ステンカ・ラージン: 自由なロシアを求めて (ヒストリア 12)

著者 :
  • 山川出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634491205

作品紹介・あらすじ

ロシア民謡で私たちにも知られるステンカ・ラージン。あの「ペルシアの姫君」は実在したのか、それともフィクションか。そして何よりもコサックとは一体なにもので、彼らの「自由」とはいかなる背景から生まれたのか。中世の「タタールのくびき」から脱して、ようやく近代へ向かおうとするロシア。その新王朝ロマノフの支配を揺るがしたラージンの反乱の実相を明らかにするとともに、西欧とは異なる道をたどったロシアの歴史と社会の原像を探ることにしよう。

感想・レビュー・書評

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  • ”久遠にとどろくヴォルガの流れ♬”でおぼろげな記憶に有ったステンカラージン・・一体どういった背景のもとで活躍したのか、知りたくなった。
    最近、ロシア近代史の映画を観たり、WWⅠ・Ⅱの映画を見ていても、近代ロシアが強大な諸国に比し、最も西欧化に後れを取っていたという事やロマノフ王朝の功罪などに興味を抱いたこともある。

    全く、大学教養部の読本の体を要していることもあって、すいすい読み易いが今一つ色気はない。
    17C当時の挿絵が載せられているのは愛嬌。
    Wikiで、検索語のもっとも簡略な知識としては~ロシア民族の英雄であり、処刑後100年経てのブガチョフの反乱に繋がっているとある。

    だがこの本では残虐な処刑の中身は皆目触れず。
    中世からの離脱が極度に遅々たるロシア・・救貧は教会・修道院に委ねられた。魂の救済は考えてもシステムにメスを入れる事は思いもしない「儀礼こそ」教会の本質と言う時間が長く続いた。ロシアは昔も今も極めて中央集権的な体質。「タタールのくびき」が意する「ロシアの不幸な時代」には研究が進んだ結果諸説あると言う。この本では17C辺りからの解説・・農奴制はほぼ確立、-移転権は否定された(地方行政は全く不備のまま、ツァーリ政府が最終的に移転を禁止したとある)
    「自由な人々」を意味するコサック~放浪の民ともよばれる彼らはそもそもロシアよりの逃亡農民。17C後半に力を伸していくステパンがヴォルガを制し、ペルシア遠征に乗り出すシーンは映画になりそう。当時、日本にも立ち寄ったケンペルはステパンの様子を文に記しているとか。ドン川で政府ではなく仲間の手によって捕縛されたステパン。

    ロシア近代化に大きく舵を取ったピョートルが『古ルーシ」を一掃したことでかつての行き来とした内実は低下したものの、コサックたちが持ち続ける「遠い日の記憶」が遥かの時間を隔て1920代まで続いたとある。この時の想いをショーロフが綴ったのが「静かなるドン」と初めて知った⇒魅力的な集団生活と意識の名残り☆

  • 17世紀には農業経営にとってより良い条件と展望があるならば、上からのさまざまな抑圧や負担を潔しとしない豊かな農民たちもあえて不法な移転に踏み切った。つまり領主による強制的な村替え、出稼ぎなど自由な移転の禁止、恣意的な抑圧、あるいは疫病と戦争による増税などを理由として農民は村を出た。

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著者プロフィール

1947年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程満期退学。現在、一橋大学名誉教授。訳書、クリュチェフスキー 『ロシア農民と農奴制の起源』 未来社、1982年。著書、『岐路に立つ歴史家たち―二十世紀ロシアの歴史学とその周辺』 山川出版社、2000年。

「2010年 『V・O・クリュチェフスキー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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