グローバル・ヒストリー入門 (世界史リブレット 127)

著者 :
  • 山川出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (90ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634349650

作品紹介・あらすじ

グローバル・ヒストリーには文字情報をおもにあつかう歴史学者だけではなく、多くの自然科学者も参加し、これまでになかった斬新な手法と多様な情報が駆使された成果が続々と生み出されてきている。これらの研究は、今後の歴史学のありかたを大きく変えるものである。本書では、グローバル・ヒストリーの概要を伝えた。

感想・レビュー・書評

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  • 近年盛んなグローバル・ヒストリー研究のダイジェストを約70ページでまとめている。
    従来の史実の羅列の世界史ではなく、環境・貿易・宗教・疫病・マクロ経済などの視点から、つながりとして世界史を捉えていくってことなんやろな。
    この本は様々な研究の紹介なんで、深く知りたかったら参考文献に手をつけろってこと。で、やっぱりマクニールの世界史から読み返そう。

  • グローバル・ヒストリーに関する書籍の紹介を並べている本。環境史、商品史に注目するのは面白いが、特に環境史は年代の区分の仕方が人間の活動の歴史とかけ離れた区分になってしまう可能性がある。全体としてグローバルヒストリーは現代的な問題意識との接続(因果関係の構築)に欠けるようにも思う。また、地域間比較も、世界はあまりに多様なので有効な指標を作ることが難しいようにも思える(消費カロリーによる指標も、食文化や農耕の方法は地域によってかなり差があるのでどの位有効なのかはわからない)。
    アジアをとらえる際にヨーロッパ発祥の歴史学の方法と結びつきが強いネイション・ステイトによる区分を採用しているのもどうなのだろうか。中華帝国は国境などあってないようなものだったし、ナショナルヒストリーの方法論をそのままアジアに適用して、グローバル・ヒストリーと呼ぶのは問題があるように思える。西洋的な手法で西洋を相対化しているにすぎない可能性がある。
    ただ、グローバル・ヒストリーは誕生したばかりの分野なので、これからの発展には期待できる。

  • リン・ハントが「グローバル・ヒストリー」について言及していたので、興味をもって、とりあえず全体像を知りたくて、読んでみた。

    いろいろな議論が簡潔にサマリーされていて、なんとなくの全体像はわかるのだけど、あまりにも短すぎて、ピンとこないところも多い。こういう短い本はバランスをとるのが、難しいとあらためて、思った。

    読んでいくと、それほど新しい感じはしなかった。たとえば、ブローデルとか、ウォラーステインの議論は30年以上前から聞き齧っているし、マクニールの議論など、そのほかにも知っている議論もいくつかある。

    なるほど、グローバル・ヒストリーって、最新の研究動向というより、もう半世紀以上前から取り組まれているものだったんだなと理解した。

  • 難しかった。今従来の史学を研究している人向けの「入門」と言う感じ。それでもグローバルヒストリーの概観は掴めたので役に立った。いろいろな分野の研究を浅く紹介してくれる。グローバルヒストリーは本当に扱う分野が広いので、1冊でわかりやすく解説するのはできないとわかった。

  • 随分前の史学雑誌でレビューされていた。本書の内容は、グローバル・ヒストリーの代表的研究成果の紹介が主。殆どが経済史。環境、疫病などもある。ウォーラーステインやブローデルだけでなく、書店で人気のマクニールやダイヤモンドなどにも頁が割かれている。
    グローバル・ヒストリーとは
    ①扱う時間が長大(宇宙・人類の誕生~など)
    ②扱う空間・テーマが広大(⇔各国史)
    ③ヨーロッパや近代の相対化
    ④地域間の相互連関の重視
    ⑤新奇なテーマ(疫病、環境、人口、生活水準)
    とのことだ。ハラリのいうマクロ歴史学に近いのかな?

