〈身売り〉の日本史: 人身売買から年季奉公へ (歴史文化ライブラリー 341)
- 吉川弘文館 (2012年3月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
- / ISBN・EAN: 9784642057417
作品紹介・あらすじ
借金のカタに娘が泣く泣く遊女に売られる「身売り」。中世の人買い船、戦国の「人取り」、江戸時代の人身売買禁止令を分析し、「遊女に売る」から「奉公へ出す」へ変わる人びとの認識とそのカラクリをあぶり出す。
感想・レビュー・書評
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3.75/76
内容(「BOOK」データベースより)
『借金のカタに娘が泣く泣く遊女に売られる「身売り」。中世の人買い船、戦国の「人取り」、江戸時代の人身売買禁止令を分析し、「遊女に売る」から「奉公へ出す」へ変わる人びとの認識とそのカラクリをあぶり出す。』
冒頭
『 弱者が人身取引の犠牲になる――プロローグ
ハイチでの子ども連れ出し事件
二〇一〇年一月一二日(日本時間一三日)、カリブ海の島国ハイチを襲った大地震は、首都ポルトープランスを直撃し、人口四〇〇万人のうち二〇〇万人が避難生活を送らなければならなくなった。地震での死者は二〇万人を超えたといわれている。
地震発生から二週間以上が過ぎた一月三〇日、被災した子ども三三人を連れて、イスパニオラ島の隣国ドミニカ共和国に出国しようとしたアメリカ人一〇人が、国境近くでハイチの警察に逮捕された。』
『“身売り”の日本史―人身売買から年季奉公へ』
(歴史文化ライブラリー 341)
著者: 下重 清(しもじゅう きよし)
出版社 : 吉川弘文館
単行本 : 242ページ
発売日 : 2012/3/1詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本における所謂人身売買の歴史についての考察本。
日本における「身売り」、奴隷や捕虜の売却から奉公人に至るまでの流れを考える本なんだけれど、やたらと日本にも人身売買はあったって話ばかりで、これこれだから売る人(供給)はあったんだ、一説によると膨大な数がこの時売買されたとやってるが、反対側から見た話、買う人(需要)についてはからっきしでどうにも片手落ち感が半端ない内容。
江戸時代の人身売買禁止令などから日本における「身売り」の倫理観を考えるはなしは良いんだけれど、とにかく一方的な視点のみで話が綴られてて視野が狭いなーって感想。 -
昔アフリカの奴隷船の、奴隷の詰め込み図を見たときに驚いたが、日本も海外に人間を売っていたし、国内でも”身売り”とか”年季奉公”という形で人間を売買していたという記述に、奴隷船は他人事ではなかったと感じ入る本。女房、子どもを売り払ってでも納税する仕組みは、最終的には為政者に都合がよかったのですね。
人権が浸透している(ことになっている)現代の働き方と、年季奉公の違い等考えるのが楽しい本でした。 -
コト史
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難しい部分もありましたが、面白かったです。
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人身売買や年季奉公という名の「奴隷」についての歴史。日本にはかつて奴隷や人買いが存在し、生産単位や社会構造を支えるものとして必要不可避なものだった(なんと、鎖国前にはアジア圏内での奴隷貿易に日本はがっちり組み込まれており、南アジアには日本人奴隷が多く売り払われたし、秀吉による朝鮮半島への戦争も奴隷略奪という一面がある)。奴隷といえばアフリカ奴隷貿易しか頭にしかないが、日本国内にも存在したしたことを著者は指摘する。それにもかかわらず、人々の意識には「奴隷」という認識がない、これがもうひとつのこの本のテーマではなかろうか。この本を読んだとき、かつての身売りのような奴隷はもはや現代日本には存在しないが、実質的な身売りはまだまだ存在するのではないかと、新たな見方を提供してくれる本。