経済成長なき幸福国家論 下り坂ニッポンの生き方

  • 毎日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620324494

作品紹介・あらすじ

藻谷浩介氏(「里山資本主義」)×平田オリザ氏(「下り坂をそろそろと下りる」)初の対談!!

「将来は絶望」と言われて久しい日本。確かに、少子高齢化が訪れ、長年デフレにあえいだ経済はいまも低成長を続けている。日本に住んでいるとこうした状況に閉塞感を感じざるを得ない。
だが、ひとたび視線を海外に向けると、逆に世界で日本に匹敵する豊かな国がほかにあるだろうか? 治安がよく、経済的に豊かで、宗教のタブーも少なく、文化的な伝統もある。居ながらにしてあらゆる商品が手に入るだけでなく、アニメやゲームなど最新の文化もあふれている。その証拠に日本を訪れる外国人観光客は年々増加している。

現状を楽観しすぎないことも重要だが、我々は悲観し過ぎではないのだろうか。この国に足りないものがまだまだあるのは事実だが、現状でも間違いなく美しく豊かな国であることを、まず認める必要があるのではないだろうか。

藻谷浩介氏は「データを見れば現状は悲観しすぎ。この国には豊かな蓄積がある」と断言する。岡山県奈義町の合計特殊出生率は全国平均を大きく超える2.81。自治体と住民の協働で進めた取り組みが実を結び始めている。
「元気な地方に面白い人材が現れている。下りの先に未来が見えてきた」と語る平田オリザ氏は、介護演劇や認知症演劇の試みを紹介。ユニークな取り組みの向こうにこの国の将来像が見え隠れする。

経済成長がなくとも、幸福な国家は実現可能と語る両氏。高度成長時代の世界観を捨て、低成長時代にふさわしい「コラボ社会」を目指すことが、美しいこの国の活力を呼び覚ます。

ピンチにこそチャンス」を見いだす二人が、これからを担う世代にむけてこれからの希望を語る!!

感想・レビュー・書評

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  • 人口減少が確実に進んでいる日本の経済成長は見込めないと言い切った上で、下り坂の時代をどう生きていくかを対談した本。
    下り坂はなぜ不安なのか?コンペティションではなくコラボレートして生きていける環境が地方にはある。そしてその中で心の豊かさを育むためには、「自己決定力」が大事になる。
    現実的に考えてもう経済成長を第一優先するのではなく、お金に捉われたい人もとらわれたくない人も共存できる多様な生き方を実現できる社会をつくっていくべき。
    私は望んで積極的下層市民になりたいと思いました。

  • 対談本でかつ相互に批判的な論議ではないから、テーマ発散型で、悪くいうと取り留めがない。経済成長は良い事なのかという論点に決着せぬまま、人口減少が必ずマイナス成長を齎すという理屈からスタートとしているので、結局、『下り坂をそろそろと下る』という別著に象徴されるように、既定路線であるネガティブな方向に、如何に抗わずに生きるか、という話し合いになっている。

    生産人口が減り、生産性も上がらず、故に経済成長がマイナスとなり、税収は縮小する。だからと言って税率を上げると、人々の暮らしは貧窮していく。しかし、税金は教育や福祉、医療、防衛に使われるため、税収を上げないと、支出を要する高齢人口の増加と共に収支が合わなくなり、暮らしは不安定になる。つまり、経済成長が無いと、幸福から遠ざかるのではないだろうか。

    そこで、イノベーションや出生率の議論。本著では、イノベーションに対して否定的だが、これはプロダクトの付加価値は、やがて追随されて逓減するという主張だ。当然だが、しかし、イノベーションとは、別に最終製品の機能アップとしての技術革新だけではない。対談では、生産技術の革新という観点が見落とされている。生産性を上げるイノベーションは意味があるはずだ。また、地方の方が生産性が上がっている、10人でやっていた農業が1人で可能になったとの論。生産量が同じで、残り9人が存命、無産階級として病院にいるなら、地方の生産性は上がっている事にはならない。この9人の新たな付加価値化、労働が必要な点が見落とされている。

    子供が将来に支払う税額を考慮すれば、子供手当を1千万円払っても、投資回収が期待できるという論がある。本著では、平均出生数を上げるのではなく、多産家庭を増やす事が重要という話。これは、その通りだな、と思った。多産できない事こそが経済的理由ならば、解決策はあるような気がする。ただ、人類は子作りや子育てという進化しない本能に対し、それ以外のエンタメが進化し過ぎて、あるいは、道徳観や医療が進化していく事で、価値相対的に子作りをしない生命体になっていくのだと思う。

    幸福とは何か。もう少し議論を深められた気がして残念な書。でも、対談に参加させて貰った気になる、思考のきっかけとしての良書。

  • 東京の出生率の低さ 子供を三人以上産む人が少ない 出生率2は3人以上が支え
    製造業から文化立国へ 文化により付加価値を与える(30)
    成熟国家の時代
     多様性が不可欠
    Iターン・Jターンが地域・自治体を選ぶ理由 自由・文化
    「自己決定力」を持つのがElite