  • 山川出版社 グローバルヒストリー 入門 グローバルヒストリーの概要と読書ガイド的な本


    グローバルヒストリーは、地球史、人類史、世界システム論の視点を持つ歴史学。一国史の歴史観を見直し、世界経済や同時代性の中で歴史を捉えている。未来思考を感じる



    この本で取り上げたテーマ
    *ヨーロッパ中心主義の見直し(アジアの勃興)
    *疾病、人口変動、森林枯渇などの人類史的影響
    *人の移動による宗教や文化の伝播、征服、交易など世界システム論


    ヨーロッパ中心主義の見直しのテーマが一番わかりやすい。速水融の論考〜日本の経済発展をヨーロッパの産業革命による発展と区別し、労働集約型の家族経営を 勤勉革命と命名〜が面白そう。



    グローバルヒストリーの位置づけは 一国史という歴史観が 国民国家概念に直結し、ヨーロッパ中心主義、ヨーロッパと非ヨーロッパの対立 を生んだことを批判する立場



  • MT14a

  • ☆歴史学

    時間的・空間的さらにはテーマ的にマクロな視点で歴史をとらえるグローバルヒストリーについての先行研究を紹介する形式で書かれている。

    ❶ヨーロッパとアジア
    ❷環境
    ❸移動と交易
    ❹地域と世界システム
    の4テーマに分けて論文を解説している。

    ❶には全体の半分近くのページ数が割かれており、ヨーロッパ中心史観からの脱却がグローバルヒストリーの大きな眼目の一つであることを窺わせる。
    ・資源節約的な技術体系で生き延びてきたインドが、過大なエネルギー消費を貫いてきた欧米「先進国」より発展していないと言えるのか?ー発展の指標を定める難しさ
    ・ヨーロッパのindustrial revolutionに対する日本のindustrious revolutionー発展の型自体の差異
    など、新しい観点の数々には非常に驚かされた。生活水準には向上の余地があるが、インドをモデルとして資源節約型発展の径路が明確化され、低緯度貧困国に光明が差すことを願うばかりである。
    限られた土地・限られた資源の中で、効率的な土地利用を目指し投下労働力を増大させたことによる日本の発展が、勤勉な国民性を育んだのであろう。「国民性」が形成される背景についても調べてみたいと感じた。

    ❷はこれまでの歴史研究であまり重要視されてこなかったテーマであり、新鮮だった。中でも、スペインによるインカ・アステカの征服には疫病に対する免疫の有無が深く関係していたというエピソードは、非常に興味深かった。
    交通網・医療が共に発展した現代でさえ、疫病の地域差は大いに残存していることを忘れてはいけない。

    ❸はグローバルヒストリーに不可欠な研究領域である。生産物・技術・思想etcには必ず地域差が存在するため、それらがいかにして伝えられて現在の世界を形成したのかについては非常に見るべきところが多い。
    マメ類・油料作物を栽培しない根菜農耕文化では、タンパク源として肉類・魚類など農業以外からの栄養摂取も必要であり、食用としての家畜が古くから存在していたのに対し、前述の作物を栽培するサバナ農耕文化では家畜は使用されていなかったという記述は面白かった。食文化の源流を辿ってみたいと思った。

    ❹は、世界史の全体的な流れを把握するための方法論的な分野である。人・モノの交流により形成される域圏に着目し、域圏同士の繋がりを見ていくことで事象が整理され、世界史の見通しが立ちやすくなるのは事実だろう。
    一方で域圏の定義それ自体が一意的ではあり得ず、恣意的なものにならざるを得ないため、テーマに応じて細かに範囲の修正を重ね、規定の域圏ありきの研究にならぬよう注意する必要があると感じた。


    概して、並一通りの歴史教育を薄く受けただけの理系学生の私の歴史観を逆転させることの多い一冊であった。無意識下に存在する西洋コンプレックスにも気付かされた。
    本書はグローバルヒストリーとは何かを手っ取り早く知るには適していると思われる。一読して、ヨーロッパが早くに築き上げた国民国家システムの拡大に伴うナショナリズムとしての国史教育とヨーロッパ中心史観が、近年の東アジアの目ざましい発展と共に見直され始め、歴史研究の土俵はグローバルヒストリーへと移りつつあるという流れは理解することができた。
    一方で、なるたけ多くの研究を紹介しようというコンセプトからか、個々の研究の解説が手薄であり日本語的にも分かりにくい箇所が多く見られた。ゆえに個々の研究について初学者が理解するのは難しく、その点ではある程度歴史に明るい読者向けなのだろう。歴史的常識をもっと蓄えたうえで再読できたらと思う。

