科学と宗教 (サイエンス・パレット)

  • 丸善出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784621087084

感想・レビュー・書評

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  • 「第一に、実際には進化論は、ID説が克服したと称する生物学的複雑性を説明することができる。第二に、ID説は過度に消極的である。進化論におけるギャップを探し出すことに熱心だが、代わりの一貫した代替理論を提示していない」

    結局のところ、科学の持つ物語の強さが普遍的になってしまった世の中で、宗教なり他の物語が生き残る術は逆説的に”虚構”であることを自らが認め、その魅力について語るという方向性しかないと思うんだけど、そのへんはやはり原理主義者には好まれないのかもしれない。つきつめていけば、ゲーム的に生きることへの賛歌みたいな感じにいくと思うし、それはかなり強さのある軸のはずなんだけど、なかなか受け入れられない思想のようだ。

  • キリスト教原理主義者と進化論との攻防。原理主義者を非難する論調。

    ガリレオがキリスト教を否定していたわけではないことは新たな収穫。ここでもキーパーソンとして、アウグスティヌス登場(適応の原則。民衆に合わせてキリストは説いた)。

    締めで、宗教も科学も同じぐらい暴力的抑圧装置として機能することを指摘したことは鋭い。

    ・これら(イスラム)の学者たちのモットーは「天文学や解剖学の知識を欠く者は、神の知識においても不充分である」であった。
    ・合衆国市民の45~50%が、人類は過去数万年の間のいつかの時点で現在あるとおりの姿で神によって創造されたと信じていることを示し続けている。
    ・福音主義神学者のヘンリー・ドラモンド:まだ知られていない知識、科学の解明されていない間隙に神を当てはめるべきではない
    ・ハブロック・エリス:同性愛は自然的なもの。1897-1910。『性の心理』
    ・利他行動の価値を決めているのは、自然への訴えではなく、政治的・道徳的討論なのである。

  • ・現代世界においては、あたかも科学、テクノロジー、医学が道徳的意味を構築する試みにおける支配的要因になりつつあるかのようだ。過去においては、偉大な宗教的預言者が、悪しき道を正すよう、神の怒りと宇宙的破局に目を向けるよう、我々に警告を発した。しかし、今日の我々が受ける警告は、性的不道徳、暴飲暴食、強欲が、性病、肥満、そして破局的レベルの地球温暖化による洪水、火災、惑星の破壊をもたらすだろうというものである。細部は入れ替わった。だが、根本的構造は変わっていない。科学と医学は新たな恐るべき未来像を我々に提供する。それを用いて政策立案者や政治的指導者が人々の説得に努める。かつて預言者が行ったように、手遅れになる前に悔い改めて行動を変えよと告げるのである。

  • 科学と宗教の関係について、それぞれの歴史を踏まえつつ中立的な立場から説明されている

    これまで科学が圧倒的で揺るぎない存在だと捉えていたから、頭の中に柔軟性をもたせるいいきっかけになった。

    「 我々は、宗教の信者は論理的・政治的な問題を自らの特殊な信仰のレンズを通して眺めると考えることに慣れている一方で、科学の名において主張するものたちに対しては、彼らを慎重に見守る態度を十分に学んだとは言えない」
    これは本当にそうで、気をつけたいと思う 

    これまで宗教に対して懐疑的に見ていた節があるけど、どこの世界に寄りかかるとしても常に問い続けること、考え続けることが1番大事なんだなと思った

    ✏科学は、感覚を欺くこと、基本的な直覚の中にも誤謬があり得ることを我々に見せつける大胆さと可能性を持ち合わせている

    ✏科学と宗教をめぐる討論は、社会一般や国家の教育制度に対する自らの影響力を増すための論陣を張る格好の場となっている。それは全く別個の政治的根拠に基づく主張なのだ

    ✏宗教の擁護者は、ヘンリー・ドラモンドの「既存の知識の隙間とされる場所に神を見出そうとするな」という警告に耳を貸したほうがいいかもしれない

    ✏ドーキンスの最近の著作『神は妄想である』では、普遍的に協力的で利他的に行動する人間の傾向は、実際、きわめて自然的なものであり、初めは親しい親族にのみ利するために発達したメカニズムの「祝福された失敗」と見るべきかもしれないと述べている

    ✏ある行動が自然なものである、あるいは進化の結果であることを示すことができるとしても、それゆえその行動は倫理的に望ましいものだと考えるのは間違いである

    ✏利他主義のイデオロギーは、全体の利益を個人の権利に優先させよと国民に説く全体主義政府によって利用されることもあるし、幾千もの軍人が自らの生命をなげうつ覚悟をもつことてまのみ達成できるような国家目標を掲げる政治家によって利用されることもある

