果報者ササル――ある田舎医者の物語

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622085522

作品紹介・あらすじ

ブッカー賞作家ジョン・バージャーと写真家ジャン・モアが、一人の田舎医者の姿を通して人間と医療の本質を浮彫にした傑作ドキュメント。
 舞台はイングランド南西部の小村。階級社会の最下層に生きる村人たちは、貧困やそれに伴うさまざまなスティグマに絡めとられている。医師ササルはその村に住みつき、傷を負った者、死に瀕する者、孤独な者のケアに当たる。ササル医師が村人との間に築いた稀有な関係性を、二人のアーティストが透徹した視線で描写する。本書の観察は、人間の生の価値の観念を押し広げるような数々の気づきを含んでいる。
 治療者とはいかなる存在なのか。他人を癒すことで癒される生、それを限界を設けずに探究する者の幸福とその代償について、ササル医師は美しくも戦慄すべき事例を提供しており、読後も一巻全体から受けた衝撃が後を引く。
 「本書を読んで心を動かされない者は、医師になるべきではない。」(The Nation 誌)
 原著は1967年刊。以来読み継がれ、今日の極度にマニュアル化された医療に対してますます深く問いかける。静謐でありながら強烈なメッセージを放つ一冊。写真73点。

◆傑作。この本が1967年に刊行されたとき、それは作家と写真家のコラボレーションとして『名高き人たちをほめたたえん』(1941)以降もっとも重要な一歩を刻んだ本だった。信じられないことに、現在も同じ形容が当てはまる。──ジェフ・ダイヤー、1997年の評
◆私が世界中でもっとも好きな本の一つであり、常に、本がどのように書かれるべきか(そして写真はどのように使われるべきか)についてのインスピレーションであり続けている。──アラン・ド・ボトン
◆いたわりについて語ることで、読む者をして他人をいたわらせる本、深い癒しについて語ることで、読む者の魂を癒す本である。しかも、すでに50年近くを経ていながら、気味が悪いほどにタイムリーだ。──サイモン・ガーフィールド、2015年の原著新版への評
◆ジョン・バージャーは私にとって比類のない存在である──ロレンス以降、この世界の官能について、良心の要請を引き受けながらこれほどの注意力をもって書ける作家はほかにいない。──スーザン・ソンタグ

感想・レビュー・書評

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  • 前向きな人生訓、と受け取りました。このフレーズを読んで“ご冗談でしょう、ファインマンさん”の次の一節を思い出した。
    「カーゴ・カルトサイエンス(積み荷信仰式科学)」と呼びたいと思っているえせ科学の例なのです。南洋の島の住民の中には積み荷信仰ともいえるものがある。」

    「一般に、常識は実際的だと考えられている。だが、それが実際的なのは短期的に見た場合に限られる。自分に日々の糧を与えてくれる手に噛みつくのはばかげたことだ、と常識は言う。しかし、それがばかげたことに見えるのは、もっとずっといい条件で日々の糧が得られるかもしれないことに気づくまでに過ぎない。長期的に見れば、常識は受動的である。」

  • ササル医師が素晴らしい人だということは、とても良く伝わりました。

    ただ著者が患者と医師の関係性について、友愛というキーワードを用いて書いている部分があるのですが、そのワードでは100%カバーしきれない部分があるのではないかなと思います。

  • イギリスの町医者のドキュメント
    原著は1967年であるが全く古くささを感じさせない。少村にめぐりあったササルもなら、彼に出会った著者らも果報者。写真も美しかった。

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著者プロフィール

1926年、ロンドン生まれ。小説家・評論家・詩人。著作には、小説、詩、戯曲・シナリオ、美術や視覚メディアに関する評論、社会学的な研究としてのノンフィクションなどがある。70年代半ばにフランス・アルプスの小村ヴァレー・デュ・ジッフルに移り住み、以来そこで農業をしながら多彩な表現活動を続けている。

「2016年 『果報者ササル ある田舎医者の物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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