  • 『銃・病原菌・鉄』に熱狂した身としては、こういう考えが広まってくれるのは嬉しい。でもまあ、「普通に」習う歴史を知っていてこそ感じられる面白さだよなあ、とも思う。

  • これからの世界史を考えるのにとても役に立つ指南書だと思います。様々な研究の紹介もあり、折々見返し、参考にしたい本だと思いました。

  • グローバルヒストリー
    ・対象とする時間が長い。宇宙の誕生から。
    ・対象とするテーマの幅広さ、空間の広さ。
    ・ヨーロッパ世界の相対化、ヨーロッパが主導的役割を果たした近代以降の歴史の相対化。
    ・地域比較ではなく、諸地域間の相互関連、相互影響が重視される。
    ・テーマが新しいものが多く、歴史学に新たな視角をもたらすこと。

    ヨーロッパ中心主義からの脱却。既存の歴史観はヨーロッパが中心となり、その土台の上にアジアがあるという深層意識のもとに成り立っている。そこに異を唱えるところから始まる。

    本全体が本当に入門書になっている。グローバルヒストリーの切り口と考え方を述べるに留まっている。

    紹介されている切り口は以下の通り。

    ・ヨーロッパとアジア
    - 経済発展
    - 賃金比較
    - 生活水準・人口変動
    - 工業

    ・環境
    - 疾病
    - 開発・人口変動・森林

    ・移動と交易
    - 人や物の移動
    - 作物
    - 商品連鎖
    - ファッション
    - 世界市場

    ・地域と世界システム
    - 海域世界

  • 入門というか概説。かなり広範囲をカバーしているので、読書ガイドにいいと思った。

  • (スエーデンの大学院で学んでいた時分に、学内のポータルにアップしていたものを引っ越しています)

    It is interesting to read that there merging a new approach toward history, called Global History. The book introduces the readers to what is it and how it is different from the traditional approaches.

    What it is can be naturally found by describing how it is different from the traditional approaches:

    1)Longer time span, sometimes from archeological periods often employing natural sciences,
    2)Wider space and topics,
    3)From Eurocentric perspective to multiple perspectives,
    4)More emphasis on interdependancy among regions, and
    5)New perspectives in history such as environment, diseases, population, living standards, fashion, etc.

    From this perspective, what used to be thought as advanced become less advanced and less advanced becomes advanced. Then it is not a problem of advanced-less advanced but only different and each fitted to the environment (not natural but more broader) in an optimal way.

    For instance, the book introduces the work of Pomeranz which compared the economic growths in East Asia (China) and England. According to Pomeranz, South China and England showed a simliar economic growth pattern until 1750's but faced simliar resource shortage. England happened to have rich resouvor of coal and good access to New World of American Continent for getting supplies of foods and selling goods produced as well as emigrating its growing population. England happened to be lucky.

    Another work, for instance, of Japanese researcher Hayamizu, compared a development pattern of agriculture between Western countries and Asian countries and argued that they cannot be described from one perspective and they are simply different. England, for instance, enlarged farming land and put machinery and animals to be replaced with man labor, while Japan intentionally increased the input on man labor. Hayamizu calls the latter Industrious Revolution and argues that it cannot be discussed on the same horizon as Industrial Revolution.

    It is good for the World to have many Histories.

