村上春樹の動物誌 (早稲田新書)

著者 :
  • 早稲田大学出版部
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本棚登録 : 56
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784657200143

作品紹介・あらすじ

村上春樹氏のインタビューを所収!
日本記者クラブ賞に輝いた文芸記者の著者が、動物を手がかりに村上文学の森に深く分け入る デビュー作の『風の歌を聴け』から『猫を棄てる』までを貫く核心のテーマとは―。 好評を博した新聞連載記事を大幅加筆した待望の決定版!

感想・レビュー・書評

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  • 村上春樹の小説に多出する動物たちをキーワードに、村上作品の本質に迫る名著。

    読みにくくはないが、タイトルと新書という気楽さからイメージされるような軽さはない。

    村上春樹の小説に描かれる悪や暴力が、善と対立するものではなく、読者である我々、村上春樹自身の中に内在するものであり、殊更に暴力が残酷に描かれるのは、読み手の僕ら自身に痛みをリアルに感じさせるためであること。

    村上文学を貫くのは「戦争」をはじめとする近代日本社会への「歴史意識」であること、だから、超初期から執拗に中国について書き続けていること、それは父親が背負った歴史を引き継いでいること。

    頭に残ったのはこの点を明文化していることで、動物はあくまで触媒的なものなのだった。

    早稲田大学出版部の本で、早稲田のギャラリーで購入したため、著者の署名入りであった。

  • エッセイとして軽い気持ちで読むのなら良いのかもしれないが、私には合わなかった。

  • 動物誌ということで村上作品に登場する動物たちを紹介しているが、その内容は動物たちをキーワードにして作品を読み解くもの。
    読んでいながら内容を忘れている箇所も多く、思い出しながら読んだり、未読の本については読みたくなった。ただ読んでいない本に関しても十分面白く読めた。

  • ヒツジと近代に関する考察など一部に「へー」はあるが、他はおおむねタイトル通りでまさに「動物誌」。一つ一つが短いので、もっと掘り下げてもらいたかった。と感じていたところ、あとがきを読むと新聞の連載をまとめたものだという。

    これまでの経験として、新聞の記事を書籍化して、成功するのは難しいと思う。賞味期限、読者層、文体などの方向性が異なるからだ。

  • 螢=魂=直子=ノルウェイの森=緑色⇔赤色=緑 村上自身が装丁
     死(緑)は生(赤)の対極ではなく、その一部として存在している。
     村上作品は生と死の世界がとても近い。

    心の力=主人公
     自分の本当の心を見つけ出せれば、それが世界を新しく作り直す力を秘めている

    ふかえり=村上
     文字で書く言葉=完全だが固定されて動きのない ではなく、
     語る言葉=不完全だが動きに満ちたカンガルーのような話し言葉

    羊男=ヒーロー
     戦争忌避者 羊=近代日本を象徴

    カフカ=カラス
     一人ぼっちの魂
     鵲(カササギ)スズメ目カラス科
     柔軟で寛容な心

    地下二階
     暗闇の世界を描くことが作家の真の使命
     現実へ復帰し、こちら側の自分にも問う

    1Q84
    「説明しなくてはそれがわからんというのは、
     つまり、どれだけ説明してもわからんということだ。」天吾の父
     歴史は説明することではなく、継承するもの

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著者プロフィール

著者略歴

小山鉄郎(こやま・てつろう)
1949年、群馬県生まれ。一橋大学経済学部卒。共同通信社編集委員・論説委員。村上春樹作品の解読や白川静博士の漢字学の紹介で、日本記者クラブ賞受賞。著書に『白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい』『白川静さんに学ぶ 漢字は怖い』(共同通信社・新潮文庫)、『白川静入門 真・狂・遊』(平凡社新書)、『村上春樹を読みつくす』(講談社現代新書)、『村上春樹を読む午後』(文藝春秋、共著)、『村上春樹の動物誌』(早稲田新書)、『大変を生きる―日本の災害と文学』『文学はおいしい。』(作品社)『あのとき、文学があった―「文学者追跡」完全版』『白川静さんに学ぶ これが日本語』(論創社)など。
2009年から白川静博士の業績を学ぶ同人会「白川静会」の事務局長を務めている。

「2021年 『白川静さんに学ぶ 漢字がわかる コロナ時代の二字熟語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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