    ✏科学にも宗教にも、内側から見ると根本的に変更不能のものに見えるものがあって、中立的に観察するとどちらの根本的格率を採用すべきかは決定できない
    だが、科学も宗教も、道徳的意味を構築するために使える概念、信条、実践、儀礼、物語を供給することはできる

  • タイトルから胡散臭い科学と倫理の話かと思ったけどID論とかも扱われててかなり面白かった。

  • 科学も宗教も、社会的・歴史的条件の中で営まれ、積み重なってきた。その対立を話題に出したとき、裏には政治的思想や文脈が存在する。
    本書は、「科学と宗教」という学問の書。主にガリレオの天文学、ダーウィンの進化論、そして昨今の脳科学や医学をベースに、科学と宗教の関係を考察している。故に科学との関係を考察する対象は一神教となる。
    索引も参考文献も多くて信頼感もあり、宗教的思想が科学的にすべて証明されてしまうのも、科学では説明できない領域がIDで埋められてしまうのもなと思う。ただどちらであっても面白い。
    神を見、科学を発展させてきた人類に、答えはでないような気はしている。
    しかし、政治的思想がもしなくなった場合、それは本当に対立するのか?

    あと文中に何個「的」があったかも数えてみたいくらいにはある。

  • ・2020-02-23(日)明石神戸アカミミガメ対策協議会 および 2/24第7回淡水ガメ情報交換会へ参加。ともに明石中央公民館にて。2/24完了後,明石駅近くのそばのあかし市民図書館(パピオスあかし4F)で閲覧。20時閉館後に同じビル2Fのジュンク堂書店にて購入。同じビルに公共図書館と本屋さんが同居しているのはめずらしい。
    ・本当は,電子書籍版が欲しかったのだが,残念ながら出てないようだ。丸善といったら「Honto」サービス対象のはずなのだが,なにゆえ電子書籍版を出さないのか理解に苦しむ。2013年発売の本だから,新しすぎて出せないということはあるまい。(紙の本を出してから数ヶ月後に電子書籍を出すことは多いようだが。) Hontoの読割50で,紙の本を買った人が半値で電子書籍を購入できることを期待していたのだが,残念。
    ・帯にもあるが,本書は公平な立場で記述されているのが良い。「訳者あとがき」に「オックスフォード大学の入門書シリーズ"Very Short Introductions"の1冊である本書」とある通り,学生向けの教養書の位置づけだろうか。「ダーウィンの宗教的遍歴」が詳しく書かれていて興味深い。「ダーウィンは無神論者にはならなかった」。この点はよくある進化論入門書には欠けている(雑な議論の展開されている)部分であり,本書以外で同様の記述を見た記憶があるのは他に1冊だけだったと思う。「インテリジェント・デザイン」(Intelligent design)についても詳しく,読み応えあった。
    ・「科学と宗教」の立場からははずれるのかもしれないが,「考古学」という科学を取り上げてほしかった気もする。任天堂3DSのアプリ「ニンテンドー3DSガイド ルーヴル美術館」に載っている「アイン・ガザルの像」(紀元前7000年前)や,今回の淡水ガメ情報交換会で発表のあった「中国の新石器時代の遺跡から出土するクサガメなどカメ類の遺骸」(平山 廉 早稲田大学国際教養学部 教授)の,8000年前の遺跡の話とか。聖書のアキレス腱はそこかもしれない。アダムの誕生を6千年前としていることが多いようだ。そして,人間が言語を習得してから文化・技術が急速に発展した。それがいつのことか? そういったところへの突っ込みも欲しかったのだが。
    ・外来生物から在来種を保護する理由として「神がつくった生き物を滅ぼしてはいけない,他の生き物の管理を託された人間が適切に保護すべきだ」という倫理的基盤があるように私は思う。対して,無神論(多神論)とくに行き過ぎた資本主義で,お金が神様の場合には,そういった保護の思想は出てこないだろう。保護することでお金が儲けられる仕組みがあるなら別だが・・・それも,ありそうだなぁ。

  • 【サポートスタッフ企画展示:2018春 ブックリスト掲載本】

    ▼LEARNING COMMONS イベント情報
    https://lc.nul.nagoya-u.ac.jp/event/?m=201804&cat=5

    ▼名古屋大学附属図書館の所蔵情報はこちら
    https://nagoya-m-opac.nul.nagoya-u.ac.jp/webopac/WB03285061

  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    なんというか哲学的な部分が多々合ったような気がする。
    思っていたよりも科学と宗教が対立していなかったことは驚いた。宗教にも妥協できる部分と妥協できない部分があることを強く感じた。
    面白かったんだけど、あまり記憶に残っていないな。時間がたったらもう一度読むといいのかもしれないな。

  • 【由来】
    ・スゴ本

    【期待したもの】


    【要約】


    【ノート】

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