  • 文字情報をおもにあつかう歴史学者だけではなく、多くの自然科学者も参加したグローバル・ヒストリーの概要をヨーロッパとアジア、環境、移動と交易、地域と世界システムという項目に便宜的に分けて紹介。
    これまでの研究の歴史を著書を紹介する形で解説している。

  • [ 内容 ]
    グローバル・ヒストリーには文字情報をおもにあつかう歴史学者だけではなく、多くの自然科学者も参加し、これまでになかった斬新な手法と多様な情報が駆使された成果が続々と生み出されてきている。
    これらの研究は、今後の歴史学のありかたを大きく変えるものである。
    本書では、グローバル・ヒストリーの概要を伝えた。

    [ 目次 ]
    グローバル・ヒストリーの登場
    1 ヨーロッパとアジア
    2 環境
    3 移動と交易
    4 地域と世界システム
    5 グローバル・ヒストリーの意義と今後の展望

    [ POP ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • グローバル・ヒストリーについて著者は、
    ①あつかう時間が長い(有史以前、場合によっては宇宙の誕生までもが対象となる)、
    ②対象となる空間が幅広いこと(「国」の枠組みにとらわれることなく陸域、海域全体の構造や動きを問題とすることが多い)、
    ③従来の歴史叙述の中心にあったヨーロッパ世界の相対化、あるいはヨーロッパが主導的役割をはたした近代以降の歴史の相対化がなされていること(従来重視されてこなかった非ヨーロッパ世界の歴史や、そこでの歴史発展のあり方が重視される)、
    ④たんなる地域比較で終わるのではなく、異なる諸地域間の相互連関、相互の影響が重視される、
    そしてもっとも重要な特徴として、⑤あつかわれている対象、テーマが、従来の歴史学ではほとんど取り扱われてこなかったものが多く、歴史学に新たな視覚をもたらすものであること、という5つの特徴をあげています。

    正直対象が広すぎて、よく分からなかったというのが感想ですが、上記の5つの特徴は、最近の世界史教科書では(不十分ながら)ずいぶん取り入れられているような気がします。最近の教科書では、序章として地球誕生→生命の誕生・進化→人類の誕生という流れを載せているものも多いですし、ユーラシア世界やインド洋交流圏・地中海交流圏などもわざわざ章立てして取り上げています。また、不十分ながらだいぶヨーロッパ中心史観も払拭されてきましたし、諸地域間の交流にも多くのスペースを割いています。そして教科書の最初には「世界史における時間」や「世界史における子供」といったテーマが掲載されています。実はこのグローバル・ヒストリーというものは、知らず知らずのうちに我々に浸透しているということなのでしょうか。

  • 歴史の本があまりに細切れで何が面白いのかわからなくなった人、各国史がつまらないと思った人、一度読んでみてください、グローバル・ヒストリー。面白いから。めくりめくグローバル・ヒストリーの世界。

    国境でブッタ切りにされることなく、気候変動や疫病・人口、賃金といった切り口などで人類史を総覧する意欲的な試みです。

    ただ、やっぱり冷静に地域も時代も違う賃金やGDPをどう比較するのかという技術的な困難さはありますがね。

  • 2010/03/31

    良書。薄いので短時間で読めるのも高ポイント。グローバル・ヒストリーについて読むべき本も網羅的に紹介されており、知的好奇心をそそられる。

  • グローバル・ヒストリーの特徴。1・扱う時間の長さ2・対象となるテーマの幅広さ、空間の広さ3・従来の歴史叙述の中心にあったヨーロッパ世界の相対化、ヨーロッパが主導的役割をはたした近代以降の歴史の相対化4・異なる諸地域間の相互連関、相互の影響を重視5・あつかわれているテーマが、従来の歴史学ではほとんど取り扱われてこなかったものが多い賃金の国際比較、が活発に議論されているテーマ、だそうな。国民国家を単位とする一国史とは、また違った視点で世界を見渡す視点。さまざまな研究が概観された一冊。

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著者プロフィール

1952年生まれ
1979年 東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授、東京大学大学院人文社会系研究科教授などを経て
現 在 東京大学名誉教授、博士(文学)
著 書 『前近代南インドの社会構造と社会空間』
    (東京大学出版会、2008年)
    『グローバル・ヒストリー入門』(山川出版社、2010年)
    『日本・アジア・グローバリゼーション』
    (共編、日本経済評論社、2011年)
    『アジア経済史研究入門』(共編、名古屋大学出版会、2015年)

「2019年 『インド経済史 古代から現代まで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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