    「付加価値」他者との違い 長期記憶の組合わせ=イノベーション
    皆が効率の良い労働に疲弊して、消費も文化も均一化
    「多様性」の真逆

    「日本社会のリセット論」は

  • 願望と現実は異なる

    主観や衝動が先に立って、ものごとを客観的に眺められない人。何かの欲に駆られて道理の通らないことをやってしまう人。そういう人に腹が立つのです

    そういう人たちは、後々必ず、自分に損な方に自体が進んで、「こんなはずじゃなかった」とうろたえることになります。損をしたくないのであれば、もっと虚心坦懐に歴史を学び、事実はどうなっているかを見極め、道理の筋を通して、危険を回避なくてはいけません。

    実際はどこに住んでいようと、油断したら負けなのです

    ごくごく一部の自治体。総人口は増えているが、増えているのは実は高齢者だけなのに、数字を確認せずに油断してほぼ何もしていない

    センスのいい首長を選ぶ

    子どもたちの課題は目先の競争に勝つことでなく、今後の下り坂の時代を、周りと共に楽しくしぶとく生き抜くこと

    詐欺話に引っかかる人 欲に弱い人でなく、世の中にはひそかにうまい話にのって甘い汁を吸っている人がいるという人生観をもっている
    本当は自分で工夫して努力した人がうまくいっている

    効率がいい、生産性が高いとされる首都圏では生まれる子どもがどんどん減っている。東京はある意味、人間という生物種の存続が難しい所まで、いろいろとやりすぎてしまった場所なのです
    人が自足して楽しく生き、同じ数の次の世代が生まれ続けているところこそ、存続すべき

    認知症 1万円札がない、あんた盗んだでしょうと嫁に言ったら、ぬすんでなんかいない。おばあちゃんがわすれたんじゃないのというのは新皮質敵。
    そうじゃなくて一緒に演劇的に驚いてやって、えっないんですか、そりゃ大変ですねといって一緒に探して、七転八倒して探す演技をする。15分位するとつかれてくるので、休もうかといってお茶をいれると、おばあちゃんは、もう財布のことはわすれてしまう

    感情論と減じる論を切り分けられない人が多い

    高坂勝 減速して自由に生きる、次の時代を先に生きる

    いいものの価値は民主主義では決まらない

    私は徹底的に本物を見せるべきだと思っている

    船が沈んだときでも自分の子供は、船体が水面上に出ている、空気のある方に行ってほしいって考える
     本当に重要なのは船をすてる能力

    20世紀になって化石燃料の利用が本格化すると、人間は過去4億年分の対容易エネルギーの蓄積を一気に使えるようになりました。それをテコに技術を磨き、今度は現在降り注いでいる太陽光や地熱だけで文明が維持できるように、工夫を凝らしつつある。そうしたら、日本を先頭に、戦争でもないのに生まれる子供が減り始めた。この傾向が続けば、地球の生態系の持続可能性は増します。つまり21世紀の世界は、戦争をしなくても、他人を水面下に蹴落とさなくても、皆が生きていける世界になる可能性が高いのです

  • 「他者を蹴落とさないと生き残れないという発想は前世紀の遺物」「自己決定力」などが残る。この著者たちの過去の本が理解できない人たちが多いことが理解に苦しむ。

  • とても素晴らしい本。何が素晴らしいって、お二人が具体的に実践されていることに心打たれる。その点においては、僕はまだまだ。自分でもコミットして行動していかなければと熱い気持ちにしてくれる。

  • バブル期のような派手でおかしな時代はもう来ないだろうけれど、ああいうのとはまるで反対の意味で楽しく暮らせる社会が、あと少しの時間と手間暇を掛けたら実現されそうな気がして来る、そんな本。日本はまだまだ捨てたもんじゃない。てか、これからだね。

  • https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/TB90321928

    『下り坂をそろそろと下りる』『わかりあえないことから』(いずれも講談社現代新書)の平田オリザと、『里山資本主義』(角川oneテーマ21)の藻谷浩介の対談。
    人口減少時代を迎えた日本でどう生きるか、について語り合っている。
    子どもの教育にかかわりたい人、地域おこしに興味のある人にぜひ読んでほしい。

    (推薦者:人間発達文化学類 谷 雅泰先生)

  • お二人の主張がわかりやすく展開されている。歴史の大きな分岐点における指針となりうる書。

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著者プロフィール

1964年、山口県生まれ。㈱日本総合研究所調査部主席研究員。1988年東京大学法学部卒、同年日本開発銀行 (現、㈱日本政策投資銀行)入行。米国コロンビア大学ビジネススクール留学、日本経済研究所出向などを経ながら、2000年頃より地域振興の各分野で精力的に研究・著作・講演を行う。2012年度より現職。政府関係の公職多数。主な著書に『実測!ニッポンの地域力』(日本経済新聞出版社)、『デフレの正体』(角川oneテーマ21)。

「2012年 『藻谷浩介さん、経済成長がなければ僕たちは幸せになれないのでしょうか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

藻谷浩介の作品

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