まんが世界ふしぎ物語シリーズの中の1冊。
基本的なストーリーとしては、蘇ったミイラのマミーくん(少年)とカオリちゃん(日本人の女の子)と怪しげな骨董商のキャット馬場(おっさん)が、キャット馬場の店にある秘密のどこ○もドア的なものを通じて世界の遺跡へ訪れ、その遺跡の歴史を学んでいく、というものだ。
本の対象は小学生と思われ、漫画も内容も易しく楽しく読むことができる。
私が初めてこの本を読んだのは小学生の時で、学校の図書館にこのシリーズが入るや否やあっという間に人気図書になってしまったのを覚えている。
シリーズの中で訪れたのは、ミイラの本場エジプトはもちろんのこと、トロイア遺跡やマヤ遺跡、そして日本(平泉)等々。その中でも私が一番心を揺り動かされたのが、この巻の「インカ帝国のひみつ」だ。
インカ帝国は、今のペルーを中心に栄えた国だ。
インカ帝国といえば有名なのがマチュピチュで、あの山の中に佇む遺跡の姿は多くの人が知っているといっても過言ではないと思う。
インカの歴史、滅亡、そしてマチュピチュが遺跡となってしまった後にアメリカ人のビンガムによって世界に紹介されたこと、これらがこの漫画の中で描かれている。
私はその中で、マチュピチュをビンガムが探索していた際にいた現地の男の子のエピソードがどうしても忘れられないでいた。ビンガムは、その男の子がもしかしたら彼しか知らない秘密の場所を知っているのではないか、と思いつつ去るというものだ。
本当にそういったことがあったのかどうかはわからないけれど、どうしてもその「まだ誰も見つけていない秘密の場所=お宝?」という考えが頭の片隅にあり、私はそのまま大人になった。そして、思いがけずマチュピチュに訪れる機会に恵まれた。
実際にマチュピチュへ行ってみると…当たり前だが、がっちりペルー政府が管理していた。
下手な動き、例えば自分の国の旗を掲げようものならピーッ!と笛が吹かれて係員がすっ飛んできて、漫画にあった草木が生い茂る遺跡は綺麗に手入れをされた遺跡になっており、リャマが平和そうに草を食んでいた。
観光客はたくさんいるし、何より高度が高いため、階段を上るだけで息があがる私は、隠された黄金を見つけるなんてことはできなかった。
それでもマチュピチュは素晴らしかった。
雲を下に見ながら、いったい昔のインカの人たちはここで何をしていたのだろう。
なぜこんなに標高の高いところへ建物を建てたのか。どんなことを考えていたのだろうか。次々と疑問がわいてくる。
この本を読んだ時には、「とにかく山の上にある不思議な遺跡に行って、隠されたお宝を見つけたい!」という気持ちだったのに、いざ訪れてみるとその不思議さはより大きく感じられ、でも、遺跡の高台にある草むらに座って全体を見渡してみると、何だかとても穏やかな気持ちになったりと、今まで感じたことのない状態になった。もしかして、あれはロマンというものだったのかもしれない。
もう一つ、どの巻も「漫画→たかしよいち先生のお話」という構成になっているが、この巻のたかし先生のお話では、先生が実際にマチュピチュに行かれた時のエピソードが書かれている。
ふもとからマチュピチュ遺跡までは山道をバスに乗って移動する。その時に、現地の男の子がバスと競争して走りまわるというものだ。男の子がバスに勝つと、バスの乗客たちが盛り上がるという。
私が訪れた際もバスに乗ったため、そういう男の子はいないかと結構期待していた。が、残念ながらいなかった。たかし先生がマチュピチュへ行った時よりも道も遺跡も整備されているだろうし、もうバスと競争する子もいなくなったのだろう。
私がペルーへ行った年よりも少し前に、東京でインカ帝国展が開催された。
もちろん見に行ったところ、物販スペースでなんとこの本が売られており、驚いたのとともにとても嬉しかった。
今でも発売元の理論社のホームページにこのシリーズが載っており、また全巻揃えたい気持ちがムクムクと湧き上がってきている。