マラーノの系譜

著者 :
  • みすず書房
4.00
  • (0)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 3
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622033660

作品紹介・あらすじ

二重に引き裂かれた改宗ユダヤ人=マラーノは、歴史に何を刻印したか。15世紀スペインからフランツ・カフカまで、彷徨する敗者の側から世界史を読み解く。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • スペインそしてポルトガルのユダヤ人からの改宗者マラーノが辿った苦難の歴史。キリスト教を信じているとはいえ、ユダヤ人であるがゆえに、ユダヤ・キリスト教いずれからも受け入れられない悲劇の人たち。マラーノは「豚」という意味だそうです。1500年前後の両国のユダヤ人から始まり、イギリス、イタリアへの避難など。ポルトガル国王の候補者の一人ドン・アントニオは王の後継者でありながら、ユダヤ女性の子供であったためにスペイン・アルパ公爵軍の介入を招いた、そしてイギリス亡命とエリザベス女王の保護。ユダヤ好きとして警戒されたエリザベス治世で起こったマラーノ迫害。それにより命を落とした女王の医師ロドリゴ・ロペス。キリスト教に改宗した人たちも、その血のゆえに殺されていく。本当に恐ろしい歴史です。スピノザ、カフカ、ハイネに至るまでの系譜の中に彼らの精神構造の奥深く潜む苦しみを描いた秀作です。シェークスピアの「ベニスの商人」は反ユダヤとして有名ですが、シェークスピアが実はこの作品の中にユダヤ弁明の発言を隠しているという説明は意外ながら、なるほどと言うようにも思います。シャイロックのこだわりはキリスト教に対するアンチテーゼとして描かれている・・・・。

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

小岸 昭(こぎし・あきら)
1937年北海道生まれ。1963年京都大学文学部独文科修士課程修了。京都大学総合人間学部教授を経て、同大学名誉教授。1965年日本ゲーテ賞受賞。1995年「日本・ユダヤ文化研究会(現神戸・ユダヤ文化研究会)」創設。2001年「ブレーメン館」創設(札幌)。〓
著書・訳書にデッシャー『水晶の夜』(人文書院)、『スペインを追われたユダヤ人』(人文書院、ちくま学芸文庫)、『隠れユダヤ教徒と隠れキリシタン』(人文書院)、『離散するユダヤ人』(岩波新書)、ウルフ『「アンネ・フランク」を超えて』(梅津真と共訳、岩波書店)、ハイマン著、シェプス編『死か洗礼か』(梅津真と共訳、行路社)ほか多数。

「2021年 『中国・開封のユダヤ人 増補版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小岸昭の作品

最近本棚に登録した人

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×