埋めたこと、死体損壊で(しかも指名手配犯を)これはじゅうぶん罪になるでしょ。
    その後も中国人のワンウエイに熱をあげてからどんどん深みにはまって安住の梅乃を離婚した父親の再婚相手のみどりさんと異母兄弟のすみれに譲って、出ていくことに。
    このみどりさんってのがすごく頭がいいといおうか処世術に長けていて”梅乃’を若い女性に人気のある店に変えていったそう。
    「床下には配管工事とかの人を入らせないほうがいいですね」とあんにわかってる感じだし…
    そうそう啓美の父親は離婚してみどりと再婚しすみれが生まれて平和に暮らしてると思いきや、すみれがバレエに興味を持ち始めたた途端、みどりやすみれに暴力を振るうようになった最低の男。後半ではみどりはやっと離婚ができてすみれのバレエの世界でいいとこまでいく。
    山口はじめとなる男は啓美が自殺しようとしとこを助けてやった男性。
    寡黙で素朴な男、昔の同僚のネズミ男が啓美の正体に気づいて賞金を山分けしようという誘いにも乗らず一生自分が守るって誓ってくてた男。
    この男性の気持ちを思うと啓美はこの男に抱かれてる時も
    ワンウエイのことを想っていたことが罪なのか、
    ワンウエイの子どもを闇で産んで、すぐ(自分の戸籍はつかえないから)鈴木まことに託したのが罪なのか。
    読み終えてどっと疲れたけど、もちろんオウムのことがヒントになったんだろうけど、いろいろ気持ちが揺さぶられた小説だわ。

  •  紫乃さん独特の世界に、引き込まれます。いいですね〜

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著者プロフィール

一九六五年釧路市生まれ。
裁判所職員を経て、二〇〇二年『雪虫』で第82回オール読物新人賞受賞。
著書に『風葬』(文藝春秋)、『氷平原』(文藝春秋)、『凍原』(小学館)、『恋肌』(角川書店)がある。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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