パリはわが町

  • みすず書房
2.33
  • (0)
  • (0)
  • (2)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 50
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622085553

作品紹介・あらすじ

「はたして自分が田舎者なのかパリっ子なのか、わたしにはわからない。わたしはたまたまノルマンディに生まれた。そして、わたしの作品の大部分は、子供時代や思春期を過ごしたポーの町とベアルヌ地方から着想を得ている。けれども、わたしの町ということになれば、それはパリである。本当のパリっ子とは、別の土地で生まれ、パリで生きるのが征服することであるような人間をいうような気がするのだ。それには、セーヌ河にかかる橋を渡って、目を見はるだけで十分だ。比較を絶する空が広がっている。夢ではなくて、わたしはパリにいるではないか!」(本書より)

1943年以来ずっとパリに暮らす、97歳の作家が、19世紀パリの印刷工だった祖父の住所を皮切りに、数々の思い出と出会いにあふれる町を言葉で散歩する。占領から解放される現場に立ち会い、カミュのもとで編集発行された《コンバ》紙のジャーナリスト、ガリマール社の編集者として、多くの作家を知ったグルニエの、親切な道案内で路地裏を歩いてゆく読者に、パリは新たな相貌をみせてくれるにちがいない。
本書には、ジッド、サルトル、ジュネ、バタイユ、フォークナー、ヘミングウェイ、カルペンティエルなどが姿をみせ、今は亡き親しい友人たち(ブラッサイ、パスカル・ピア、クロード・ロワ、ロマン・ギャリ)も生きているようだ。都市を舞台とした愛情地理学にして、人生のアドレス帳。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 1900年代初頭から2000年代初頭までの約100年を生きた作家が、パリのあちこちの場所にまつわる思い出を語った一作。
    激動の時代を生きてきた方だけれど、語り口は淡々としている。戦時中のパリ占領下ではレジスタンスの活動にも参加していたのに、解放直前のパリで見聞きしたことや、いわゆる大物との交流なども全く大仰には描いておらず、まるでただの備忘録か日記のよう。でもこの街には至る所に人の生きた記憶が染み付いているんだなとしみじみ感じた。目には見えないけど、空間の中に、時間が地層のように積み重なっているイメージ。通ったことのある通りや、行ったことのある場所で、数十年前にはこういうことが起き、こういう人たちが行き交っていたのだと思うと、楽しい。
    早くまたパリに行きたい。

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

Roger Grenier(1919-2017)
フランスの小説家、ジャーナリスト、放送作家、編集者。
ノルマンディ地方のカーンに生まれ、フランス南西部のポーで育つ。大戦中はレジスタンス活動に関わり、戦後アルベール・カミュに誘われて「コンバ」紙の記者としてジャーナリストのキャリアをスタート。その後、ラジオの放送作家などを経て、1963年よりパリの老舗出版社ガリマールの編集委員を半世紀以上務めた。1972年、長篇『シネロマン』でフェミナ賞受賞。1985年にはそれまでの作品全体に対してアカデミー・フランセーズ文学大賞が授与された。刊行したタイトルは50以上あり、とりわけ短篇の名手として定評がある。邦訳は『編集室』『別離のとき』(ともに短篇集)、『黒いピエロ』(長篇)、『ユリシーズの涙』『写真の秘密』(ともにエッセイ)など。亡くなる直前までほぼ毎日ガリマール社内のオフィスで原稿に向かっていたが、2017年、98歳でこの世を去る。本書は生前最後の短篇集。

「2023年 『長い物語のためのいくつかの短いお話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ロジェ・グルニエの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
カーソン・マッカ...
ルイーズ・グリュ...
レイチェル カー...
ユーディット・シ...
呉 明益
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×